駐在員・事務局員日記

「私がNGOの仕事を選んだ理由」古川千晶-これから国際協力の分野を目指す人たちへ(6)

2014年09月18日  職員紹介
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執筆者

東京事務局主任
古川 千晶

大学卒業後、人材コンサルティング会社などを経てイギリスの大学院で国際開発学を学び、帰国後AARへ。2010年10月よりハイチ駐在。2012年1月より東京事務局でアフガニスタン、ミャンマーおよびフィリピン事業を担当(大阪府出身)

記事掲載時のプロフィールです

AARのスタッフがどんな想いで国際協力の世界に飛び込んだのかを紹介するこのコーナー。第6回は、支援事業部主任の古川千晶です。関西弁で冗談を言い周囲を盛り上げる一方、細やかな心遣いも忘れず仲間に頼られる姉御肌。そんな彼女が国際協力、そしてNGOを目指したきっかけとは?(聞き手:広報担当 伊藤)

小学校時代に読んだ『はだしのゲン』に衝撃

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「小6のときに起きた湾岸戦争がきっかけに、世界に目を向けるようになりました」(2014年7月)

Q.国際協力を目指したきっかけは?

私の家には、小さいころから『はだしのゲン』(中沢啓治)や『ブッダ』(手塚治虫)など、戦争や平和に関する漫画や本がたくさんありました。母は、「教育はお金に勝る財産」という考えの人なので、そうした書籍をあえて揃えていたのかもしれません。

ずっと本の中だけだった戦争が現実に起きて衝撃を受けたのが、1990年~1991年に起きた湾岸戦争でした。私は当時小学校6年生。中学に入ってからは、湾岸戦争について図書館などでいろいろ調べて壁新聞を作り、発表したりしました。戦争により原油が海に流出し、石油まみれの真っ黒な海鳥がもがいている姿もテレビで流れ、胸が痛みました。でも、この戦争をきっかけに、海外の問題に関心を持つようになりましたね。

一旦就職するも、「自分のやりたい道」を目指してイギリスの大学院へ

Q.初めて海外へ行ったのはいつですか?

高校2年生のときに、学内の選抜試験に合格して米国に3ヵ月留学しました。その際、米国の大学の寮に宿泊し、大学の授業を体験する機会があったのですが、そのとき初めて、「平和学と紛争」という学部があることを知りました。自分が関心のある分野で勉強してみたいと思いましたが、当時の私には海外の大学へ行くという選択肢は考えられず、一旦地元の大学に入り、経済学を専攻しました。経済学も、世の中の貧困の原理などを学ぶ良い機会となりました。

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イギリスの大学院には、世界各国からいろいろな人たちが集まっていて、貴重な出会いがたくさんありました。コロンビア出身の友人と私(写真左・2009年3月)

卒業後、金融会社の営業職で1年、人材コンサルタント会社で6年働き、大学生の教育に関するイベントの企画・運営などに携わりました。収入は今の何倍もあったし、仕事もとても面白かったのですが、心のどこかで、「これでいいのかな」「本当にやりたかったことは違うのでは」と思うようになりました。

そこで一念発起し、お金を貯めて2009年にイギリスの大学院に入り、国際開発学を勉強しました。翌2010年にハイチで大地震が起き、私はイギリスでハイチ支援のチャリティイベントに携わっていたこともあり、AARでぜひハイチ支援活動をしたいと、応募しました。

「支援する側は、謙虚たれ」

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ハイチで猛威をふるうコレラを予防するために、学校を回って手洗いの大切さを子どもたちに伝えました(2010年12月)

Q.ハイチの現場に実際入ってみてどうでしたか?

治安が悪いので簡単には出歩けないストレスの多い場所でしたが、現地でハイチの子どもたちのための支援ができたことは、とても嬉しかったです。地震で親を失った子どもたちのための学校を作ったり、障がい児の施設を支援しました。

その際強く感じたのは、支援する側には謙虚な態度が必要だということです。私が駐在していた2010年当時、AARはハイチの障がい者が運営する義肢装具工房を支援していました。それを知ったある海外NGOの職員が、その工房を見学に来たことがありました。その際、工房スタッフがつたない英語で義肢装具の部品に関する質問をしたところ、そのNGO職員は相手にわかりやすいようゆっくりしゃべろうともせず、その英語が聞き取れなかった工房スタッフを軽蔑するような態度をとったのです。本当に腹が立ちました。経済力や語学力の差は、活動地の人たちを見下す理由にはならないはずです。

支援する側に謙虚な気持ちがないと、必ず道を誤ります。自国の考えを押しつけたりせず、現地のやり方を尊重する。それができないと、現地の人たちを傷つけることもあるのだと、ハイチで痛感しました。

これまで培ってきた経験を各国で活かしたい

Q.ハイチでの活動の後、アフガニスタンでの地雷対策、ミャンマーでの地雷被害者支援、フィリピンでの緊急支援などに携わっています。

ハイチでの経験がアフガニスタンの事業に活かされたり、アフガニスタンでの経験がミャンマーで応用できています。自分がこれまで培ってきた知識や経験を仲間と共有しながら、また活動国の習慣や文化を尊重しながら、今後も支援活動を続けていきたいです。

Q.今後はどんな支援をしていきたいですか?

どの国でも未来のある子どもたちの可能性を広げられるような支援がしたいです。また、女性が虐げられている地域でその現状を変えることも必要です。例えば、地雷により土地が汚染された人々は、生活するために新たな土地へ移らなければなりません。しかし、特に女性は見知らぬ場所で新しい仕事を探しにくく、身体を売らざるをえない状況が起きています。そうした人たちへの支援も行っていきたいです。

「不測の事態も楽しむぐらいの気持ちが大事」

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「国際協力に関心を持ったら、まずは関連する本を読んでみて」(2014年7月)

Q.これから国際協力の分野を目指す方々にメッセージがあれば。

国際協力は、国連などの大きな機関でなくてもできます。現地の人たちの生活を肌で感じ、彼らと近い目線で活動する、それはNGOだからこそ可能なことです。私は、自分を育ててくれたAARをはじめ、世界中のNGOが社会での存在感を高められるよう、これからもNGOで活動していきたいです。

国際協力に関心を持ったら、まずはそれに関連する本を読んでみてはどうでしょう。より詳しい情報が得られるし、さらなる行動につながるかもしれません。また、海外の支援現場に行ったら、きっとうまくいかないことや思い通りにならないことがたくさん起きると思います。でも、どんなときも前向きに、不測の事態を楽しめる、そんな心の余裕も大切かもしれませんね。

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