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クリニックの運営を移行します!アフガニスタン(タロカン)活動報告

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難民を助ける会は2002年より、アフガニスタン北東部のタカール州にて理学療法クリニックを運営し、地雷被害者を含む障害者の身体機能の回復のためのリハビリ治療の提供、来院できない患者のための巡回診療や必要な患者への義肢装具提供などを無料で行ってきました。このたび、難民を助ける会のクリニックは、協力団体であるスウェーデンのNGO、Swedish Committee for Afghanistan(以下SCA)の下で運営されることになりました。これまでの経緯を報告します。

地雷の被害者を救うために

1979年の旧ソ連侵攻以来、25年以上も続いた紛争は、アフガニスタンを世界有数の地雷・不発弾汚染国としました。2001年9月11日アメリカ同時多発テロ後の米英軍の空爆により、1996年以降政権の座にあったタリバン政権は崩壊。その後、多くの国際社会の支援によって、地雷対策が本格化しました。地雷対策には、地雷除去、地雷の危険を伝えるための教育、地雷の被害にあった人を支援する活動が必要です。その中でも被害者支援は後回しにされがちです。難民を助ける会は、辺境地のため支援が届いていなかったタカール州の2つの郡(カラフガン郡、ホジャガ郡)で被害者支援を開始しました。

理学療法を通して身体機能を回復

クリニックでは、障害者や身体の不調を訴える地域住民に身体機能回復のためのリハビリ治療を実施。患者が来院すると、専門の教育を受けたスタッフ(理学療法士)が問診・触診を行います。診断の後、ジェルが入ったパットをお湯で温めたものを患部に当てたり、低周波マッサージ機などの器具を活用したり、症状に応じた治療を行います。治療の後は、家庭でできるリハビリ運動などの指導をして終了。ひとりの患者にかかる所要時間は約40分。患者は1度の来院で完治することは少なく、継続して来院し治療を受け、徐々に身体の機能を回復していきます。

また、来院できない患者たちのために巡回診療も行いました。活動開始当初は、世の中に治療ができる施設があることすら知らなかった村人たちですが、5年が経った今では、治療のための発電機や小屋を提供してくれる村も現れるほど、信頼してくれています。2002年9月から2008年3月まで、クリニックで支援してきた患者数は、延べ約32,000人にのぼります。

女性のためにさまざまな配慮を

タリバン政権崩壊後、首都カブールや大都市では西欧風の文化や習慣が広がりつつありますが、カブールから車で7~8時間の距離にあるタカール州では、アフガニスタンの伝統や習慣が強く残っています。女性患者が男性医師から治療を受けることには、まだまだ多くの人々が抵抗感を持っています。とりわけ、患者の体に直接触れるリハビリ治療では、男性医師が女性患者を治療することが困難です。

女性患者が安心して診察や治療を受けられるよう、2005年秋よりホジャガ郡クリニックにて、2007年12月よりカラフガン郡クリニックにて、地域に住む女性の中から希望者を募り、理学療法の基礎を身につけるための訓練を開始。訓練を受けた女性スタッフが、男性理学療法士の指導のもと、女性患者の対応をしてきました。

女性スタッフを雇用して以来、来院する女性患者が大きく増加するなど、確実に効果が上がっています。

難民を助ける会は、アフガニスタンの文化や習慣に配慮しつつ、女性も安心して治療を受けることができるクリニックづくりを目指してきました。

人々が安定した医療サービスを受けられるために

しかし、私たちが今後50年、100年の長期にわたって支援を続けることはできません。本来、福利厚生は国の役割です。難民を助ける会が運営するクリニックも、将来的にはアフガニスタンの医療制度の中で運営される必要があります。難民を助ける会がアフガニスタンを去ったとしても、地域の人々が安心して治療を受けられるためには、私たちに何ができるのか、常に考え続けてきました。

タカール州の他の郡で長年当会同様の理学療法クリニックを運営してきた関係機関と協議・調整を重ね、2008年4月以降、当会のクリニックはSCAの下で運営されることになりました。SCAは、タカール州全体の理学療法クリニックを一まとめにして、アフガニスタン政府が構想する保険医療制度への統合を目指しています。アフガニスタン政府の管轄となれば、将来にわたってクリニックが運営され続けることになり、私たちの目標が達せされます。それまで、難民を助ける会は、SCAと協力し、引き続き支援を行っていきます。

夢を持つ若者が、アフガンの希望の光

治安の悪化や政情不安など、今後が懸念されるアフガニスタンですが、光もあります。ある女性スタッフでは、紛争の影響や経済的な問題で、本来なら大学に進学する年齢ですが、まだ高校在学中です。でもお母さんやお祖父さんと同じように医者になる夢を持っています。長い内戦で将来に希望を持てない人々も多いなか、夢を持つ世代がいることは、アフガニスタンにとって、明るい材料です。

25年もアフガニスタンを紛争の下に置いたのは、彼らに対して無関心であった国際社会にも責任があると言われています。同じ過ちを繰り返さないためにも、難民を助ける会はアフガニスタンの人々へ届く支援を行ってまいります。

これまでご支援くださった皆さまに心から感謝申し上げると共に、今後もアフガニスタンへのご支援をよろしくお願いいたします。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 松本 理恵

2004年4月より東京事務局勤務。主にアフガニスタン・タロカンとタジキスタン、カンボジア事業を担当。大学では国際開発を中心に学び、卒業後旅行会社に6年勤務。その後、難民を助ける会へ。(神奈川県出身)

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