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ハイチ:障害児教育に携わる先生たちに研修を実施しました

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障害児により質の高い教育を提供するために

美術授業の研修を受ける参加者たち

「丸を書いてみよう!」「赤と青を混ぜるとどんな色になる?」 体験を通じて図画や色彩を学ぶ授業の実習の様子。受講生たちも楽しんで参加していました(2012年3月10日)

難民を助ける会では、2010年1月に起きたハイチ大地震の復興支援を継続しています。地震により甚大な被害を受けた首都ポルトープランス市及びその近郊では、被災した障害者・障害児施設の多くがその活動を停止しました。地震から2年以上が経過した現在も、多くの施設が本格的な活動を再開できていません。

そんな中、難民を助ける会では、これまで10の障害者・障害児施設、児童養護施設などの再建を支援してきました。2012年1月からはポルトープランス市の精神・知的障害児学校「ジェリー・ムース校」の校舎を再建し、机やいす、発電機など必要な設備品を提供しています。また、同校の災害を免れた校舎を利用し、障害のある子どもたちに、自らの能力を最大限に伸ばせる教育を提供できるよう、教員の能力向上研修を実施しました。

子どもの心理学や介助方法など、障害児教育に必要な知識を学びました

体育の研修のようす

体育・ダンスの講師が障害児にもできる簡単な運動を教えています。「子どもたちが楽しく身体を動かしながら健康も維持できる」と好評でした。(2012年4月7日)

この研修は、2月から4月の3ヵ月間にわたり、週末や休日を利用しながら計163時間行われました。ジェリー・ムース校の新人教員およびポルトープランス市周辺の9校で障害児教育に携わる、計24名の教員が受講。長年障害児教育に携わってきた教員や教育心理学の専門家を講師に迎え、障害児を対象とした教授法、発達や学習に関する心理学、補助教材の作成方法などをカリキュラムに取り入れました。障害児の自尊心を育てる方法や交流分析といった心理学の理論、障害児の介助などの講座は、初めて学ぶ受講者が多くとても好評でした。また、見て、触って、体を動かし、創造性を活かしながら学べる授業を行えるよう、美術や体育、ダンスの時間も設けました。

研修の主な項目

  • 障害児を対象とした教授法の基礎
  • 子どもの発達や学習に関する心理学
  • 創造性を育む美術教育
  • 障害児の体育
  • 音楽教授法
  • 補助教材の作成
  • 障害児の介助
ちぎり絵の作品と、受講生のモンデシール氏

研修参加者のモンデシールさんとちぎり絵の作品。「手で触れることのできるちぎり絵なら視覚障害児でも楽しめますね。」(2012年4月5日)

研修の修了式で記念写真

修了式では、研修生から感謝の気持ちをこめた歌や踊り、障害者の教育に対する権利を訴える寸劇などの発表がありました(2012年5月5日)

「障害児の教育を受ける権利を守りたい」「社会の一員として障害児が健常児と平等に認められるようになってほしい」など、受講者はそれぞれが障害児教育への強い思いを持っています。ハイチでは教員のための研修は少なく、特に震災後はほとんどその機会がなかったため、参加者は非常に意欲的に学んでいました。
ハイチでは、今年の3月13日に障害者の社会統合を促す法律が上院議会で可決されましたが、その実現には、当会のような民間団体のサポートも必要とされています。難民を助ける会は、今後も障害のある方々への支援を続けてまいります。

「たくさんのことを学んでいます。ありがとう」参加者のブルノリンさんの声

受講生のブルノリンさんと駐在員の古川アンナ

ハイチ駐在員の古川アンナ(右)とブルノリンさん(左)

受講者のひとりブルノリンさん(写真左)は自身も聴覚障害があります。聴覚障害児のための学校「モンフォール校」で勉強し、「同じ障害を持つ子どもたちの役に立ちたい」と卒業後22年間、同校で教員をしています。研修中は、講師に一番近い席に座り、限られた聴覚で必死に聞き取ったり読唇をしたりして、非常に熱心に学んでいました。
「研修は最高。どの講座も素晴らしいですが、心理学の講座がとても興味深いです。たくさんのことを学んでいます。ありがとう」と話してくれました。

※この活動は皆さまのあたたかいご寄付に加え、ジャパン・プラットフォームの助成金により実施しております。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ハイチ事務所 古川アンナ

2011年5月より海外事業を担当。ブラジルの大学卒業後、三重県で国際交流員として多文化共生関連事業に従事した後、難民を助ける会へ。ブラジル・ロンドニア州出身

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