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ザンビア:「HIV検査を受ける人が3倍に増えました」

2013年02月01日  ザンビア感染症対策
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成人の7人に1人がHIV陽性者というザンビアで、AARは感染予防や陽性者へのケア、遺児支援、小中学校のエイズ対策クラブによる啓発活動の支援など、包括的な取り組みを行ってきました。2012年9月、首都ルサカ近郊のチパパ地域に、HIV検査とカウンセリングのための専用施設(VCTセンター)を建設しました。

検査を受けるための専用施設がない!

チパパはザンビアの首都ルサカの南約20kmにある小さな村です

HIV/エイズのまん延を食い止めるためには、まず1人ひとりが正しい知識を持ち、自身の感染状況を知った上で適切な対応をとることが必要です。そのため近年では、検査の際にカウンセリングを組み合わせる方法(VCT:Voluntary Counselling and Testing)が推進されています。カウンセラーは、感染から身を守る方法や二次感染予防などHIV/エイズに関する正しい知識を受検者に伝えます。陽性だった場合は、治療方法などを詳しく説明。陰性の場合でも、性生活を含めた生活状況を聞いて、その人に合った感染予防方法や次の検査時期を伝えています。

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以前のチパパクリニック。この建物で検査とカウンセリングを行っていましたが、プライバシーが確保されないなどの課題がありました

AARが陽性者への支援などで協力しているチパパクリニックでもこの検査方法に取り組んでいますが、検査・カウンセリング専用の部屋がありませんでした。病気や怪我の外来患者が優先されるため、検査希望者は長時間待たされてしまうこともしばしば。また、壁が薄くて声が外にもれ、プライバシーが確保されていないため、地域の人々が来院をためらう原因のひとつとなっていました。そこでAARは専用の建物を建設し、2012年9月に全ての工事が完了しました。

カップルでの受検者も増加

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新しく完成した検査・カウンセリングの専用施設。プライバシーが守られているので安心して検査できると大好評です(2012年10月3日)

新しい施設ではプライバシーが保たれた部屋でカウンセリングと簡易検査が受けられ、5分で結果が出ます。チパパクリニックのカウンセラーのチェロさんは、「施設の完成後、受検者数は増え、特にカップルで受検する方が増えました。以前は、パートナーに自分の感染の有無を伝えていない例が多くありました。今ではみな検査の重要性を理解していますし、プライバシーが守られるのでカップルで来院し、片方が陽性で片方が陰性の場合はどうしたら良いか、などの質問もたくさんしてくれます。喜ばしいことです」と話してくれました。

検査を受けやすい施設の開設、そしてAARが長年支援してきた現地の若者による地域住民への啓発活動が、エイズ対策に相乗効果をもたらしています。

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「ここなら会話を聞かれる心配がないので安心」。検査を受けに来た女性とカウンセラーのチェロさん(左)(2012年10月19日)

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施設の完成式典でも、地域の若者が劇で検査の重要性をアピール(2012年10月3日)

地域のエイズ対策の拠点として

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施設に併設された情報センター。資料や教材を自由に閲覧できます(2012年10月3日)

施設にはHIV/エイズに関する資料や教材を集めた情報センターを併設しました。地域住民が自由に閲覧することができます。クリニック職員によるHIV/エイズ予防に関するセミナーの開催も予定されています。周辺の学校には図書館がないため、HIV/エイズについて情報を集めている学生たちも放課後にセンターを訪れるようになり、地域のエイズ対策の拠点として活用されてきています。

新しい施設での受検者数は10月に112名、11月に135名と増え続け、1日の受検者が10名を超える日もありました。この地域で活動を始めた3年前と比べると3倍以上に増えました。

AARは2013年からは、HIV陽性者に対するエイズ治療薬の継続的な服用を支援する活動も開始しました。HIV/エイズに苦しむ人々を減らすため、活動を続けてまいります。

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AARが支援しているエイズ対策クラブの学生たちが、イベントで「検査を受けよう!」と、劇などで地域住民に訴えました(2012年6月30日)

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啓発活動に取り組む学生と駐在員の河野洋(左)、永井萌子(右)

※この活動は、皆様からのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ザンビア事務所駐在 河野 洋

東京事務局でスーダンの水・保健事業やザンビアのHIV/エイズ対策事業などを担当した後、2012年1月よりザンビア駐在。2010年パキスタン洪水や2010年ハイチ大地震の緊急・復興支援、2011年の東アフリカ地域干ばつ緊急支援にも携わる

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