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ラオス:不発弾でケガをした人がいたら、あなたはどう行動しますか?村落保健ボランティアへの研修、その成果は

2013年10月24日  ラオス地雷対策
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ラオスでは、1960~70年代のベトナム戦争とラオス内戦中に200万トンもの爆弾が米軍により落とされました。その約30%が不発弾として国土に残っていると言われており、今でも不発弾による事故が後を絶ちません。特に北部のシェンクワン県で事故が多く、ラオス国家規制局の統計によると2012年は31人が被害に遭い、ラオス全体の被害者数の55%を占めています。同県で行う活動について、駐在員の安藤典子が報告します。

遠い病院よりも、近くの「村落保健ボランティア」

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「自分が学んだ知識を村人に伝えたい」と語るプンペン村の村落保健ボランティア・シーワイさん。右は安藤典子

ラオスでは医療水準が低く、不発弾の被害が最も多いシェンクワン県内でも、被害者へ適切な医療を施せる病院は各郡にひとつしかありません。救急車は県内に4台のみ。道路の多くは未舗装のため、雨季には救急車が病院までたどりつけません。治療の遅れが原因で亡くなったり、障がいが残ってしまう人が多いのが現状です。また、治療費が払えないため受診を諦める人もいます。

病院から離れた村で不発弾による事故が起きてもその場で迅速に対応できるように、AARは2010年より、村落保健ボランティア(注1)とヘルスセンター(注2)の看護師に、心肺蘇生方法や止血方法、骨折時の固定方法、搬送方法などの応急処置研修を行っています。また、病院で手当を受けて帰宅した被害者へのその後の精神的ケアの重要性についても伝えています。これまでに、207村の385名の村落保健ボランティアと25のヘルスセンターの68名の看護師に研修を行いました。また、不発弾の事故が多い74村の村落保健ボランティアとともに、不発弾事故の回避方法や応急処置に関する講習会を開き、これまでに約3,500名が参加しました。

注1:各村に1~2名おり、村長から任命される。村人へ簡単な投薬などの医療活動を行う。報酬はなく、村人からの人望と本人のやる気に支えられている。 
注2:簡易診療所で、医師または看護師が常駐するが医療設備は整っていない。風邪や下痢、軽度の外傷の診療や処置、薬の処方を行う。

草や尿で止血-まだまだ多い、昔ながらの治療

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研修を行ったミー村の村落保健ボランティア・ワンカムさん(左)を再び訪れ、止血のための包帯の巻き方を確認する安藤典子(中央)

不発弾の事故によりヘルスセンターに運ばれてくる被害者は、不発弾の破片による傷で出血が止まらない場合が多く、迅速かつ的確に止血を行わなければなりません。しかし、村では止血に薬草を使ったり、傷口に尿をかけると血が止まると信じている人が多くいます。どちらも傷口が感染する原因となり、感染は傷の治りを長引かせ、その分治療費が増します。また紐で縛って止血する場合、適切に行わないと、本来は不必要な四肢の切断にもつながりかねません。そこで応急処置研修では、包帯を使って、頭や腕に怪我をした場合の正しい止血方法なども実践練習を通して教えています。

見えてきた課題

研修後、「学んだ知識が早速役に立った」という声が多くありました。しかし、研修から1年近く経つと参加者の記憶も曖昧になるため、研修後には再び村々を訪れ、知識が正しく身についているかを確認し、必要に応じて再指導を行っています。
村落保健ボランティアは村人を助ける仕事のほか、学んだ知識を村人へ伝える役目もあります。しかし、研修の1年後、再び村を訪れて話を聞くと、「村落保健ボランティアひとりでは、多くの村人に伝える機会を持つことは難しい」と、村人への啓発活動を行えずにいる村もありました。今後は、これらの村を管轄するヘルスセンター看護師の協力を得ながら、村人へ普及する機会を作ることも検討しています。今後は、これらの村を管轄するヘルスセンターの看護師とともに、村人へ普及する機会を作ることも検討していきます。

AARは、今後も多くの人が正しい応急処置方法を身につけ、村全体で不発弾事故による被害を最小限に抑えることができるよう活動を続けてまいります。

「研修後は自信がつきました」カム郡ポンカムヘルスセンター看護師ニートさん(27歳・女性)
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研修の一年後に訪ねた際に、心肺蘇生の手順が書かれたボードで復習するニートさん

AARの研修を受けてからは、今まではうろ覚えだった知識を、自信を持って村人に指導できるようになりました。村ではまだ止血の際に、患部に草を当てる人が多くいます。先日も病院到着時に草が貼りつき、その後傷口が感染し、治るのに時間がかかりました。仕事はたくさんあり大変ですが、村人を助けることができて嬉しいです。研修で学んだ知識を忘れないように復習します。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ラオス・シェンクワン事務所 安藤 典子

看護師として10年間大学病院に勤務した後、青年海外協力隊に参加しラオスで2年間活動。帰国後、看護師勤務を経て2012年1月よりAARへ。「協力隊時代にお世話になったシェンクワンの方々に、活動を通してご恩返しできて、嬉しいです」。岐阜県出身

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