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タジキスタン「障がい児の教育環境を変える」AARの新たな挑戦

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タジキスタンでは、障がいのある子どもは国内に14ヵ所ある障がい児用の寄宿学校で教育を受けることになっています。しかし、その定員は限られており、また、寮生活に抵抗を感じる保護者もいるため、障がいのある子どもたちの多くが、社会との接点を持てないまま、自宅で過ごしています。AARは、これまでタジキスタンで、障がい者団体の能力強化や職業訓練に取り組んできました。2014年1月からは、障がいの有無に関わらず、すべての子どもが地元の学校で、それぞれの特性や障がいに応じた配慮を受けながら学ぶことができるよう、新たな活動を開始しました。タジキスタン駐在員の荒木梢が報告します。

研修参加者の集合写真

教師や保護者を対象に障がい児教育に関する研修を実施しました。後列右から4番目は、駐在員の石井清志(2014年3月14日、ドゥシャンベ市内の第54番学校にて)

誰もが地元の学校で学ぶことができるように

タジキスタンの学校での説明会

イローダの職員(奥左側)が自分たちの活動について、他校の教師や保護者に説明。参加者は興味深く聞き入っていました。奥右側は、駐在員の石井清志(2014年3月14日)

"すべての子どもが地元の学校で共に学べる"という教育制度は、先進国では推進・実施されていますが、多くの途上国では試みが始まったばかりです。タジキスタンでも、2011年4月にこの制度を推進することを、政府の方針として打ち出しましたが、具体的な取り組みはなされていません。AARは、タジキスタン教育省から支援の要請を受け、活動を開始しました。

調査を始めたところ、「ルシュディ・インクルージヤ」(以下ルシュディ)と「イローダ」という民間の2団体が、障がい児教育に積極的に取り組んでいるということがわかりました。2団体はそれぞれ第28番学校と第72番学校という普通学校内で、特別支援教室を運営し、身体障がい児、知的障がい児、自閉症の子どもたちにリハビリテーションや学習支援を行っています。AARはまずこれら2校をモデルケースとし、他校への普及を目指すことにしました。

まず、普通学校の教師や保護者に、「教育を受ける権利」や特別支援教室の運営について学んでもらうため、ルシュディとイローダのメンバーを講師に、研修を実施しています。2014年3月14日に、25名が参加した研修では、障がい児への教育に否定的な意見も一部ありましたが、「考え方が変わった」「支援教室は各校に作るべき」「ぜひ、実際の支援教室を見学したい」などの意見が寄せられ、関心の高さが伺えました。今後、ドゥシャンベ市内および近郊の20校を対象に研修を行うとともに、支援教室の設置を働きかけていきます。

質問する参加者

研修の参加者からは、たくさんの質問が寄せられました(2014年3月14日)

セミナーの様子

「教員間での情報共有など、できることから始めよう」河野専門家によるセミナー(2014年3月15日)

時間はかかるけど、大丈夫
河野眞

河野 眞  障がい児支援専門家
(杏林大学保健学部准教授)

タジキスタンでは、健常児は普通校で学び、障がい児は専門機関でリハビリテーションや職業訓練を受けるという、まったく別の教育制度の中で学ぶのが当たり前となっています。普通学校の先生たちからは、「障がい児に教育をしても意味がないのではないか」という意見も聞かれました。こうした反応は、日本の普通学校に特別支援教育が導入された際も同様でした。しかし、日本ではモデル事業期間の3年間で、現場の先生たちの意識は大きく変わり、障がい児教育への理解が浸透していきました。タジキスタンでも、時間をかければ、受け入れられていくと確信しています。

日本の事例を紹介

日本の特別支援学校を訪問するようす

日本での研修中、上菅田特別支援学校の図書室で大型絵本や点字絵本などの教材を確認する4名(2014年4月21日)

日本では、障がいのある児童・生徒の支援に、すべての学校が取り組む「特別支援教育」が2007年より推進・実施されています。そのモデル事業に携わった経験のある河野眞氏(杏林大学准教授)を日本から招き、研修を実施しました。日本の特別支援教育に関する法律や教育システムについて紹介すると、参加した教師や保護者から、「日本の普通学級で障がい児を受け入れている教員は、どのようなサポートを受けているのか」など、実践的な質問が多数寄せられ、活発な議論が行われました。「さまざまな教育手法を学ぶことができた」「自分の障がいのある子どもにも、学校に通う権利があるとわかって良かった」と好評でした。

さらに普通学校の校長やルシュディ、イローダの代表の計4名を日本に派遣し、特別支援教育の現場で研修を実施。横浜市の上菅田(かみすげた)特別支援学校を訪れた4名は、「生徒一人ひとりのために工夫されている学校のシステムや設備、教材が素晴らしい」「送迎用のバスが整っていることに驚いた」などの感想を述べ、「タジキスタンでも、日本のように政府からの支援が充実すれば、良い教育ができるでしょう」と話しています。

まずは意識の改革から

タジキスタンでは、障がいのある子どもたちとの接し方に戸惑い、彼らの能力を過小評価してしまう教師も少なくありません。AARではまず、教育関係者の意識改革から始めています。長い時間がかかるかもしれませんが、障がい児が地域のなかで、人々と関わり合いながら学び、社会参画の機会を得られるよう、着実に取り組んでいきたいと思います。

※タジキスタン事務所の現地職員がfacebookで、日々の活動を紹介しています。ぜひご覧ください。(英語での報告です)

※この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

タジキスタン事務所 荒木 梢

2013年11月よりタジキスタン駐在。大学卒業後、NGOやエジプト大使館勤務、米国への大学院留学を経てAARへ。「公的な支援なしで自主的に活動している障がい児のお母さんたちを応援したい」

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