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スーダンの地雷対策を担う、若き人材よ育て

2015年12月22日  スーダン地雷対策
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首都ハルツームの小学校で地雷に関する正しい知識を子どもたちに伝えるAAR現地スタッフのヤシール(左・2015年3月23日)

20年以上にわたる内戦の影響で、多くの地雷や不発弾が残るスーダン。AAR Japan[難民を助ける会]は2006年から地雷対策活動を行っています。村々を回り、住民に講習会を実施、これまでに10万人以上の方々に地雷に関する正しい知識を伝えました(2015年10月31日現在)。講習会の内容をより深く理解してもらうため、その土地の生活習慣や文化に合わせたポスター、紙芝居、歌など独自の教材を作っています。講習会を行う地域の村人や子どもたちに、地雷・不発弾に対する意識などについてインタビュー調査を行い、その結果を教材作りに反映させています。

現地NGOのスタッフに研修

スーダンのカッサラ州

AARがいなくなっても持続的に地雷対策が行われるよう、現地NGOの能力も強化しています。その一環として、現地のパートナー団体から研修生2名を受け入れました。研修期間は2015年6月から10月末までの5ヵ月間。内容は、地雷に関する正しい知識を伝えるラジオドラマの制作です。

日本の約7倍の国土を持つスーダンでは、AARが直接講習会を開催できる場所は限られます。そこで、2013年10月からはラジオドラマを作成し放送し、現在はカッサラ州で放送しています。テレビよりもラジオが普及している同国では、多くの人々にアピールするためにはラジオドラマが効果的です。

活動する地域の文化に合わせて

研修生のマグダ・ナスラディン・ククとムハンマド・ムバラク・エルバドウィは、まずラジオや歌などのオーディオ教材の基礎を学んだ後、ラジオで流すためのドラマの筋書きや歌のメッセージを練りました。そして8月末には当会の事業地であるカッサラ州で、ドラマのシナリオと歌を作り、レコーディングを行いました。

ドラマや歌を作る上で重要なことは、放送する地域の言語や文化を大切にし、現地の人の関心を惹くものにすることです。スーダンの公用語はアラビア語ですが、地方の多くの人の母語は地方言語です。放送する内容が正確に理解され、かつ、人々の関心を惹くためには、地方言語に翻訳することが重要です。カッサラ州の主要な言語だけでも6つあります。また、民族が違えば文化も違うため、各文化に合った内容である必要があります。そのため、ドラマや歌作りは、必ず現地のラジオ局と、翻訳する言語を話す民族の代表者たちと一緒に行います。ストーリーの大枠や伝えたいメッセージは先に決めておき、話の詳細や台本は各民族の人たちと一緒に作っていくのです。場合によってはストーリーや登場人物を変えることもあります。ストーリーの大枠を考え、議論をリードするのは研修生です。AARスタッフの指導のもと、入念に準備をして臨みました。

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要所で研修生のマグダ(左)とムハンマド(右)にアドバイスを行うAAR現地スタッフのヤシール(中央)(2015年8月24日)

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ラジオで流す歌を弾き語る地元のアーティスト。地雷から身を守るためのメッセージに、アラブの楽器ウードを使ってメロディをつけていきます(2015年8月24日)

ドラマと現実、ここが違うよ!

スーダンの人々にとって家畜の牛は貴重な収入源であり、何より大事な財産のひとつです。そんなスーダンの人々へ、地雷から身を守る方法を伝えるためのラジオドラマは、こんな内容です。

ある男性が、牛を連れて村のはずれを歩いていました。「餌が見つからず、牛はやせ細っていくばかり。どこかに良い草むらはないかな」。その男性は大事な家畜の餌を探していたのです。なかなか良い場所が見つからず、さらに歩いて村のずっと外れまで来ると、前方に草が生い茂っている場所を発見しました。

「これはいい。きっと、牛たちはお腹がいっぱいになるぞ」。すると、後ろから老人の声がしました。「この辺りには地雷や不発弾が埋まっているところがあるから気をつけるんじゃよ。以前、この辺りで戦争があってのう。危険だから誰も近寄らんのじゃ」。たまたま通りかかった老人が親切に忠告してくれました。しかし牛飼いは聞く耳を持ちません。「おれの大事な牛が腹ペコなんだ。そのせいで、ろくに乳もとれやしない」。

結局、彼は牛とと もに草むらに入っていきました。上等な草を、牛たちは美味しそうに食べています。その様子を見て、牛飼いも大満足。「これで美味しい牛乳がとれるぞ」。牛飼いが安心して腰を下ろした瞬間、「ドーーン!!」背後から強烈な爆発音。振り返ると、彼の大事な牛3頭が血まみれで倒れています。まさか...。そう、牛が地雷を踏んでしまったのです。彼は気が動転し、どうして良いか分からず、とにかく一目散に走って家に帰り着きました。

顔面蒼白の夫を見て奥さんが驚きます。「あなた、どうしたの?!」。「実は、牛が草むらで餌を食ってたら、突然地雷が爆発しちまったんだ。大事な牛が3頭も死んじまったんだよー!」。奥さんは答えます。「あなたが死ななくって良かったわ。神さまのおかげね。この間ラジオで言ってたもの、人が立ち入った気配のない地域には入らないようにって。地雷が埋まってるかもしれないんだって。これからは危険な場所には行かないようにね」。

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ラジオドラマを放送する地域に住む民族の代表者たちと、ストーリーについて話し合います(2015年8月24日)

このストーリーについて、ある民族の代表の女性が異論を唱えました。「この最後の部分、ちょっと変ね。うちの民族では、男は女の話を聞かないわよ。そもそも、夫はどこへ行くかを妻に教えてくれないもの」。

そこから議論が始まりました。夫婦がコミュニケーションをとることもメッセージに加えた方が良いのではないか。結局、ドラマの最後の場面を少し変えました。男性が「どうして事故の前に言ってくれなかったんだ?」と質問し、妻が「あなたがどこに行くか言わなかったからよ。今度からはどこに行くか教えてよね」と答えるやりとりを加えたのです。

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いよいよラジオドラマのレコーディングです!(2015年8月25日)

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夫婦役の声優は迫真の演技でした 2015年8月25日)

カルチャーショックを超えて

収録は無事に終わりました。首都ハルツーム出身の研修生たちは、自分たちとは異なる言語や文化を持つカッサラ州での研修を通じて、教材作りの奥深さを実感したようです。2人の感想を紹介します。

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研修生マグダ

今回の研修で、これまでまったく知らなかったカッサラ州の文化や伝統を知りました。私の出身地であるハルツームとは違う、男女間のコミュニケーションの取り方に驚くこともありました。また、実際に教材を開発していく手順をじっくり学べましたし、現地の人々が大切にする文化や考え方に配慮する重要さを知りました。カッサラの人たちと一緒に取り組んだ今回の教材制作は、とても貴重な体験になりました。

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研修生ムハンマド

今回カッサラに行くまでは、カッサラの文化や習慣のことをまったく知りませんでした。自分とは異なる文化を持つ人たちとともに教材を制作できたので、これからはどこでも自信を持って教材開発や研修を開催できます。

地元の人たちと教材作りに取り組むことで、地雷だけでなくジェンダーなどの問題にも目が向くきっかけとなり、それが地域の発展にも繋がります。現地の人たちのために活動ができ、そして研修生にAARが培ってきた教材作りのノウハウを伝えられたことを誇りに思います。この研修を通じてAARの経験が地元の団体に引き継がれ、スーダンで活かされることを願っています。

※この支援は皆さまからの温かいご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しました。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

スーダン事務所 ヤシール・ムハンマド・イルガリ・アフメッド

2006年よりAARスーダン事務所職員。地雷講習会の評価や教材開発などに従事し研修の講師なども務める。二児の父

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