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東日本大震災:避難指示解除、でも――

2016年07月15日  日本緊急支援
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「手芸教室はみんなが集う貴重な時間」

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手芸教室の様子。完成した薔薇手まりを持って(2016年7月12日)

7月12日、福島県南相馬市の仮設住宅で、恒例の手芸教室を開きました。AARは2011年から、各地の仮設住宅で定期的に手芸教室やマッサージ、傾聴活動などを行い、住民同士の交流や健康維持をはかっています。この日は7名が参加してくださり、講師の指導のもと「薔薇手まり」を作りました。仮設住宅を退去された後もイベントに参加しに来てくださる方もいて、元の住民同士の再会を楽しむ場にもなっています。

「家に一人でいても気分が落ち込む。こういうイベントが少なくなって寂しい。手芸やクラフトはみんなで集まる貴重な時間。毎回参加しています。夢中になって作品を作ると気持ちがほぐれます」「いろんな作品を作って部屋に飾っている。友達に『いいわね~』なんて褒められるとそれをプレゼントしてあげて喜ばれる。部屋に帰ってからやることができてうれしい」と参加者の方が話してくれました。

避難指示解除の日

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9月入居に向けて急ピッチで工事が進んでいる南相馬市原町区の復興公営住宅(2016年7月12日)

12日は、南相馬市の多くの場所で、原発事故による避難指示が解除された日でもあります。引っ越しをする人の姿も多くみられました。震災以来不通となっていた常磐線の原ノ町~小高間も開通。小高駅前の人通りも多くなっていました。

一方で、住宅建設や除染の遅れ、インフラが整わないことの不安など、様々な理由で帰還を見合わせざるを得ない人も多くいます。3月にマッサージに伺った仮設住宅でお会いした70代の女性は、こう話していました。

「避難指示が解除されたら自宅に帰る予定だった。でも先日、主人が病気で急死した。車も運転できないし、広い家で周りに人もいない状況では帰れないので、避難先の公営住宅に申込みをすることにした。もう何日も眠れません」

その後、この方が復興公営住宅に引っ越したと聞き、12日に訪ねてみました。住宅自体は快適そうでしたが、たったひとりで、近所に知り合いもおらず、スーパーもなく、集合住宅の花壇の草むしりやベランダでの野菜づくりで気を紛らわしているんだ、と言います。この地域でイベントを開催した時には、ぜひ参加してくださいね、と言い残して、お宅を後にしました。

還らない人にも、還る人にも、どちらにも様々な事情があります。いろんな方のお話を伺っていると、避難指示解除はうれしいばかりでも、還ったら問題がなくなるというわけでもないことがわかります。

「たまにこういう息抜きがあると救われる」。仮設住宅でのイベントにいらして、そう言ってくださる方もいます。まだまだ厳しい生活が続く中、少しでも楽しい時間を過ごしてもらえるよう、これからもこの活動を続けていきます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

 仙台事務所 大原 真一郎

2011年8月からAAR仙台事務所勤務。仙台を拠点に岩手、宮城、福島の被災地に毎日のように足を運び、復興支援を行う。現在は仮設住宅に暮らす方々の心身の健康を守る活動を中心的に担う。宮城県出身

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