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ネパール地震から2年~自力で暮らす術を知る

2017年04月21日  ネパール障がい者支援
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2015年4月25日、ネパール中西部で発生したマグニチュード7.8の大地震は、8,000名以上の命を奪い、80万棟におよぶ家屋損壊をもたらしました。AAR Japan[難民を助ける会]は、4月29日より緊急支援チームを派遣し、食料などの支援物資の配付と損壊した学校の仮設校舎42棟の建設を行い、のべ約12,300名の生活再建を支援しました。2015年10月からは、首都カトマンズの当事者団体『自立生活センターIndependent Living Center for Persons with Disabilities in Kathmandu(以下 CIL)』と協働し、障がい者の生活の質の向上を目的とした2つのプログラムを実施してきました。

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足が不自由でも、バイクに乗れることを知って喜ぶプログラムの参加者(2016年11月16日)

まず1つめは、比較的軽いアルミニウム製の車いすの製造です。CILは、AARが日本やパキスタンから招いた専門家の指導のもと、今年1月までに計100台の車いすを製造し、地震で被災した障がいのある方に届けました。昨年12月に出張した際、車いすを受け取った方の自宅を訪問したところ、「軽い車いすなので家の中で使うのに重宝している。トイレにも一人で行けるようになりとても助かっています」と、車いすによって生活が楽になったことを報告してくれました。

そして2つめは、地震で負傷し、車いすなどの補助具を使用することになった方など50名を対象に昨年10月から行った「自立生活プログラム」です。それまで身体的に不自由なく暮らしていた方が、車いすを使わざるを得なくなるなどの劇的な生活の変化に適応するには、身体的にも精神的にも大きな負担がともないます。気分が深く落ち込み、何もやる気が起きないという状態になる方も多くいます。そこで、リハビリなどの理学療法のほか、さまざまな相談を受けるピアカウンセリングなど、対象者の生活全般を支えるプログラムを構成しました。また、以前から車いすで自立した生活をしている方の家にホームステイをしてもらい、生活面でのアドバイスを受けたり、精神面での相談に乗ってもらったりしました。

プログラム修了者と話をすると、「笑って過ごせる日が増えた」「自分のことが自分でできるようになり、自信がついてきた」という感想や、「地震前に通っていた学校にまた通えるようになりたい」といった具体的な目標が聞かれ、多くの方が精神的に立ち直ってきていることがわかりました。

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CILのメンバーとAARの大室和也(左から2番目)(2016年12月2日)

どちらのプログラムもCILにとって初めての挑戦であったため、それを乗り越えたCILメンバーに豊富な経験と知識、また多くの人とのつながりをもたらしました。今後もCILが、この経験とつながりを糧に、ネパールの障がいのある方々の生活の質の向上のため、活発に活動を続けていくことを期待しています。AARのネパール支援は、今年の3月をもって終了しました。皆さまの温かいご支援、本当にありがとうございました。

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「自立生活プログラムで習った運動を続け、右腕が動かせるようになりました」。地震の際の怪我で、車いすを使用することになったラメシュさん(左)とAARの大室和也(2016年12月3日)

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 大室 和也

大学卒業後、理学療法士として働きながら大学院で介護予防を研究。病院勤務を経て青年海外協力隊などに参加後、2013年7月にAARへ。趣味は読書。京都府出身

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