活動ニュース

ザンビア:「元難民」の新たな生活を支える

2017年06月14日  ザンビア
RSS

メヘバ難民居住区のある北西部州

AAR Japan[難民を助ける会]はアフリカ飢饉が問題となった1984年以来、33年間、ザンビアで支援活動を続けています。活動開始当初は、母国の内戦から逃れた多くのアンゴラ難民が暮らす北西部州のメヘバで、医療や教育、農業などの支援を行っていましたが、2002年にアンゴラ内戦が終了し、難民の多くが祖国に戻ったことを受け、その後の活動の場をザンビアの首都ルサカ市内やその近郊に移し、当時深刻な状況にあったHIV/エイズ陽性者の支援や、医療サービスの行き届いていない農村部での母子保健サービス強化に取り組んできました。
2017年3月からは、再びメヘバに事務所を開設し、祖国アンゴラに戻らずザンビアに定住することを決意した「元難民」とザンビア市民がともにコミュニティを創るための活動を開始しました。

新たな自助コミュニティづくり

アフリカ南部に位置するザンビアは、1964年の独立以来内政が安定していることから、周辺諸国から多くの難民を受け入れていきました。アンゴラだけでなく、ルワンダ、コンゴ民主共和国、ブルンジなどから逃れ、ザンビアにたどり着いた難民は25万人を超え、現在も5万1000人以上の難民および元難民がザンビア国内で暮らしています。ザンビア政府は、ザンビア人の希望者を対象に、未開発の土地を提供して開発を促すプログラムを行っており、2014年より、母国の紛争が終了して、難民資格を失った元難民にも同プログラムが適用されることになりました。元難民に「再定住地」として土地と永住許可を与え、現地統合を促すこの取り組みは、長引く難民問題を解決するための新たなアプローチとして注目されています。

rpt1705_2291_8naoe.jpg

家庭訪問による聞き取り調査を行うAARの直江篤志(2017年4月)

AARが1984年~2004年まで難民支援を行っていた北西部州のメヘバは、ザンビア国内最大の難民居住区の一つです。ザンビア政府は、メヘバ周辺にある、森林地帯を人が居住できるように整備して土地を割り当て、国際機関やNGOとともに、そこに元難民とザンビア人がともに暮らすことができるようにするプロジェクトを進めています。

AARは2015年より、現地でニーズ調査を開始。そして今年4月12日から21日までの間、再定住地で生活を始めた住民の生活状況を詳しく把握するため、家庭訪問による聞き取り調査を行いました。昨年、再定住地に家を建てたばかりの元アンゴラ難民の9人家族の父親は、「以前住んでいた場所は周囲が気心の知れた人ばかりで、食べものに困ったときは、お互いにメイズ(白いトウモロコシ)や野菜を交換したりしていたが、ここではそういったことができなくなった」と話します。再定住地では一世帯当たり5ヘクタール以上が割り当てられるため、それぞれの家が広大な土地に散らばっています。家も自分たちで建てなければならないため、家が完成するまで、10人を超える家族が1つのテントで生活をしていたり、家が完成していても作物がまだ育たず、現金収入はおろか、家族の食糧でさえ賄えずに困窮している家庭がたくさんあります。

rpt1705_2291_13tent.jpg

再定住地に移住してきた人々は、家が建つまでこのようなテントで暮らしています(2015年8月)

厳しい環境であるからこそ、一刻も早い地域の人々が助け合える環境づくりが求められています。また、調査の結果、移り住んだ人たちの多くが、生活に不可欠な水の確保について不安を感じていました。
政府は井戸の設置を進めていますが、どのように維持、管理していくかは決まっていない状況です。再定住地ではさまざまな場所から人が集まって住むことになるため、AARはこの再定住地で住民による自助グループを組織して、各グループから水管理委員を選出し、彼らが井戸の維持管理を行っていけるようサポートしていきます。さらに、各グループから衛生啓発委員を選出し、衛生環境の改善にも取り組んでいきます。選出された衛生啓発委員は、衛生啓発のための講習会に参加し、所属グループの住民に対して衛生啓発活動を行っていきます。これらの活動をきっかけに、元難民、ザンビア人を問わず、住民同士が助け合うコミュニティづくりに貢献したいと考えています。

rpt1705_2291_1field.jpg

再定住地に移住した家族。森林を切り開いて農地を作り、テントで仮住まいしながら家を建てています(2016年9月)

rpt1705_2291_9goto.jpg

学校で衛生知識に関する調査を行うAARの後藤由布子(2017年5月)

難民支援には入口の支援と、出口の支援があり、メヘバの活動は後者に含まれます。世界には多くの難民キャンプや居住地があり、そこで数十年にわたり暮らしている人、キャンプ内で生まれ育った人などが存在し、難民支援は出口の見えない状況です。そのような中で、この現地統合政策は、難民支援の出口戦略の新しい試みとして捉えることができます。AARは、この再定住地が元難民、ザンビア人にとって、彼らの故郷のように人々が助け合うコミュニティになるよう活動してまいります。

rpt1704_2291_1meheba.jpg

新たな生活を始めたアンゴラ人家族とAARの直江篤志(後列右)、後藤由布子(後列左)(2017年3月)

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ザンビア・メヘバ事務所 直江 篤志

2017年3月より現職。企業に6年間勤務した後、米国の大学に留学。その後、青年海外協力隊に参加し、理数科教師として2年間ザンビアに赴任。帰国後2011年10月AARへ。趣味は海外長編小説を読むこと。岡山県出身

< 活動ニューストップに戻る

ページの先頭へ