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ミャンマー避難民:両親のいない避難民の子どもたち

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ミャンマー西部ラカイン州から隣国バングラデシュに逃れたイスラム系少数派の避難民は、大量流入が始まった昨年8月以前から居住する人数を合わせると、現在確認されただけで約90万人、実際には100万人を超すとみられています。AAR Japan[難民を助ける会]は昨年12月、バングラデシュ南東部コックスバザール県に事務所を開設し、同県の避難民キャンプで支援物資の配付や、公共トイレ・水浴び場の建設プロジェクトを進めています。避難民キャンプには、何らかの理由で両親を失い、兄弟姉妹で助け合いながら暮らす子どもたちもいます。避難世帯への聞き取り調査で出会った、子どもたちを紹介します。

18歳、14歳、7歳の3人で避難生活を送る

テント内の3人兄弟姉妹の写真

3人で暮らすヌル・シャバさん(左端)と妹、弟。キャンプ内のテントにて(写真の日付はすべて2018年1月27日、クトゥパロン避難民キャンプ)

見渡す限り粗末なテントが広がるクトゥパロン避難民キャンプ。川を見下ろす急斜面に、ラカイン州マウンドー地区から逃れてきたヌル・シャバさん(18歳)たちの小さなテントがあります。山で伐採した竹を売って生計を立てていた一家の両親は2年ほど前、相次いで病死してしまい、ヌルさんは弟のフセイン・ゾハさん(14歳)、妹のヌル・ヤーシンさん(7歳)の親代わりになって3人で暮らしていました。昨年8月下旬にミャンマーの治安部隊が村々を襲ったとき、3人は着の身着のまま5日間歩いて国境を越え、避難民キャンプにたどり着いたと話してくれました。「逃げる途中、殺された村人の遺体を道端でたくさん見ました。私たちの家がどうなったか分かりませんが、きっと焼かれてしまったのでしょう」

キャンプでの避難生活。配給は米や豆だけ...

ヌルさんは毎朝5時に起きてお祈りをし、コーランを復唱した後、テントの片隅で火を起こして朝昼2食分のご飯を炊き、午前9時頃に3人でご飯とダル(豆カレー)の朝食をとります。夕方もう一度調理しますが、食材は基本的に国連世界食糧計画(WFP)から届く米、豆、食用油だけです。配給の知らせが来ると、丘を下り、竹材を組んだ橋を渡って徒歩20分ほどの配給所まで出かけます。キャンプの中には野菜や卵、干し魚、菓子などを売る店もありますが、「私たちはお金を持っていないので何も買えません。特に食べ盛りの弟は今の食事では足りないのですが...」。同じ地区にいる叔母がときどき様子を見に来ては、魚カレーなどを差し入れてくれるのが唯一のご馳走です。

広さ8畳間ほどの土間にゴザを敷いて寝起きし、斜面の下にあるポンプ式井戸で飲み水を汲んだり、洗濯をしたりします。弟は日中半裸になって水浴びができますが、女性が水浴びできる場所はありません。そのため、ヌルさんと妹は水差しを使って髪を洗ったり身体を拭いたりできる程度です。もちろん電気はなく、暗くなれば何もできません。妹は現地NGOが運営する教室に通うことができ、午前11時半から午後2時までミャンマー語と英語、算数を勉強しています。ヌルさん自身はミャンマーで小学校(5年制)しか通っていませんが、「弟や妹はもっと上の学校まで行って、自分たちがしたい仕事に就いてくれればいいなと思います」と話します。

頭に支援物資を乗せ、竹材で組まれた橋を裸足で渡る避難民の女性

小高い丘陵を切り開いて造られたキャンプ。竹材で組まれた橋を渡って配給所に向かいます(クトゥパロン避難民キャンプ)

大勢の避難民が配給所に集まる様子。高齢の方から子どもまで、多くの人が配給を待っています

配給所の前に集る、大勢の避難民(クトゥパロン避難民キャンプ)

「ここでは夜、安心して眠れます」

ビニールと竹材で作られたテントが、小高い丘陵に密集するキャンプ

ヌルさんのテントから見たキャンプの風景。ビニールと竹材で作られたテントが密集しています(クトゥパロン避難民キャンプ)

ミャンマー、バングラデシュ両政府は1月16日、2年以内に難民の帰還を完了することで合意し、1月下旬から帰還を開始すると発表しましたが、開始時期が延期され先行きは不透明です。避難民の人々は口を揃えて「破壊された家やモスクが再建され、身の安全が保障されるまで帰れない。帰還後も国連機関や国際NGOがいてくれないと、また同じことが繰り返されるだけだ」と訴えます。ヌルさんにミャンマーに帰りたいか尋ねると、「帰りたくありません。ミャンマーではいつ襲われるか、どんな嫌がらせをされるか、いつも怯えていました。ここでは少なくとも夜、安心して眠れますから」と答えました。

AARは現在、毛布や子ども服、蚊帳などの支援物資の配付を進めています。配付にあたっては、世帯を一軒一軒訪問し、支援物資の配付状況や家庭の状況を聞き、より困難な状況におかれているヌルさんたちのような子どもだけの世帯、女性が世帯主の家族、お年寄りや障がい者がいる家庭を優先するように努めています。物資の配付は進みつつありますが、人々は例年にない寒波の中、ビニールを屋根や壁がわりにしただけの小屋で暮らしています。また、これまで設置されたトイレの約4割が機能していないなど、衛生面の問題が多くあります。AARは、厳しい生活を余儀なくされている避難民の生活環境が少しでも改善できるよう、取り組んでまいります。

ミャンマー避難民問題は長期化が懸念されています。引き続き、皆さまのご支援をお願いいたします。

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    【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

    バングラデシュ・コックスバザール事務所 中坪 央暁

    大学卒業後、新聞社で特派員、編集デスクを経験。ジャーナリストとして平和構築支援の現地取材に携わった後、2017年12月にAARへ。栃木県出身

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