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活動報告
タイトル
カンボジア職業訓練校・テレビ/ラジオ修理コースの授業風景です
報告者
JICAシニアボランティア 千葉 辰朗
報告年月日
2005年4月
カンボジア事務所では、地雷被害者やポリオ後遺症等による障害者の自立支援のため、キエンクリエン障害者支援センター(KKC)を運営・支援しています。約40名の生徒が1年間バイク修理、テレビ・ラジオ・ビデオ修理や縫製等の技術訓練を受けています。技術だけでなく識字・ビジネスマナーも教えています。2000年より2年交代で、JICA(国際協力機構)シニアボランティアが現地の指導員を補佐し、技術指導にあたっています。今回は、2004年5月より同校のテレビ・ラジオ修理コースを指導されている、JICAシニアボランティア・千葉辰朗さんからの報告です。
■充実したカリキュラムと講師陣
テレビ・ラジオ修理コースの講師・ソム・ロスさん(左端)
テレビ・ラジオ修理コースの講師・ソム・ロスさん(左端)
「障害ある生徒たちが自活できるように、しっかり技術と知識を教えたい」という、熱意あふれた先生です。
私の勤務は木曜と金曜の週2日だ。前任者が素晴らしい実績を上げて帰国されたので、後任として着任した私は、本校生徒の実態をはじめ授業内容など、まずはじっくりと観察させていただいた。

はじめにテレビ・ラジオ修理コースの授業。配置、時間配分に実技指導など、総合してカリキュラムは完成しており、申し分ない。

本コースの優れた点を以下にあげたい。 

第一に、直接生徒にかかわる担当講師のソム・ロスさんが素晴らしい。
テレビ・ラジオ修理技術に精通していることはもとより、障害のある生徒に対して、どうしてもこの学校で身につけた「技術と知識」で自活させるのだという気概と熱意にあふれている。

加えてソム・ロスさんは、実技指導に明るく、講義における間合いや、教育技法(OHPの使用方法など)にも様々な工夫をこらすなど、研究熱心で指導に厚みがある。その上、彼は前年度の授業内容(パソコンに蓄積してある)を振り返り、今年の講義内容に改良・改善を加えてもいる。

ソム・ロスさんを補佐するメイ・サミットさん
ソム・ロスさんを補佐するメイ・サミットさん
明るく向学心に富む彼は、このコースになくてはならない存在です。自身も車椅子を利用する障害者です。

第二に、本校の卒業生で現在テレビ・ラジオ講師補佐を務めるメイ・サミットさん。自身も障害があり車椅子を使用している。彼は職務として授業及び実習においてソム・ロスさんを補佐するのは当然だが、むしろパートナーとしての存在が大きい。

メイ・サミットさんは、実務について堪能なばかりでなく、向学心に富み、性格も明るく、素直で柔軟性に富んだ好青年である。本コースでは実に大きな存在だ。授業中の生徒への目配りや理解度を細かく確認したり、授業内容に変更が生じても臨機応変に対応するなど、とても好感が持てる。

第三に、授業・実習教室とは独立した、もう一つの部屋が確保されている点。
現在この部屋は、教官の予備実習室及び教材置き場となっている。しかし、例えば卒業生の多くが卒業後も指導を受けるために来校するが、その際に指導室としたり、多少の自己負担はあるにせよ、携帯電話やコンピュータなどについての追加講義の際に普段の授業と平行して活用できるなど、多用途に、かつ合理的に使われている。


■生徒が1人残らず理解できるまで授業は終わりません
以下に新年度からの取り組み状況についてあげたい。
1月からの入学生が希望を胸に新生活を初めて間もなく3ヵ月目になる。
訓練生はおよそ2週間にわたる識字教育を終え、1月の後半から待ちに待った本来のテレビ・ラジオ修理の授業が始まる。
私はこのカンボジアで、導入部として彼らが「電気とはどんなものか、電気をどのように教えるのか」を実に楽しみに待っていた。

この日の授業担当は、メイ・サミットさんだった。授業内容は修理工具の取り扱いで、今日からいよいよマルチテスター(計測器)の取り扱いだという。(後でソム・ロスさんに聞いたら、今後は可能な限りメイ・サミットさんに授業を受け持たせ、自信を持たせたいというお話であった。)

また、この日が私にとって生徒たちとの初顔合わせの日でもあった。私はメイ・サミットさんにお願いして教室に着席した生徒たちを前に、カンボジア語で挨拶をさせてもらった。と言っても「私の名前は千葉辰朗です。日本から来ました。年令は65才です。」とこれだけ。

しかしこれだけなのに、訓練生と何がしかの繋がりができたらしい。続いて一人ずつの顔写真を撮らせてもらう。理由も無しに撮影したが、普段の顔というか、表情がそのまま出ていて良かった。だが、何人かうつむいた訓練生もいた。多分とまどっていたのだと思う。(自作の生徒個票に使用)

続く授業が、大切なマルチ・テスターの取り扱いである。プリントを渡してからOHPを使い、メイ・サミットさんも真剣な表情で説明する。テスターで測定可能なものは、AC電圧[V]・DC電圧[V]・DC電流[mA]・抵抗[Ω]の4種類であること。
ここで少し心配になった。これではとても覚えられないのでは?と思う訓練生もいたからである。けれどメイ・サミットさんは辛抱強く粘りに粘って、すべての生徒が口で唱えることができるように導いた。凄い。

次に指針の読み方。これも前述の、かなり骨の折れる生徒がいた。とにかくメイ・サミットさんは一つのことを教えるたびに、車椅子で駆け回り一人ずつ確認する。そしてついに全員、口で言えるようにしてしまった。敬服。
マルチ・テスターの取り扱いは、一日5時間半の授業が2回続いたことになる。

JICAシニアボランティアの千葉さん(左)
JICAシニアボランティアの千葉さん(左)
デジタルICの講義では、汗びっしょりになりながらも熱心に生徒たちに指導してくださいました。

■私も講義に挑戦。汗びっしょりの2時間半でした
当校では金曜日の午後に会議が開かれることが多い。そこで私は以前から、これをIC(集積回路)トレーナー(デジタルIC実験・応用セット)の講義時間として入れて貰うことを交渉し、了解を得ていた。

ある金曜日の午後。今日から、デジタルICの講義をしてくれとソム・ロスさんからゴーサインが出た。私は多少とまどいながらも、英語のできる生徒の助けを借りて、パルス(ごく短時間だけ流れる電流や電波。衝撃電流)の話から始めた。サムロスさんからも、覚えが比較的遅い訓練生もいることを伝えられていた。デジタルは、カンボジア人にとっては難しいので、時間をかけてくれと注文もあった。この日はともかく、二進法(二倍ごとに桁を一つ増やす数え方。すべての数を0と1との組み合わせで表す。コンピューターで利用される)の考え方。二進数と十進数の違い。ビットの概念までを終わらせた。
およそ2時間半、私は汗ビッショリ。

デジタルは、今後VCD・デジタルTV・携帯電話からコンピュータまで、この国でも取り組むに値する重要な電子技術のひとつだ。そこで私は ICトレーナーの日本語マニュアルを、協力者の助けを得てカンボジア語に翻訳した。これはICの利用方法や考え方を含め、論理数学まで実験しながら学習できる。今後は、空き時間を活かして活用していきたい。

■熱意あふれる講師による素晴らしい授業
この日、電気抵抗の授業中、メイ・サミットさんが都合で席をはずしたので、ソム・ロスさんがOHPの前に立ち、電気抵抗について説明を開始した。彼はOHPシートを載せ、電気回路をカンボジアの国道に擬えて、これは我が国の国道1号線だよ、と話し出した。なめらかな周回コースが楕円形に描かれ、出発点は電源部と重ねてある。

「ここは高速道路だから、車は時速100Kmで走れるが、屈曲した道路(抵抗記号に似せて道路を描いた)に入ると、とてもこんなスピードでは走れない。つまり、抵抗の少ない直線道路だと時速100Kmで走れるが、ジグザグ道路では車の速度もおよそ50Kmにスピードを落とさなければならない。このスピードの減少は電気抵抗に拠るのだ」、と説明していた。
とてもわかりやすかったし、訓練生たちも頷いていた。可能であれば、摩擦と電気抵抗の関係など、抵抗による発熱作用(ジュール熱)の説明もあれば、とも考えられる。
しかし訓練生たちにはこの時点で、何よりも“自分が納得できる”説明が大切だったと思う。

このように、授業は一見スローペースに見えるが、教える側の先生が「私は、どうしてもこのことをあなたたちに教えたい。」という熱意が伝わってくる内容だ。素晴らしいと思う。生徒たちがここで基礎をしっかりと学び、巣立つ日が今から楽しみである。

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