■今や国家の非常事態
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ルサカ近郊の墓地にて
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| 今日もまた、一つの生命が消えました。ザンビアは近年死亡者が急増し、墓地の整備が追いついていません。ルサカ近郊には墓標がどこまでも続いています。(撮影:久保真人) |
2004年7月に国連開発計画(UNDP)から発表された報告書で、難民を助ける会が活動する南部アフリカの国ザンビアは、世界で一番命の短い国と報告されました。アンゴラやアフガニスタンのように内戦や戦争に巻き込まれたわけではありません。地震や津波など自然災害の被害にあったわけでもありません。
それにもかかわらず平均寿命をここまで下げたのは、エイズ感染拡大の影響です。過去20年間の平均寿命の推移をみると、最初にエイズ患者が発見された1984年ごろから、平均寿命がだんだん下がっていくのが明らかです。(下図ご参照)
ザンビアでは、成人の6人に1人がエイズウイルスに感染していると推定されています(UNAIDS2004統計による)。この規模になると、単なる病気の蔓延ではありません。働き盛りの年代が次々と死亡し、労働人口の低下による経済の停滞などの影響が出ているため、2004年には政府が国家非常事態宣言を発令するまでになりました。
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エイズで苦しむ人たちを助けるメアリーさん(右)
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| 笑顔が素敵なみんなの「お母さん」。訪問先の子どもと。 |
■闘うボランティアたち
エイズは、もともと貧しい地域社会を直撃し、住民一人ひとりがその影響を受けています。
難民を助ける会でボランティアをしているメアリー・ムベウェさんは、49歳。首都ルサカ市内の中低所得者居住地域・ンゴンベ地区にある在宅看護グループの一員です。
メアリーさんは1997年から地域のボランティアとして働いていますが、彼女もまた個人的にHIV/エイズの影響を受けた一人です。彼女は15歳で結婚しましたが、すぐに両親が亡くなったため、貧しいながら5人の兄妹の面倒も引き受けました。苦労してやっと兄妹たちを育て上げたと喜んだのも束の間、彼らは次々と結核や下痢、皮膚病などに侵されたのです。それは、今から思うと典型的なエイズの症状でした。
一人看病に明け暮れるメアリーさんのもとに、ある日話を聞きつけた教会のシスターが訪ね、彼女を励ましたり、食糧を届けてくれました。それは孤軍奮闘してきた彼女にとって、大きな支えとなりました。兄妹たちは残念ながら亡くなりましたが、そうした経験から、今度は自分が困っている人たちを助けたい、と思ったそうです。
現在、彼女は在宅看護の活動を通して、地域社会全体にHIV/エイズに関する正しい知識を持ってもらおうと、日々活動に励んでいます。
「難民を助ける会が支援する子どもたちがきちんと教育を受けることで、地域社会に良い影響を与えられます。」とメアリーさん。「子どもたちは、なぜ自分たちが援助を受けているかを理解しています。そして、大人になったらそれを社会に返すべきであることも。」と言って微笑みました。
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当会の支援で学校に通えるようになったモーゼくん(左)
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| 右は芦田駐在員 |
■親を失った子どもたちが63万人以上もいる
モーゼ・ムワンザ君(9歳)の母親は、1999年に胸や背中の痛みや呼吸困難を訴え始めました。それ以前にも体重の減少があったそうです。闘病中に二度出産しましたが、赤ちゃんはいずれも生後2週間程で死亡。母親も長い闘病の末、2002年に亡くなりました。死因はエイズだったと医師に告げられたそうです。
翌年には父親も死亡。死因ははっきりしていませんが、体重の減少、下痢や皮膚病など、エイズ末期特有の症状が出ていたといいます。
モーゼ君たち兄弟5人は、祖父母に引き取られました。現在は、家族22人で住んでいます。22人のうち、モーゼ君兄弟を含む10人が孤児です。祖母は地元でよく飲まれているメイズから作ったビールを売って生計を立てています。お金のあるときは子どもたちを学校に送りますが、定期的に通わせることができるわけではありません。末っ子のモーゼ君は、今まで学校に行ったことがありませんでした。難民を助ける会の支援で地元の公立学校に2005年1月から通えるようになり、本当に嬉しそうです。
モーゼ君のように親に先立たれた子どもたちが、ザンビアには推定63万人、またはそれ以上いると言われています。
■エイズが「過去のもの」となる日まで
国の将来を担う子どもたちが、最低限の教育を受けることが必要なのはもちろんですが、教育は、エイズを予防する上でも大変重要です。教育を受けていない子どもは、受けた子どもの2倍もエイズウイルスに感染する可能性があるといわれています。それは、字が読めないために予防啓発のメッセージが届かなかったり、ストリートチルドレンとなって感染に繋がりやすい生活を送ったり、大人になったときに感染の危険がより高い仕事に就く可能性が大きいためです。
エイズが蔓延する社会に生まれたザンビアの子どもたちも、日本の子どもたちと同じように、夢を持ち続けながら、未来に希望を抱きながら成長してほしい。正しい知識をもって、将来エイズウイルスに感染しないでほしい。そして、現在のエイズ危機が「過去のもの」になる社会をつくりたい。そうした地域の人々の希望を現実にするために、難民を助ける会は、ザンビアの人々とともに、エイズに負けない地域づくりをしていきたいと考えています。
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