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活動報告
タイトル
「対人地雷禁止条約 第6回締約国会議」参加報告
報告者
東京事務局 紺野誠二
報告年月日
2006年1月
クロアチアの首都ザグレブ。90年代初頭のユーゴの内戦で独立した国家。その代償というわけではないのかもしれないが、国内には多くの地雷が埋設され、いまだに地雷による被害に苦しめられている国。今回の対人地雷禁止条約第6回締約国会議は、小雪舞うこのザグレブで開催された。

●目次

小雪舞うザグレブで
地雷問題における障害者支援
日本政府の発言
被害者支援のあるべき姿
対人地雷対策の今後
ザグレブ空港にて

■小雪舞うザグレブで

クロアチアの首都ザグレブ。90年代初頭のユーゴの内戦で独立した国家。その代償というわけではないのかもしれないが、国内には多くの地雷が埋設され、いまだに地雷による被害に苦しめられている国。今回の対人地雷禁止条約第6回締約国会議は、小雪舞うこのザグレブで開催された。

対人地雷禁止条約というと多くの方は1997年にノーベル平和賞を受賞したICBL(地雷禁止国際キャンペーン)の活躍を思い浮かべられるに違いない。でも、それ以降、世界中に存在している地雷はどうなったのか、地雷の製造や廃棄はどうなっているのか、具体的な変化はよく分からないというのが正直なところだと思う。日本のように貯蔵地雷の廃棄を完了した国もあれば、難民を助ける会が活動しているアンゴラやアフガニスタンなど、いまだに地雷で苦しんでいる国もある。

会議場の様子
会議場の様子

今回の会議は1999年3月1日に発効した対人地雷禁止条約(オタワ条約)のフォローアップの一環として行なわれた会議といえる。昨年もこの時期にケニアのナイロビで開催された第1回検討会議で採択された「ナイロビ行動計画」に対しての進捗状況を報告し、同計画に沿って議論を深めていく場ということになる。その「ナイロビ行動計画」を簡単に説明すると、2005年〜2009年の5年間に地雷問題に対して締約国が積極的に取り組んでいきましょうというもので、70の行動を掲げている。その中では地雷除去や被害者支援を最優先していこうなどとも述べられている。
(対人地雷禁止条約やナイロビ行動計画についてはJCBLのホームページを参照。これらの文書は日本語に訳されている。)

それにしても世界各地から数多くの地雷廃絶活動家(キャンペイナー)が参加している。アフリカ、アジア、中東、ヨーロッパ、中南米、旧ソ連、そしてオセアニア。こうしてみると世界は広い。いくつかの国からは被害者も参加している。ひざから下を失った人、松葉杖の人、車椅子の人。本当に人それぞれ。人種も宗教も考え方も生活習慣もまったく違う人々をつないでいるもの、それが「地雷廃絶」という考え。本当に奇跡のような気がする。政府代表でもない一般の人々が、たった一つの目標のために集まっている。そこに自分がいるのもなんだか不思議な気がする。10年前の自分には想像できないことだ。

■地雷問題における障害者支援

クロアチアの子どもたちがデザインしたTシャツ
クロアチアの子どもたちがデザインしたTシャツ

地雷廃絶への願いが込められている

さて、今回の会議に入る前から私が一番関心を持っていたのは「被害者支援」についてである。どうしても地雷対策というと除去が最初に出てくる。私自身、コソボ自治州で地雷や不発弾の除去をしていたこともあり、除去の重要性は他の人以上に理解しているつもりである。でも、世界中のすべての埋設対人地雷が仮に除去され、貯蔵地雷が廃棄されても、被害者は残るのである。
非常に残念な話ではあるが、地雷対策の中で被害者支援への資金の振り分けは少ない。悲しいくらいに少ない。Landmine Monitor 2005のExecutive Summaryによれば、全地雷対策の費用の約10%しか被害者支援に向けられていないのが現状である。
■日本政府の発言

7月に小型武器の会合がニューヨークで開催された際には、日本政府は存在感を発揮していたが、今回の会議では、その存在は少し地味だったように感じた。
日本政府の演説のテキストは外務省のホームページに掲載されているので、詳細はそちらに譲るとしても、私が残念だと感じたポイントは大きく二つ。

(1) 被害者支援について触れられていないこと
日本政府の地雷被害者支援への取り組みは他の支援国と比較しても低い。ここ2年は日本政府も被害者支援に取り組んでいるが、2003年の支出はゼロであった。今回の会議でも被害者支援は重要なテーマの一つではあり、今後もその重要性は減じることはないだろう。ちなみに被害者支援のセッションでも日本政府の発言はなかった。
(2) 除去機械の開発にいまだに力を入れていること
日本はハイテクの国、日本の技術で世界の地雷問題解決に貢献したいという気持ちは分からないでもない。ただ、国際的な流れからするとちょっと遅れている気がする。5,6年くらい前であればよいのだろうけれど、今これを主張されるとどうしたものだろう。

会議期間中に美根軍縮代表部大使や軍縮代表部の事務官の方々とお話をする機会を設けていただき、その場でいろいろと貴重な意見交換をさせていただくこともできた。みなさんすばらしい見識の持ち主の方々で、本当に鋭いなぁと思う。ただ、外務省の方々もいろいろとあって大変なんだろうな、NGOとは違って日の丸を背負っているのでなかなか難しいこともあるのかな、と思う。
もちろん、政府とNGOで考え方も違うし、おたがいに譲れない線もあるはず。まずはどんどん議論をしていけばいいと思う。ただ、それだけでなく協力できるところは協力し、地雷問題解決のために一緒に歩んでいければと思う。NGOの存在意義は政府を批判するだけでなく、建設的な提案をしていくこと。今後も話し合いの場を持ち続けていくことが大切だと思う。

※外務省による本会議の報告は下記のウェブページを参照
     オタワ条約第6回締約国会議(概要と評価)

■被害者支援のあるべき姿

今回の会合で印象に残ったのはカナダ政府の被害者支援に対する演説であった。地雷被害者もよく考えてみると、障害者の一部。従って、地雷被害者を含む障害者全体への支援として捉えていく必要がある。
そこで出てきたのがTwin Track Approach(複線アプローチ)という考え方。これは開発という取り組み全体において、@障害者差別をなくす取り組み(メインストリーミングとインクルージョンとA障害者のエンパワーメント、この二つを同時並行して行うアプローチである。これにより障害者の完全参加と機会の均等化を実現しようとするアプローチである(久野研二、中西由起子『リハビリテーション国際協力入門』三輪書店を参照)。

また、ILO(国際労働機関)やLandmine Survivors Network(LSN)の演説も考えさせられるものがあった。被害者支援を行う上で重要なものの考え方を提示してくれたように思う。例えばLSNは5つのCという考え方を提示してくれた。
Comprehensive(包括的):障害者支援を医療(肉体的、精神的)的側面、経済的機会、権利ベースを追求するという三つの側面から行う。
Customized(個別性):個々の障害者にあった支援を行う
Competitive(競争優位):健常者よりも優れた価値を提供する。
Cooperative(協力):障害者同士、障害者と健常者が協力する。
Committed(コミット):条約の締約国が障害者の経済的統合を支援する。
100%うなづけるとはいえない部分もあるが、示唆に富んでいて学ぶべき点が多い。

会議の昼食時間に行なわれるお昼のイベントでも被害者支援についてのワークショップなどがさかんに行なわれていた。その中で再三指摘されていたのが権利ベースのアプローチ(Rights Based Approach)である。障害者の持つ権利は健常者の持つ権利と同じのはず。障害者の権利が守られ、満たされるような活動をすべきである。そのためには障害者のエンパワメントや社会条件の整備(例えばバリアフリー化)の視点が不可欠になってくる。

クロアチアの地雷回避教育
クロアチアの地雷回避教育

最初は緊張気味の子どもたちもワークショップにすっかり見入っていました

メキシコの代表が演説の中で「被害者支援は慈善として行われるものではなく、条約の第6条3項で規定されている通り、当然取り組むべきものである」と主張している。どうしても我々は地雷被害者を「かわいそう」という慈善(チャリティ)の観点で捉えてしまいそうになる。これでは被害者の問題を解決することにはつながらないと思う。自分が地雷被害に遭い障害を負い、「あわれみ」の目で見られたらつらいはず。このことを肝に銘じておきたい。

■対人地雷対策の今後

今回の会議に参加して強く感じたのは、対人地雷の問題の解決にはまだまだ果てしなく遠い道のりがあるということである。そのためにやらなければいけないことの多さを痛感した。

難民を助ける会が行っている、障害者のための職業訓練校の運営や、地雷の被害に遭わないための教育(地雷回避教育)を充実させ、より多くの地雷被害者の置かれている状況が少しでも改善するように活動すること。これは当然のことであるが、それ以上に重要なことは政府に対する政策提言(アドボカシー)であろう。
例えば地雷被害者への支援でも、政府が行うべきことは非常に多い。地雷被害者でも軍務についていた場合にはその政府から恩給なり手当がつく国が多い。しかし、民間人が地雷で負傷した場合には政府からなんら支援が受けられない国もある。また、障害者の権利について法整備がなされていない国もたくさんある。
国の制度全体としてのマクロな視点にたって、政府に対して指摘する活動も今後は不可欠になってくるだろう。日々の活動で触れる目の前の受益者を大切にしながら、マクロな視点も忘れず、より大きな問題にも取り組んでいきたい。

■ザグレブ空港にて

会合も終わり、日曜日。ここ数日毎日寒くて薄暗かったのだが、うって変わっての晴天。少しでも地雷被害が減ればいいなぁ、と思う。
空港でチェックインをすると各国の代表団、NGOらしき人々に出会う。彼らもそれぞれの国へ帰っていく。レバノンから来た地雷回避教育の専門家の女性とは同じ飛行機だ。彼女はベイルートへ戻るという。長いような短い一週間は終わった。次に世界各地からのキャンペイナーに会うのはおそらく来年の締約国会議。場所は軍縮会議の行なわれる町ジュネーブである。
 
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