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活動報告
タイトル
地雷回避教育は本当に役に立っているのか?
報告者
アンゴラ事務所駐在員 吉田 克弥
報告年月日
2006年6月
難民を助ける会は、アンゴラで活動する唯一の日本のNGOとして、2004年の8月からルンダスル州で地雷回避教育事業を行っています。アンゴラには、人口1360万を超える1500万個もの地雷が埋設されているとも言われ、多くの人々が地雷の被害に遭っています。難民を助ける会は地雷や不発弾から身を守るための教育(地雷回避教育)を地域住民に行っています。この報告では、専門的な用語も使いながら事業の成果について詳しく報告します。
■どれだけ住民の役に立っているのか?
わかりやすい絵のポスターやちらしなどは、地雷の危険や回避方法を住民たちに訴えるのに有効です
わかりやすい絵のポスターやちらしなどは、地雷の危険や回避方法を住民たちに訴えるのに有効です

難民を助ける会が、アンゴラで地雷回避教育を開始して間もなく2年になろうとしています。
2004年8月の事業開始から2006年5月31日現在までに、50以上の村々を訪れ、延べ人数にして20,745人の地域住民へ地雷回避教育を行ってきました。
わずか6人の教育員と2台の車でこれだけの数字を達成できたことは、事業の「効率」という観点から見ると、限られた人材と資材を最大限に活用できているといってもよいかと思います。

しかし、事業を実施していく上で、私たちの活動がどれだけ住民の役に立っているのか?
別の言葉で言えば、事業の「効果」も、私たちの活動を振り返る上で忘れてはならないポイントです。

ここで地雷回避教育の目的を、もう一度振り返ってみたいと思います。
私たちが助成金を受けるために外務省に対して申請を行なった際、申請書の目的欄にこう記入しています。
「今後地雷と不発弾による事故の増加が予想されるルンダスル州において、地雷回避教育を行い、事故の発生を防止する。」
地雷回避教育を受けることによって、地域の住民が地雷や不発弾の危険について認識し(認識の変化)、事故につながるような危険な行動を避けるようになる(行動の変化)ことが、私たちの目指す地雷回避教育の「効果」なわけです。
■地雷回避教育の流れ
住民1人ひとりに聞き取り調査を行います
住民1人ひとりに聞き取り調査を行う当会の現地スタッフ。地味ですが大切な仕事です

事業の効果について見てみる前に、地雷回避教育の一連の流れをここで一度おさらいしてみましょう。ある一つの村で地雷回避教育を実施する場合、教育員は以下のような手順でプログラムを進めていきます。

1. 村長とコンタクトをし、協力を約束してもらう
2. 村人口の約1割に当たる住民に対して事前調査を実施する
3. 調査の結果をもとに、どのような教材を使うか分析する
4. 村民全員を対象に第1回地雷回避教育を実施する(地雷回避教育員が、地雷や不発弾、危険な地域、安全な地域の書かれたバナーを使って、地雷とはどういうものか、どういう場所に足を踏み入れるのが危険かを説明する。その際、一方的に話をするのではなく、村人からのフィードバックを取り入れ、双方向的なコミュニケーションを図る。その後、地雷を見つけたときの対処法について実際のデモンストレーションや寸劇を用いて説明する)
5. 第2回地雷回避教育を実施する(2回目は人形劇や迷路などのゲームを用いて、前回の内容を再確認することが中心になる)
6. 男性・女性・除隊兵士・子どもなどグループの特性に配慮した地雷回避教育を実施する(男性や除隊兵士には自分たちで地雷や不発弾の処理をしない、女性に対しては水汲みや洗濯等で川に行く機会が多いため川岸での留意点を伝える、子どもにはおもちゃと地雷・不発弾の違いを説明する等)
7. 事後調査を行い、教育効果を分析する

事前・事後調査では、地雷や不発弾に対する住民の知識(Knowledge)・行動規範(Attitude)・行動(Practice)・意見(Belief)について、活動実施前と実施後でどの様に変化したかを聞き取り調査で調べます。この調査を、私たちは英語の頭文字を繋げてKAPB(カップベー)調査と読んでいます。KAPB調査はより良いプログラムを作っていくための地雷回避教育の一環で、統計学的な調査ではありませんが、事業の効果を見ていく上で大いに参考になります。

以下、注目すべき数字をいくつか見ていきましょう(すべての項目の結果についてはリンク先の「モニタリング報告」をご参照ください)。 

地雷回避教育の実施前と実施後では顕著な伸びが確認されています。多くの人が、危険な地域についての正しい認識を持つようになったと考えてもいいでしょう。「認識の変化」の一つの例ということもできるかと思います。

■認識の変化
問: 地雷や不発弾はどのような場所にありますか?
答: (正)ざんごう・基地・壊れた橋・川辺・水源・動物の死体の近く・壊れた車両・以前事故があった場所・棄てられた武器の近く・基地跡
(誤)分からない

地雷回避教育の実施前の人々の認識
地雷回避教育の実施後の人々の認識

問: 地雷や不発弾はどの様にしてマークがしてありますか?
答: (正)国際標識・有刺鉄線・色を塗った木・交差した骨の上に頭蓋骨の印・赤白のテープ・交差させた石・編んだ草・木に縛り付けられた布・棒の上に缶・石を積み上げたもの・交差させた枝
(誤)分からない

調査前は正しい認識を持つ人は60%でした
調査後は、81.87%にまで上がりました

この問に対する結果も、「認識の変化」が起こっていることを伝えています。
■行動の変化
しかしながら、実際に地雷の被害に遭わないための行動となると、大きく改善しているとは限りません。

問: どの様にすれば地雷や不発弾の事故を防げますか?
答: (正)自分の知っている道や既に使われている道を歩く・地元の人に危険な場所について聞く・危険と思われる場所には近づかない
(誤)分からない

調査前の人々の認識
調査後の人々の認識。未だ半数近くの人が謝った認識を持っていることがわかります

この問に関しては、顕著な伸びを示しているものの、未だ半数近くの人が「分からない」と答えています。

問: あなたの家族や友人が地雷原の中に入ってしまったら、あなたはどうすべきですか?
答: (正)専門家を呼ぶ / 探す・関連機関に知らせる・村に知らせに行く
(誤)助けに走る・逃げ出す・分からない

正しい行動に関する調査前の認識
正しい行動に関する調査後の認識

このように、10%近い伸びを示しているものの、未だ半数以上が正しい認識を持っていない問もあります。

■「役立つ地雷回避教育」に向けて
調査結果をもとに、さらにプログラムを充実させていきます
調査結果をもとに、さらにプログラムを充実させていきます(手前が吉田駐在員)

ほぼすべての設問で正しい認識が増えているということは、住民の地雷・不発弾に対する認識が底上げされていることを意味し、私達の行なってきた地雷回避教育の方針が間違っていないことを示すものだと考えられます。

 しかしながら、上記の結果を見ても分かるように、「認識の変化」が「行動の変化」に繋がっていくためには更なる努力が必要とされることも明らかになりました。

 その結果、私たちの地雷回避教育が住民にとって更に役立つものになるために、現在は地雷や不発弾の危険性そのものを伝えるメッセージよりも、危険な行動についてのメッセージを重点的に伝えるようにしています。

 また、男性や女性や子どもといった性別・年代別のプログラムを充実させるとともに、画一的ではない、村々の実情に応じたメッセージを伝えていくことも重要です。そのためには私たちが一方的に調査を行うだけではなく、住民を交えてともに考えていくことがさらに必要になってきています。

  このような住民参画を実現するための第一歩として、今年の3月に地雷・不発弾汚染のひどい27村の代表者を招いて「住民参画ワークショップ」を開催しました。
 これらの試みの成果は、今年8月の第2期事業終了後、完了報告で発表する予定です。
 
外務省に提出した報告書(モニタリング報告)はこちら
 
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