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活動報告
タイトル
地雷回避教育の教材製作−どれだけ人々に密着できるか
報告者
スーダン ハルツーム事務所駐在 山口 俊太
報告年月日
2006年9月
アフリカ東部の国スーダンでは、長い内戦であちこちに埋められた地雷や不発弾により、多くの帰還民や住民が被害にあっています。地雷の被害を少しでも減らすには、人々が地雷から身を守るための知識を学ぶことが必要ですが、現在はまだスーダンの文化や風習に合った教材が作られていません。
そこで難民を助ける会では、旧ユーゴスラビアやアフガニスタンでの経験を生かし、国連機関や現地で地雷回避教育活動を行うNGOと協力して、現地のニーズに即した、わかりやすく使いやすい地雷回避教育教材を作成します。
■雨季明けの前にパンフレットの完成を
道から外れないことが、安全な帰還の第一歩である
スーダンへの帰還民の様子(イメージ)
道から外れないことが、安全な帰還の第一歩である

難民を助ける会は、スーダンにて地雷回避教育に取り組んでおり、私は首都ハルツームで地雷回避教育の教材製作を担当している。南部スーダンでは地雷や不発弾の認識が驚くほど低く、金属回収のために地雷や不発弾を拾い事故にあう者や、遊び感覚で不発弾に触れ事故にあう子どものケースが報告されている。地雷や不発弾の危険認知を高める教育が急がれており、また教育に使うポスターやパンフレット類の整備も急がれている。10月末頃におとずれる雨季明けと同時に数多くの難民、国内避難民が南部スーダンへ帰還するため、現在帰還民用のパンフレットを急ピッチで製作している。先日、南部スーダンの中心都市であるジュバにて、パンフレット用の写真撮影をし、首都ハルツームの避難民キャンプにてパンフレットの実用性をテストした。
■写真が決めるパンフレットの質
地雷原を示すマーク(中央左の赤いドクロマーク)を見たら、マークの後ろへ侵入しないこと
地雷の危険をよりわかりやすく伝えるために
地雷原を示すマーク(中央左の赤いドクロマーク)を見たら、マークの後ろへ侵入しないこと
今回のパンフレットは、とあるスーダン人一家が故郷へ帰る途中であると想定し、地雷原の近くを通ったり、不発弾を見つけたり、水汲みや薪拾いをする場所を探したりする際に、安全な行動を促す内容を予定している。この「とあるスーダン人一家」にはジュバの国連現地職員チャールズ・オウォットさんとその一家・友人に協力していただいて、ジュバ周辺にロケ地を設定し、写真撮影をした。当日はあいにくの空模様であったが、チャールズさんが帰還民の衣装や道具(麻袋や布袋、ポリタンクなど)を用意し、前日に決めておいたロケ地に出発。国連職員でジュバの地雷回避教育担当者に主に写真撮影をしてもらい、私が演技指導をして、写真撮影を順調にこなしていった。

はじめチャールズさん一同は緊張していたが、撮影の飲み込みが早く、「もう少し体をこちらに向けて!」「表情はもっと険しく!」「指をもっと遠方に指して!」「子どもたちも注目するように!」「カメラ目線はやめてください !」など細かい演技指導
「もう少し体をこちらに向けて!」一つずつの撮影シーンに熱が入る
「もう少し体をこちらに向けて!」一つずつの撮影シーンに熱が入る
左端は演技指導中の山口俊太駐在員
にしたがってくれた。また子どもたちもそれぞれの道具を持ち、立派な子役としての役割を果たした。これらの写真は、文字なしで地雷や不発弾の危険性を語ることのできる重要な要素で、今回のパンフレットの鍵を握っているが、彼らの協力のおかげで充実したものとなった。後日、パンフレットを仮作成した。


村長たちの協力なくして支援活動は成り立たない
スーダン国内避難民のキャンプにて、村長たちと山口俊太駐在員
村長たちの協力なくして支援活動は成り立たない
■共通言語の壁
パンフレットには写真もあるが、正確なメッセージを伝えるために言葉も入れる。しかし多様な部族で構成されているスーダンでは共通言語と呼べるものがない。あえて言うならば、北部スーダンはアラビア語、南部スーダンは英語であるが、なかなか一筋縄にはいかない。アラビア語にも大きく別けて3種類ある。北部を中心に使用されるクラシック・アラビック、それを崩した北部と南部の間で使用されるシンプル・アラビック、そして南部スーダンの行政の拠点地であるジュバを中心に展開する地方言葉に近いジュバ・アラビックがある。さらに南部では、国外に逃れたスーダン人が英語圏で教育を受けた場合が多いので、話し言葉はアラビア語、ただし読み書きは英語のみと、複雑な現象が起きている。
 
■アラビア語が読めない人には・・・
パンフレットの出来について、細かい部分を何度も練り直す
パンフレットの出来について、細かい部分を何度も練り直す
村長たちは村人の安全を守るために非常に熱心である
パンフレットに使用する言語を見極めるために、ハルツーム近郊の避難民キャンプを訪れ、教材のテストをすることにした。避難民キャンプの内部は興味深いことに各地方の部族単位に別れており、サラティーンと呼ばれる村長を中心に構成されている。今回の訪問ではジュバの村長と同じく南部スーダンの都市ワオの村長に会うことができた。彼らはジュバ・アラビックを話す。しかしアラビア語がほとんど読めない。そのため、ジュバ・アラビックをローマ字でつづったものを併記したらどうかとの提案があった。パンフレット自体の印象は良く、こういうものが存在したらぜひ受け取りたいとの意見を頂いてひと安心した。

このようにパンフレット作成ひとつ取っても越えなければならない課題が数多くある。しかしパンフレットが完成したからといって、問題は解決できたわけではない。より危険な状況にさらされている帰還民が地雷や不発弾の事故にあわないように、認識を高めてもらうことが最も大事である。パンフレットが雨季明けの帰還民の手に届き、彼らが安全に故郷に帰られるように手助けできれば、と願うばかりである。
 
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