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活動報告
タイトル
アフガニスタン北部の障害者支援現場へ
報告者
東京事務局 紺野 誠二
報告年月日
2006年10月
難民を助ける会は、アフガニスタンの北部タカール州で、地雷被害者やポリオ(小児マヒ)後遺症などによる障害者を対象に理学療法クリニックを2ヵ所設立し、運営しています。理学療法を通して、障害者の四肢機能の向上と回復を図り、自立を支援しています。今回は、8月に東京より出張した紺野事務局員が現地の様子をお伝えします。
1年9ヵ月ぶりのアフガニスタン
アフガニスタンの地図
アフガニスタンの地図

アフガニスタンの首都カブールへ、1年と9ヵ月ぶりにやってきた。青い空と砂漠のような色をした山々。なんだか懐かしい。

カブールからアフガニスタン北東部にある町クンドゥズまで約1時間。PACTECというNGOの小型飛行機で移動する。パイロットを含めて定員12名。飛行機には操縦士、副操縦士、そして私の3名。つまり、私は唯一のお客さま。

飛行機の機体にもパイロットの制服にもECHO(エコー)のロゴがある。ECHOとは欧州委員会人道援助局(The European Commission Humanitarian Office)の略。

援助関係者に見せる「顔」も効果的
アフガニスタン国内を飛ぶ飛行機に見られるECHOのロゴマーク
ECHOがPACTECに補助金を出し、比較的安い値段で援助関係者が飛行機を利用できるようになっている。一般的に、顔の見える援助というと、援助国政府やその国の国民に見える顔を考えがちだが、こうした援助関係者へ見せる顔、というのもある。我々援助関係者にとっては、ありがたい側面支援だ。
クリニックに来訪する患者へインタビュー
理学療法のほか、必要な患者には義肢装具も支援しています
当会が運営する理学療法クリニックを訪れた女性患者
難民を助ける会の事務所があるタカール州の州都タロカンから、当会が運営する理学療法クリニックの一つがあるホジャガまでは車で片道2時間ちょっと。朝方は涼しいが、日中は40度を超える強烈な暑さ。

クリニックへ診察を受けに来ていた患者に話を聞く。男性の患者は私が、女性の患者は同行したタロカン事業担当の松本理恵事務局員がインタビューをした。
患者が治療に満足をしているか、理学療法を受けたことで生活の質(QOL:Quality of Lifeの略。リハビリテーションなどでよく使われる)がどう変わったかを知ることが目的だ。
クリニックに来る患者はさまざまな症状を抱えている。腰痛や足の痛みといった、障害とまでは言えないものの健康状態が優れない人や、杖を使ったり義肢装具を当会の照会で手に入れた障害者など、さまざまだ。

アンケートを通じ、以前より身体の調子がよくなりつつある人が増えていることがわかった。例えば、かつては約5分間歩くのがやっとだったのが、今は問題なく歩けるようになったという人がいた。
男性に話を聞くと、体調がよくなったことで、モスクや市場(バザール)に行けるようになったという。一方、女性からは、家事がこなせるようになった、親戚や隣人の家に行っておしゃべりできるようになって嬉しい、などという声が多く聞かれたと、松本事務局員からの報告。このあたりに男女の生活の違いを感じ取れる。
この国では、介護保険も支援費もありません
下半身マヒの障害者。家族に手押しの一輪車で押してもらい移動します
障害者とその家族の生活の大変さを垣間見ました
■様々な障害者たち
難民を助ける会が運営するもう一つのクリニックがあるカラフガンへ行く。2時間の山道。
クリニックには数名の患者がいた。非常に暑く、気温は40度くらい。一年のうちで最も暑いこの時期は、農作業とも重なり比較的患者の少ない月という。

中に小さな子どもがいた。ロバに顔を蹴られてしまい、何度も通院しているという。以前から何回もこの子に会っている松本事務局員は「顔の神経が戻り、ようやく笑顔が見られるようになってきた」と話す。

午後、カラフガン近くのハンダスマル村で当会が行っている訪問リハビリテーションの患者にインタビュー。アフガニスタンで訪問リハビリテーションを行っている団体は数えるほどしかない。もちろんこの国には介護保険も支援費制度もない。

この村で会った患者も子どもだった。内半足とのことで、石膏で足を固めている。家族は「どうしてよいのか分からなかった」と言っていた。ほかにも、下半身麻痺の患者が、手押しの一輪車でインタビューの場所まで運ばれてきた。患者の息子が着替えからトイレからすべて面倒を見ているという。
訪問リハビリテーションを行う村で
男はつらいよ…?!
女性患者へのインタビューは松本事務局員(左から2番目)の役目
男性の外国人は、アフガニスタンの女性に直接インタビューはできません

カラフガンクリニックから近いゼリシャー村を訪れる。この村でも難民を助ける会は訪問リハビリテーションを行っている。インタビューをする患者が女性なので、男性である私は立ち会えない。これがアフガニスタンでの活動の一番難しいところ。

自分は外国人で目立つため、すぐに人が寄ってくる。まるで上野動物園のパンダか旭山動物園のアザラシか。これ幸いと、村の人と一緒に簡単な地図を書き、どのくらい障害者がいるか聞いてみた。当会の理学療法助手も事前に調査しているので、補完の意味もある。

村に5つあるモスクを地図に加えながら聞いてみると、「ここにもいる」「あそこにもいる」「あそこの人は足を切断している」「足が麻痺している人はこのモスクの近く」と声があがってくる。すこし聞いただけでも14人の障害者がいることが分かった。

ただ難しいのは、障害がある人をすぐに支援できるとは限らないことだ。もちろん、村長や宗教上の指導者から許可は得ているが、リハビリテーションの意味を分かっていなかったり、男性の理学療法士助手に女性を治療してもらってはいけないとか、患者が初めから諦めてしまっているなど、いろいろな問題がある。地道に時間をかけて対応していくしかない。
実りの秋がやってきます
メロンの時期はもうすぐ終わり。やわらぐ暑さに感じる、秋の到来
様々な障害者が暮らすこの国で、支援を続けます
再びホジャガクリニックを訪ねる。今日でクリニック訪問も終わり。限られた時間で見えるものは限られるだろうが、それでも現場に来て初めて見えたことも多かったような気がする。
患者の多くは村落部に住んでいる。舗装道路がないし、上り下りも激しい。もちろん電車なんて走っていない。バスはたまに見る程度で、ほかには乗り合いタクシーか。「足」の問題が、実は深刻だ。日本の村落部が抱えている悩みと同じかもしれない。

村の人々は貧しい。例えば車なら20分のところでも、交通費を払うのは経済的に厳しいので、ロバや徒歩で通ってくる。片道2時間はかかるという患者はザラだ。当会のクリニックに来るまでは、自分で薬を買ったり、町医者に通ったけれど、よくならなかったという人も多い。もちろん自費で薬を買うわけで、経済的に大変だ。中には遠くカブールや隣国パキスタンまで出かけた人もいる。そのために借金を背負わざるを得なかった人もいた。

クリニックと村での聞き取りを終え、タロカンへ戻る。すさまじい暑さ。でも、以前より少し和らいだ気がする。体が気候に慣れたからだろうか?それとも、少しずつ秋が近づいているのか?当会の現地スタッフが言っていたことを思い出す。「メロンの時期はもう終わりだね」。もうすぐ実りの秋がタロカンにもやってくる。

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