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活動報告
タイトル
内戦終結から4年たっても…地雷の恐怖は続きます
報告者
アンゴラ事務所駐在 名取 郁子

アンゴラ事務所駐在 名取 郁子 滋賀県出身。2006年7月よりアンゴラ駐在。主に地雷対策事業を担当。英国の大学院で開発学を専攻。国連機関職員としてアンゴラで3年、NGOの一員として東ティモールで2年勤務後、当会へ。
報告年月日
2006年12月
難民を助ける会は、アンゴラで活動する唯一の日本のNGOとして、2004年の8月から北東部ルンダスル州で地雷回避教育事業を行っています。(アンゴラの活動についてはこちらをご覧ください アンゴラの地図
■地雷事故発生!そのときすべきことは…
迅速に報告書を作成してくれたスタッフのアルフレード
地雷事故が起きた場合、早急な報告書の提出が必要です
 10月6日午後5時、活動地ルンダスル州のサウリモ郡(州都サウリモの中心部から約1.5キロの地点)で、今年2つめの地雷事故が起こりました。
犠牲者は55歳の男性で、そこが地雷原であることを知りながらも用を足しに道路わきの空き地に入り、地雷を踏んでしまったといいます。この事故で、彼は右足をひざ下から失いました。

このように地雷事故が起こった場合、難民を助ける会では政府の要請に基づき、指定の用紙を用いて地雷事故報告書を作成し、提出します。
事故の続発を避けるため、この報告書の作成と提出は速やかに行わなければなりません。今回も、事故の報告を受けた後、会の担当スタッフがすぐに現場と犠牲者の運ばれた病院に走り、翌日7日には報告書を提出しました。

報告書では、事故の起こった場所と時間、犠牲者の氏名・年齢、収容された医療施設の場所、負傷した場所は体のどの部分であったか、地雷の種類(対人地雷・対戦車地雷・不発弾など)とその形について報告するとともに、事故がどのような状況で起こったかについても記入します。
■用を足そうとした草むらで…
地雷の被害にあった男性。右足を失ってしまいました
地雷の被害にあった男性。右足を失ってしまいました

今回は、次のような状況で事故が起こりました。

 犠牲者の男性は、体の調子が悪くなったので、アンゴラの地方にはまだ多く存在する伝統療法師のところに行き、何日間かそこに泊り込みで治療を受けていました。
 数日のち、体の調子も少し良くなったので、この男性は見舞いにきていた家族や親戚の叔母らと一緒に近くの青空市場へ食料を買いに出ました。道中お手洗いに行きたくなったのですが、叔母さんら女性と一緒だったので、隠れて用を足そうと道路わきに降りて行ったところ、地雷を踏んでしまったということです。

この付近には軍隊の駐屯地があるので、地域住民である犠牲者の男性も、その一帯が地雷危険地域だということは知っていました。また、家族からの情報によると、難民を助ける会ではないが、他の団体による地雷回避教育を受けたことがあるそうです。それにも関わらず、道路わきの草むらに踏み込んでしまったのです。
■一瞬の気のゆるみが命とりに
地雷現場の地図。詳細な場所の特定が続発を防ぎます
地雷現場の地図。詳細な場所の特定が続発を防ぎます
 それはなぜか?日本に住む私たちの一般的な感覚からするとちょっと理解し難いですね。

 地雷原も地雷原でない場所も、見た目は同じ野原や道ばたです。地雷原だけ真っ赤に塗られているわけではありません。ここに住む住民たちは、毎日そうした場所の近くを行き来して生活しているうちに、危機意識が徐々に薄れていくことが時にあるのではないか、と私は想像しています。

考えてみれば私たち自身も、例えば身近な人が交通事故に遭ったり、近くで火事や地震が起これば、その後しばらくは慎重に運転し、火の元に気をつけ、災害に備えて緊急持ち出しバッグなどを用意したりします。しかし、時間が経つにつれてだんだんとそのような危機意識は薄れて、「ついつい」運転前点検を怠ったり、タバコの吸殻を中途半端に放っておいたり、持ち出しバッグは押入れの奥に押し込んだまま…ということになってはいないでしょうか。

  そのように考えると、この犠牲者の男性も、病み上がりで久しぶりに家族や親戚と外を歩くという特別な状況下で、地雷の危険が「一瞬」、意識の外に置かれてしまったということは、十分起こり得ることと想像できます。
■地域開発の視点も必要
地雷事故のあった現場。地雷がどこに潜んでいるか、これでは見当がつきません
地雷事故のあった現場。地雷がどこに潜んでいるか、これでは見当がつきません
 おりしも、今はキノコの季節であるため、地雷原のすぐ近くまで踏み込んでキノコ狩りをする人が絶えません。

やっかいなことには、地雷というのは対戦相手を負傷・殺害することが目的です。それゆえ、民間人や子どもたちが、キノコを取っているうちに知らず知らず地雷原まで踏み込んでしまったということは十分起こり得ることです。

 難民を助ける会が行っているような定期的な地雷回避教育や、速やかな地雷・不発弾の除去とともに、住民自身が地雷を見つけた際に地雷があることを示す簡単なマーキングを行い、難民を助ける会などの関連団体に自主的に報告することが必要になってきます。

 また、より大きな枠組みで地雷問題を考えていくためには、とうもろこしやキャッサバなどの農作物と、うさぎなどの狩猟、キノコその他の採集に頼る村々の経済・生活のあり方そのものについても、他の選択肢がないのかどうか考えていく、地域開発の視点が必要になってくるでしょう。
ここが事故現場です(名取駐在員)
ここが事故現場です(名取駐在員)

■いまだに人々を脅かす、内戦の負の遺産
 アンゴラにおける地雷被害者は、政府発表では約8万人。彼らの多くは働き盛りの男性で、内戦中に田舎からほとんどさらわれるようにして兵隊に取られ、戦場で地雷を踏んでしまった元兵士も多いのですが、内戦の終わった今日も、上記のように民間人が被害にあう事故は続いています。

 今回の事故では犠牲者は1人でしたが、他州では、今年2月9日に、人を大勢乗せたトラックが対戦車地雷を踏み、2名が死亡、28名が負傷という事故も起きました。
2004年の報告された犠牲者数は191名、2005年は96名と徐々に事故は減ってきてはいるものの、統計の網から漏れている地雷事故も多いため、実際の犠牲者はこれらの数を上回ることは確実です。

米ソ冷戦の代理戦争といわれ、27年に及んだアンゴラ内戦の負の遺産は、内戦の意味もよく知らなかった地方の人々の生活を、未だに脅かしています。

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