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活動報告
タイトル
車イスに夢をのせて
自立のための大きな一歩へ
報告者
東京事務局広報担当 長井 美帆子
報告年月日
2007年11月
難民を助ける会では2000年よりラオスの首都ビエンチャンにある国立リハビリテーションセンター(NRC)で、JICA(国際協力機構)の開発パートナー事業(草の根パートナー型)として車イスの製造とその技術移転を開始。2004年11月からは、JICAの草の根技術協力事業として、車イスの普及支援を行いました。ラオスでただひとつの車イス工房。その様子を報告します。
ビエンチャン中心部の大通り。高層ビルは見当たりません
ビエンチャン中心部の大通り。高層ビルは見当たりません

■ゆったりと時間が流れるビエンチャン
ラオスは、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー(ビルマ)、中国に囲まれた内陸国。タイとの国境には雄大なメコン河が流れており、首都ビエンチャンは、そのメコン河沿いにある人口約70万の街。フランス領時代の洋館や仏教寺院が立ち並ぶ、のどかな街でした。

中心部から車で数分の場所にある国立リハビリテーションセンター(NRC)。その敷地内に、難民を助ける会ラオス事務所と車イス工房があり、日本人3人を含む6人の事務所スタッフと11人の工房スタッフが働いています。

メジャーを使って、利用者の身体の各部位を測るスタッフたち
メジャーを使って、利用者の身体の各部位を測るスタッフたち

■苦節7年。生産台数は約50倍に!
総人口の8パーセントが障害を持っていると言われるラオス。非常に高い車イスの需要がありますが、事業が始まった2000年には、技術や人材不足のため、木製の車イスを年に数台、NRCで製造しているだけでした。海外からの寄贈車イスは、必ずしもそれぞれの身体に合ったものではありません。

難民を助ける会は、症状や身体に合った車イスを安定的に供給するための事業を開始。現在では月平均30台の車イス・三輪車を製造・配布しています。

■一人ひとりのカルテ作りから始めます
作業はまず、査定から始まります。口コミや紹介で車イスの存在を知った人や、地方の病院や他の援助団体を通して注文が入ります。自宅を訪問し、身体の大きさを測り、障害の症状や生活スタイルなどをインタビュー。それを元に車イスをデザイン。サイズ、形、背もたれや肘掛の高さ、クッションの厚みなど、種類は様ざまです。一人ひとりの情報はカルテとして大切に保管されています。

自らも車イスに座って作業をするスタッフ。自信に満ちた表情が印象的でした
自らも車イスに座って作業をするスタッフ。自信に満ちた表情が印象的でした
■こうやって作られる…工程を密着取材
その月に生産する全てのデザインが決まった後は、材料の買い付け。布や鉄パイプ、タイヤなどの材料は全て市内の市場で入手可能なものを使っています。

スチールを曲げて部品を作ったり、布にミシンをかけて背もたれにしたりと、材料から車イスを作る全てを工房内で行っています。次々と作られていく部品が車イスのどの部分になるのか? 分かったときには思わず「なるほどっ!」と唸ってしまいました。

工房スタッフ11名のうち5名は障害を持っています。障害者の自立を促進するため、積極的に障害者を雇用しています。自ら車イスに乗って、車イスを作るスタッフたちの顔は自信に満ち溢れていました。

完成後、スタッフが一人ひとりの車イス利用者の家を訪れ、身体に合っているかを確かめます。6歳のポッピー君は、脳性マヒによる障害があります。両親とも仕事をしているため、毎日祖母と家の中でばかり過ごしていたそうです。車イスが来たことで、友だちと外出したり、学校に通うことが出来るかもしれない、と本人だけでなく周りの人々も目を輝かせて喜ぶ姿が印象的でした。1台の車イスは、利用者だけでなく、周りの人々にも幸せをもたらしているのです。
車イスを受け取り、喜ぶポッピー君と家族、友人たち
車イスを受け取り、喜ぶポッピー君と家族、友人たち


続いて、パイハンさん(22歳)の家を訪れました。彼女は幼い頃にポリオを患い、身体が麻痺してしまったため、自分の足で歩くことはできません。不自由な身体を床に横たえる姿が、とても痛々しく見えました。それでも車イスに座ると、威厳に満ちて見えるのが不思議です。彼女の家の周囲は未舗装の路ばかり。雨上がりのため歩くのでさえ一苦労の道を、一体どうやって車イスで進むのでしょうか。板橋駐在員は「こんな道では、車イスは使えない」と悔しそうに答えました。彼女は、家の中でしか車イスを使うことができないかもしれません。
■見えてきた新たな課題
事業が始まり7年。様々な試行錯誤を経て、2,000台を超える車イスと三輪車を製造し、首都と地方10県の障害者へ届けることができました。地方へ送り届けるには製造費も含めて1台あたり1万円以上の費用がかかりますが、最近ではラオスの地元企業や団体等から製造費の6〜7割を支援してもらえるようにもなりました。
 
今後の課題は、それぞれの障害や生活様式に、より合った車イスを製造することです。「悪路に対応できる車イス」と「重度の脳性マヒ対応型車イス」の開発、そして「修理体制を確立すること」が、今後のラオス事業の目標です。
雨上がりはこんな悪路に。こうした道にも対応できる車イスの開発が今後の課題です
雨上がりはこんな悪路に。こうした道にも対応できる車イスの開発が今後の課題です
■自立のための第一歩に
ラオスのように障害者への社会保障制度が整っていない国では、障害者が能力を発揮できる機会は限られます。就学の機会どころか、家の外に出ることすら難しい人々が大勢います。家族が忙しいため、トイレの世話もされぬまま放置されている子どもにも会いました。教育や医療もまだまだ不十分です。数万と言われるラオスの車イスの需要に、難民を助ける会の生産が追いつくことは、そう簡単ではありません。

それでも、車イスに乗って学校に通う子どもがいる。車イスに乗って仕事をする人がいる。そうした事実は多くの障害を持つ人々を勇気づけ、夢を与えています。全ての人が人間らしい暮らしを送るためには、ラオスの人々の間に障害者への理解が広まらなくてはなりません。車イスの普及は、その第一歩ではないでしょうか。一台一台の車イスが、多くの障害を持つ人々に、大きな夢を運んでいきますように。

これからも、ラオス事業を応援してください。
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