駐在員・事務局員日記

万能薬の化粧品「タナカ」

2009年11月06日  ミャンマー
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執筆者

ミャンマー事務所
久保田 和美

2009年8月よりミャンマー駐在。イギリスの大学院で開発学と教育学を学んだ後、在外公館にて勤務。国際協力事業の運営に直接関わりたいと、難民を助ける会へ。(東京都出身)

記事掲載時のプロフィールです

難民を助ける会では、2008年5月2日にミャンマー(ビルマ)を襲った大型サイクロンによる被災者12万人への緊急支援を行ってきました。サイクロン発生から1年が経過した2009年5月から、復興支援の一環として、生計支援の活動を行っています。

日本とは違う美意識

子どもたちも「タナカ」

タナカを頬に塗った、事業地の子どもたち

美的感覚は生まれ育った国や文化、慣習によって形成されるものだと思いますが、私がミャンマーへ来て最初に驚いたのが、「タナカ」という化粧品でした。

日本の女性はより自然な色に見えるファンデーションを好みますが、この「タナカ」は違います。白や薄黄色の「タナカ」を顔中に塗り、さらにその上から頬に厚く塗って、マークをつけたりするのです。

タナカの多様な機能にびっくり

「タナカ」の元は木の幹です

女性スタッフから頂いたタナカセット

「タナカ」は、短く切った柑橘系の木の幹を、水で濡らしながら石の板で磨り、出てきた肌色~黄色のリキッドファンデーションのようなものです。それを顔や首、腕に塗ります。木の質によって色も異なり、黄色のものがより「良質」なのだそうです。

顔に塗ってしばらくするとパリパリに乾き顔が引きつってきます。けれども触るとさらさらとしていて、日本のベビーパウダーのような触り心地。思い切って塗ってみるとヒヤッとして、シャワーを浴びた後などに塗ると汗を抑え、清涼感が保たれるような気がします。

このタナカ、常夏で一年の半分はじとーっとした雨季に覆われるミャンマーでは、暑さをしのぐだけではなく、汗を吸い取り、さらには日焼け止めにもなるとか。また、油分の多いミャンマーの食事を取って油の分泌が多くなると、なんとこのタナカが油取りの役割も果たしてくれるのです。

事業実施の「潤滑油」にも

「タナカ」を塗ったスタッフ

タナカを塗った、難民を助ける会ミャンマー事務所のスタッフとともに (左が久保田和美駐在員)

女性だけでなく子どもや、事業地の村では男性にも大人気のこの万能薬。最初は目立つように顔に塗って外に出ることに戸惑いを感じていましたが、強い日差しの中、一日中外でボートに乗って移動したりする被災地での活動には欠かすことの出来ないものとなりました。おまけに、自分で塗る難しさを知ると、きれいに塗っているミャンマー人女性のお化粧が、美しく見えるようになりました。また、ミャンマー式のお化粧をすることで、事業地で外国人である私が、少しでも地域にとけ込めるような気がします。

サイクロン被災地での生計支援事業では、各村に村落開発委員会が設置され、そのメンバーに農業や漁業、家畜の飼育の知識を伝える研修が終了。いよいよ生計を立てるための魚網や家畜などの引渡しが始まりました。被災からの生活復興の主役は、この委員会をはじめとした村の住民たちです。

そんな彼らの活動を、今日もタナカという「潤滑油」を顔に塗りつけ、ミャンマーの暑い気候と強い太陽のもとで見守っています。

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