駐在員・事務局員日記

行ってきました!スーダンの結婚式

2013年04月23日  スーダン
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執筆者

スーダン事務所駐在
川越 東弥(はるみ)

2012年6月より東京事務局勤務。2013年1月よりスーダン事務所駐在。大学卒業後、英国の大学院で障害学を学び、高齢者福祉施設などの勤務を経て、パレスチナで児童支援に約4年携わった後AARへ。趣味はサッカー観戦と合気道。北海道出身

記事掲載時のプロフィールです

ところ変われば結婚式も変わります。スーダン事務所スタッフの親戚の結婚式に出席した駐在員の川越東弥(はるみ)が、日本とは大きく異なる現地の結婚式事情をお伝えします。

結婚披露宴は午後9時から?!

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みんなの待つ結婚披露パーティの会場に、新郎新婦がやっと登場

AARスーダン事務所の女性スタッフ、ハナーンの親戚の結婚式に呼ばれ、2月23日(土)の夜に出かけました。かつては親が決めた相手と結婚するカップルが多かったスーダンですが、最近は当人同士が結婚の意志を家族に伝え、その後家族間での交渉に変わってきたようです。当人抜きに結婚を決めるのはもはや昔の話とか。この日結婚したカップルも恋愛結婚だそうです。

さて結婚披露宴の案内には、夜の9時に来てとありました。ずいぶん遅いなと思いましたが、首都ハルツームは乾燥していて気温が高く、暑い時期は日中40度ぐらいにまでなるため、涼しくなる(といっても30度ぐらいですが)夕方以降に行事やイベントを行います。花嫁は結婚式当日は1日かけてビューティサロンで最高に美しくなるための準備を整えます。一方で男性陣はモスク(イスラム教の寺院)に集まり、婚姻契約を執り行います。花嫁側からは父親とその兄弟が参加。証人としてそれ以外の両家の親族の男性陣も集います。その後、花嫁の準備ができたら花婿と2人で会場に移動し、披露宴が始まります。

美しく着飾る女性たち

私が午後8時過ぎに会場に着くと、色鮮やかな衣装を身にまとった女性たちが続々と現れ、一気に会場が華やかになっていきました。皆さんが着ているのはスーダンの伝統衣装「トーブ」で、晴れ舞台であるこの日はどの女性もまさに勝負服を着ているようでした。ちなみに男性は「ジャラビア」と呼ばれる真っ白でストンとした服が伝統で、年配の方は特に好んで着用しており、女性の衣装をいっそう引き立てています。

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色とりどりのトーブを身にまとう女性たちが続々と現れ、会場は一気に華やぎます

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アラベスクのような模様が美しいヘンナ。手や爪だけでなく足にも描いてお洒落をします

素敵な勝負服に加えて、女性陣はヘンナ(ヘナ)という植物による染め模様を手足に施しています。日本では髪の染料として認知されるようになったヘンナですが、アラブの女性たちは花やアラベスクのような図柄を手足に描いてお洒落をします。

スーダンでは結婚式の前夜に、花嫁と女性陣だけでヘンナ・パーティを開催します。夕食を用意して歌手を呼んだりして、数日間行われることもあります。そこでさまざまなモチーフのヘンナを描き、お祝いに備えるのです。一方、花婿の家では式の前日にだけ、男性陣が集まります。スーダンでは花婿にもヘンナを施す風習があり、両手の掌と爪がヘンナで塗りつぶされます。

生演奏とミラーボールの光に包まれて

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ロマンチックな音楽に乗って踊り続ける新郎新婦

私が会場入りしてから2時間近くたった午後10時ごろ、歌手が登場しバンドの生演奏に合わせて歌い始めると、ようやく新郎新婦が会場に到着しました。現れた二人は会場中央に進み、そこでミラーボールのような無数の光線を浴びながらディスコミュージックに合わせて踊り始めました。その後ロマンチックな音楽に変わり、カメラのフラッシュを浴びながら踊り続けます。この間、新郎新婦からのスピーチや家族の挨拶はありません。そして新郎新婦が家族と抱き合った後、食事が一斉に用意されました。一人前ずつ用意された食事のプレートとジュースが配られました。スーダンはイスラム教の国なのでアルコール類は一切ありません。そしてあとはひたすら踊ります!新郎新婦を囲みながら、歌手が歌うアラブの曲に合わせて、手をあげて指を鳴らしながら(お祝いを意味します)踊り続けます。若い男性たちは新郎を肩車して盛り上がります。

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友人に肩車をされる新郎。人々は指を鳴らして結婚を祝います

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生バンドの演奏に合わせてみんな踊っておおいに盛り上がります

ラマダン前に結婚ラッシュ

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「楽しかった!」スーダン事務所スタッフのハナーン(右端)やその友人たちと川越(左から2人目)

このまま一晩踊り明かすかと思いきや、23時になるとぱたりと終わり、みんな帰宅し始めました。もう終わってしまうの!?と思ったのですが、結婚式は23時には終わらなければいけないという決まりがあり、その時間を超えると警察が来て新郎新婦が一晩拘置所で過ごさなければいけなくなるそうです。安全上の理由からそのような決まりになったとのこと。会場ではなく、自宅の屋内であれば時間制限はないそうですが、広さや準備を考えると、自宅でのパーティはあまりないようです。「昔は次の日の8時まで踊り明かして楽しかったわ」と女性たちが話していました。新郎新婦の家族はこの日を迎え、そして無事に終えることができほっと一安心していました。

ただし、式が終わった夜、サブヒーヤと呼ばれる女性だけのダンスパーティに参加する人だけは別です。このパーティには花嫁と女性の友人たち、そして男性は花婿だけが参加できます。花婿は花嫁の隣に座り、花嫁の家族が周りを囲みます。参加者は伝統衣装を身につけ、花嫁と花婿が牛乳の杯を交わし、香水を頭につけ、花婿がナツメヤシを配り香水を周りにふりかけます。また皮のようなものを引きちぎって投げます(花婿の力が強いことを示すため)。そして踊り明かします。

サブヒーヤが終わると、花嫁・花婿は家や新居ではなくホテルに宿泊し、結婚式の夜だけでなく2週間くらい滞在します。そしてそのままハネムーンに行く場合もあります。ハネムーンの定番地は、スーダン国内ならAARが現在地雷回避教育活動をしているカッサラ州が人気のスポットです。二人がホテルやハネムーンから戻ってきたら、花嫁の家が羊の料理を用意しみんなで食べ、やっと結婚式のすべての儀式が終了します。とはいえ、スーダン人すべてがこの手順を踏むのではなく、部族や家柄によっても異なります。

イスラム教徒が断食を始めるラマダンの時期にはイベントを一切できないため、それより前に結婚するカップルも多いようで、「来月は私の結婚式に来て!」という女性もいました。すでに35度を超える気温が続くハルツームですが、さらに45度ぐらいまで気温が上がる本格的な夏の前に結婚式ラッシュがありそうです。

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