駐在員・事務局員日記

震災から4度目の夏 相馬野馬追の今

2014年08月29日  日本
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執筆者

相馬事務所
佐々木 拓磨

2014年4年よりAAR相馬事務所に勤務。東日本大震災当時、福島県立新地高校に在学。多くの方々に支援をいただき、そのお返しが少しでもできればとAARへ。

記事掲載時のプロフィールです

武者の乗った騎馬が疾駆する、「相馬野馬追い」。日本を代表する伝統行事です。旧相馬中村藩領(福島県浜通り北部)で毎年開催されており、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。震災から4年目の夏、人々の心の支えでもある伝統行事が、ようやく元の形に戻りつつありました。相馬事務所の佐々木拓磨が、当日の様子と野馬追の歴史をお伝えします。

甲冑に身を包んだ騎馬武者が勢ぞろい

相馬中村神社

出陣式が行われる妙見神社の一つ、相馬中村神社。厳かな雰囲気です

今年の野馬追は、7月26日、27日、28日の3日間開催されました。7月26日の出陣式では、総勢750の甲冑騎馬武者が相馬の中村神社、太田神社、小高神社の各妙見神社に集いました。各大将の出陣の合図で、総大将、執行委員長、軍師、郷大将、侍大将、軍者、組頭などの役付武者や、螺役(かいやく、法螺貝を吹く役のこと)などが整列し、一同本陣を目指し進軍していきます。3日間、すべての進行や合図は、昔ながらの螺と太鼓で行われます。先祖伝来の甲冑に身を固めた「お行列」は「動く文化財展」とも言われ、毎年多くの観光客が、このお行列を見るために相馬を訪れます。

「お行列」のあとも、甲冑競馬、神旗争奪戦と見せ場が続きます。太陽が高く上がり、気温35度を超える猛暑の中、暑さを思わせぬ勇壮な騎馬武者たち。天中高く打ち上げられた二本の御神旗がゆっくり舞い降りてくると、人馬一体となった騎馬達はこの旗目指してどっと駆け出し、鞭を振りかざして奪い合います。

気になる野馬追の由来は?

野馬追は、相馬家の祖といわれている平将門が今から約1000年前に始めたものと言われています。将門は合戦での馬の活用を考え、野に野生の馬を放し、敵兵に見立てて捕える軍事訓練を行っていました。この訓練で捕えた馬を神前に奉じたのが、相馬野馬追いの始まりだそうです。相馬藩は鎌倉時代より幕末まで、一つの家(相馬家)が代々藩主をつとめあげた全国で数少ない藩でもあり、その相馬藩主が明治維新までこの行事を連綿と続けてきました。相馬藩・相馬家は、当会の創設者である故・相馬雪香の嫁ぎ先でもあります。 野馬追には、旧相馬中村藩を構成する5つの郷(宇多郷、北郷、中の郷、小高郷、標葉郷)でそれぞれ編成された騎馬隊(騎馬会)が参加します。先祖代々受け継がれてきた5つの騎馬会は平成になっても続けられ、先祖がずっと供奉してきた神社とともに、昔と変わりない神事を守ってきました。

震災で崩壊寸前に追い込まれ...

しかし2011年3月、東日本大震災により、多くの騎馬会が先祖伝来の鎧や馬を津波で失いました。小高郷など放射線量が高い地域では、会員が別々の土地に逃れ、騎馬会自体が崩壊寸前に追い込まれました。その年の開催は難しいものと思われましたが、各神社と騎馬会は検討を重ね、集まれる騎馬のみが集まり、震災で亡くなられた方々の鎮魂と、地域の復興を願って、例年通り7月に野馬追が開催されました。震災後、野馬追という祭事は、伝統の継承、復興のシンボルとしてのみならず、騎馬会全員が集まる良い機会にもなっています。

震災から4回目の夏を迎えて

小川恵明さん

先祖伝来の甲冑に身を包む小川恵明さん。相馬事務所の横山恵久子の知人で、今回特別に出陣の準備の様子を見せていただきました(2014年7月26日)

私は2日目の本祭り、朝4時から出陣の仕度をするところを拝見しました。出陣の支度には、馬の準備や、30kg以上もある甲冑の着付けなど、あわせて2時間以上かかります。将来騎馬武者になれるのは、決まった家系の血縁関係のあるご子息のみ。先祖代々守ってきた鎧を前に、皆さん真剣な面持ちで支度をされていました。

騎馬武者のお宅には、一軒におよそ50名ほどの見物客が朝早くから集まります。ご家族の女性達は全国からこの日のために集まった見物客の方々にお神酒や食事をふるまっていました。騎馬武者の周りには親類や近所の子どもたちが集まり、「武者のように強く逞しく育つように」と抱きかかえてもらっていました。

野馬追の朝、武者の方々が玄関先で親族との別れの盃を交わし、進軍する様など、今の世まで伝えられた家族や近所の縁を大切にする伝統文化の大切さに気づかされました。東日本大震災から3年経った今、野馬追は元の姿に戻りつつあります。これからも古き良きこの伝統行事が、千年、二千年と続くことを願っています。

騎馬隊

出陣式に向かう騎馬武者の方々。指旗(さしはた)は家のしるしとして用いるもので、色や模様などに同じものはありません(2014年7月26日)

出陣する子どもたち

子どもたちも鎧に身を包み、出陣!(2014年7月26日)

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