駐在員・事務局員日記

理事長ブログ第12回「続・新しい安全保障法制について」

2015年05月18日  理事長ブログ
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執筆者

AAR理事長
長 有紀枝(おさ ゆきえ)

2008年7月よりAAR理事長。2009年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授。2010年4月より立教大学社会学部教授。

記事掲載時のプロフィールです

AAR理事長、長有紀枝のブログです。

前回の新しい安保法制に関するブログに関して、「リアリストの視点を欠いた議論ではないか」というご意見をいただきました。近隣諸国の脅威を考えれば当然の法整備である、というご趣旨でした。

今回の法整備によって近隣諸国との関係においては、圧倒的に安全性が高まるかもしれません。しかし他方で、そのことにより世界的にみた危険性が高まるリスクも同時にあると考えます。そのことが私たち国際協力NGOにとっては、大きな問題であるがゆえに、前回のブログでこの問題を記しました。

 

新しい安全保障法制の閣議決定を伝える深夜のニュース番組で、視聴者からのツイッター投稿「いいことなのか、悪いことなのかわからない」が紹介されていました。実は、一連の報道の中で、私自身、もっとも共感したものの一つです。

日本を取り巻く国際環境に緊張が高まっている現在、安全保障について問題提起されるのは極めてまっとうなことだと思います。その結果私たち日本人の、経験・体験と知恵、中庸の精神やバランス感覚が試されているように思います。さまざまな立場からものが語られ、それゆえに、良識ある、しかし特定の政治的立場をもたない、多くの方々にとって、「正直、わからない」というある意味まっとうな感想が語られるのだと思います。

私はこのブログで、私個人の、あるいは難民を助ける会の考え方を、つたない形で記してはいますが、私たちはこう考えるという一つの意見を表明しているにすぎません。考える主体は、皆さま、お一人おひとりです。

 

安倍政権の数々の施策によって日本全国に、日本の安全保障について、そして、自衛隊とは何か、私たちにとって憲法とは何かを考える貴重なチャンスが与えられています。私自身、ここ数日の様々なことがらに戸惑いを感じますが、そんな時、思い起こすのがAARの創設者である相馬雪香先生(第2回ブログをご参照ください)の言葉です。

相馬先生は、先入観にとらわれず、客観的・多角的に物事を捉えようとする「批判的精神」をもって、「誰が正しいか」ではなく、「何が正しいか」を考え抜くプロセスこそが重要だといいます。「思い込む」よりも試行錯誤しながら考え抜くこと。民主主義について相馬先生が語った言葉が、石田尊昭・尾崎行雄記念財団事務局長のご著書『心の力』に残されています。

「民主主義って何? 民主主義ってのは、私たち一人一人が大切ってことでしょ? 一人一人が尊重されると同時に、その一人一人がこの社会に当事者として責任を持つ。そして自ら政治や社会に参加していくこと。他人任せ、お上任せにしちゃいけない。それが民主主義でしょ?」
(石田尊昭『心の力』世論時報社 2011年)

「いいのか悪いのかわからない」難しい、しかし重要な問題であるからこそ、思考を放棄せずに考えていくプロセスを大事にしたいと思います。(2015年5月18日)

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