駐在員・事務局員日記

ウガンダ:静かに大盛り上がり!パラスポーツ大会

2020年04月16日

2月下旬、東アフリカに位置するウガンダへ出張に行きました。AARはウガンダ北部のユンベ県で隣国南スーダンから逃れてきた難民支援を行っており、活動の一つに教育支援があります。前編では、障がい児への理解を深めようと開催したパラスポーツ(障がい者スポーツ)大会を、後編ではウガンダの食事についてお届けします。(執筆者:西山秀平)

みなさんは、ゴールボールというスポーツを知っていますか?ゴールボールとは、パラスポーツの1つで、視覚障がいのある方々のために考案された球技です。プレーする人は目隠しをし、鈴が入ったボールを使用します。バレーボールと同じ大きさのコートと、サッカーゴールのようなゴールを使い、1チーム3人で得点を競い合います。

大会前の、熱の入った練習風景をぜひご覧ください!ゴールネットがないため、外側の白線をボールが越えたらゴールとしました。

障がいへの障壁をなくす みんなで楽しめるスポーツに初挑戦

AARは障がい児への理解を深めることを目的に、障がいのある生徒たちとない生徒たちが混合で楽しむパラスポーツ大会を開催しました。
南スーダン難民が暮らすパロリーニャ難民居住区。AARが活動するこの地域では、障がい児に対し「呪われた子」「魔女が触ったから」など、偏見を持っている方が少なくありません。また、疎外感を感じながら暮らしている障がい児も多くいます。

実は先生も子どもたちも、今回初めてゴールボールを知ったといいます。職員室の壁にはルールが書かれた紙が貼られ、子どもたちは本番を目指して頑張って覚え、練習を重ねてきました。

ジョエル先生の背後の壁に貼られた模造紙には、ゴールボールの説明が黒いマジックで書かれている。

トゥラ中等校ポーツ担当教諭兼コーチのジョエル先生。壁には手書きでゴールボールの説明や、ディフェンス・オフェンスの位置などが図解されていました。(2020年2月18日)

息をひそめて応援!

チームごとにユニフォームを着て並んでいる

中等教育2校、初等教育校9校、合計11校が集まりました。(2020年2月)

そして迎えた大会当日、コートのまわりには、難民居住地に暮らす難民、地域住民、生徒の親や教員の家族など、たくさんの観客が詰めかけました。ボールの中に入った鈴の音を頼りにプレーするため、試合中は静寂に包まれ、ゴールした瞬間も静かに喜びます。

審判が選手の顔に黒い布の目隠しをつけている

審判が一人ひとりに目隠しをして、試合開始(2020年2月)

3人の選手が地面の上で間隔をあけながら、ボールを横になって持っていたりかまえている。背後には観客が立って応援している

迫ってくるボールの距離感をつかむことが難しいそうです。(2020年2月)

大会は2月22日、23日と2日間にわたり開催されました。男女2つずつのグループリーグ(4チームと5チーム)での総当たり戦の後、2位以上のチーム勝ち抜けで、決勝トーナメントを行いました。両日とも、2校の中等校によるエキシビションマッチの後、本試合を開始。全てを合わせると42試合に上りました。

また、昼休みには、目が見えない状態を体験するセッションを設けました。目隠しを着けて杖を使い歩いてみます。そろりそろりと一歩ずつ足を踏み出しながら、視覚障がいがあったらどのようなことに困るかなど、想像を膨らませます。

目隠しをして杖をつきながら歩いている

視覚障がいを体験するセッションにも、たくさんの生徒が参加しました(2020年2月)

ゴールが決まるたびに一喜一憂し、大いに盛り上がったパラスポーツ大会。表彰式が開かれ、優勝したチームには、AARから優勝カップとメダルを贈呈しました。

AAR宮崎より優勝チームに優勝カップを授与している。チームメンバーはカップを空に向けて掲げている

優勝チームには歓声が送られました。右はAARウガンダ駐在員の宮崎充正(2020年2月)

ここで、大会の練習に参加したジャクソン君、また運営や指導に携わったジョエル先生の感想をご紹介します。

「自分が変われました」オロマ・ジャクソン君(12歳) チーニー初等教育校

車いすにのったジャクソン君の横には、友達や先生、AAR藤田が並んでいる

南スーダン難民のジャクソン君(中央)は足に障がいがあります。コーチとチームメートと撮影。左はAARウガンダ駐在員の藤田綾(2020年2月23日)

「ゴールボールの練習を通して、自分が変われたと思います。チームに加われて友だちが増えました。最初は上手くプレーできなかったけど、コーチや先生、チームメートがコツを教えてくれて、今は思った通りにボールを投げられます。練習すれば新しいことができようになると学びました」。

ジャクソン君がゴールの前で地面に膝をついて座っている

練習中、ゴールを守るオロマ・ジャクソン君(中央)(2020年2月23日)

「スポーツを通じて、人生において大切なことを伝えたい」ジョエル先生 イトゥラ中等校スポーツ担当教諭兼コーチ

スポーツに親しんで育ち、短距離走の選手として奨学金を得て、スポーツの教員資格を取ったジョエル先生。「教師になって、選手時代のコーチやスポーツそのものがどれだけ大きな影響を私に与えてくれていたのかを、改めて感じました。生徒もスポーツを通して、さまざまなことを学んでほしいです。」

AARスタッフや生徒10人ほどと一緒にカメラに向かい微笑むジョエル先生

大会後、コーチを務めたチームの生徒とともに。全力でプレーし、充実した表情を見せてくれました(2020年2月)

ジョエル先生は続けます。
「難民の生徒は環境に恵まれているとは言えませんが、スポーツに励む過程で、あきらめないこと、団結することなど、人生において大切なものを学んでいます。パラスポーツ大会のおかげで"自分にも何かできるんだ"という成功体験を生徒たちは得たと思います。また、普段関わりのないほかの学校の生徒との交流した経験は、難民の生徒たちが国に帰った後にも活かされるのではないでしょうか。」

大会を終えて

パラスポーツ大会を通して子どもたちは目が見えない状態を体験し、自分とは違う個性のある人の気持ちを想像することができたと思います。また、娯楽が少ない難民キャンプ内で、チームで一つの目的を持ち一緒に頑張れた経験は、自己肯定感を高めたり新たな仲間を作る機会になりました。
後編では、出張中に食べたウガンダならではのご飯をご紹介します。

※出張時の2月下旬、ウガンダでは新型コロナウイルスの感染者は確認されていませんでした

執筆者

東京事務局
西山 秀平(にしやま しゅうへい)

広島県で育ち、幼少期より平和教育を学ぶ。大学や大学院で国際刑事法を専攻し、紛争被害者の救済について学ぶ。米国の人道支援団体や、オランダの国際刑事裁判所にてインターンを経験。帰国後、2018年11月よりAARへ。ウガンダ事業などを担当。

記事掲載時のプロフィールです

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