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私たちはここにいる!―難民が迎える「世界難民の日」


6月20日の「世界難民の日」、AARが南スーダン難民支援を行っているウガンダでも、各地で様々な催しが行われました。難民自身にとって、この日はどんな意味があるのでしょうか。駐在員の藤田綾からの報告です。

「難民とともに歩む―環境を守ろう」をスローガンに

ウガンダには今、南スーダン難民82万人を含む、127万人もの難民が身を寄せています。国連の最新の発表によると、難民受け入れ国として世界で3番目に多い人数です。AARは2016年から南スーダン難民支援を開始し、現在はウガンダ内にある3つの難民居住地(ビディビディ、インヴェピ、パロリーニャ)で活動しています。6月20日には、それぞれの居住地で「世界難民の日」を祝う催しがあり、AARスタッフも参加しました。

ウガンダでの、今年の「難民の日」のスローガンは、「Take a Step with Refugees - protect the environment"(難民とともに歩む―環境を守ろう)」。120万もの難民が暮らすには、森林など環境への影響は避けられません。人間と環境をどちらも守るという決意が込められています。

行進、スピーチ、歌、ダンス!

ユンベ県にあるビディビディ難民居住地は、22万人が暮らす国内最大規模の居住地です。サッカー場に匹敵する広さの会場に、ここに住む難民や近隣のウガンダ人住民、そして活動する約50ものNGO団体のスタッフが集いました。来賓には、ウガンダの第一副首相やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のウガンダ事務所長なども列席。スピーチでは、受入国であるウガンダ、国連、NGOのたゆまぬ支援への感謝が述べられたり、居住地内での環境配慮への呼びかけ、AARも実施している中等教育への支援強化の訴えなどが聞かれました。

公式なセレモニーの後には、南スーダンから招待された有名なアーティストやミス・エクアトリア州(南スーダンの州)などがパフォーマンスを行い、詰めかけた大人から子どもまで、大盛り上がりでした。

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22万人が暮らすビディビディ難民居住地で開かれた催しでの、UNHCRウガンダ事務所代表のスピーチ(2019年6月20日)

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活動している国連やNGOなど支援団体の旗。左から2つ目のAARのバナーには、「基礎教育へのアクセスを改善しよう」とスローガンが(2019年6月20日)

5万7千人の難民が暮らすアルア県のインヴェピ難民居住地での催しは、参加者らの行進から始まり、難民の子どもたちによるダンス発表が大いに盛り上がりました。スピーチでは、難民のグループのリーダーから支援に対する感謝とその継続を願う言葉や、5月から急増している新たな難民の流入に対する支援の準備の呼びかけなどがありました。

モヨ県のパロリーニャ難民居住地は、12万人が暮らしています。ここでは、AARの現地スタッフが催しの司会を務めました。全参加者で「難民とともに歩む」とスローガンの書かれたバナーを掲げて行進したり、様々なダンスが披露されたりと、ここでも大盛り上がりです。難民のグループのリーダーから聞かれたのは、学校を卒業したり中退したりした若者への支援を強化してほしいとの訴えでした。難民居住地では、教育と就労は大変に大きな課題です。

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パロリーニャ難民居住地での催しで、司会を務めるAARスタッフのファハド・モハメド(前列右、2019年6月20日)

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中等教育校の生徒たちによるダンス(2019年6月20日、パロリーニャ難民居住地)

「親と離ればなれの子どもたちを支援してください」

ビディビディ難民居住地での催しに参加していた、17歳のリリアス・オファニさんに話を聞くことができました。彼女は居住地内にある中等教育校の4年生です。

「世界難民の日は、とても素敵な一日。たくさんの南スーダンの友人に会うことができたし、来賓の方たちからは、私たちを激励する言葉をたくさんもらえて励まされました。とてもとても嬉しいです」と声を弾ませました。

夢はジャーナリストになることだそう。「自分がいる世界の外の話を聞くのが好き。ストーリーを組み立てるのも、写真を撮るのも好きだし、ソーシャルメディアの仕事もおもしろそう」。でも、難民が学業を続けていくのは簡単ではありません。

「この地域には難民が通える中等教育校はひとつしかありません。もっと増えたらありがたいです。それに、ノートも年に1回もらえるだけで、足りないんです」

さらに、リリアスさんは、親と離ればなれで暮らしています。「お父さんは紛争で亡くなり、お母さんは今も南スーダンにいます。居住地には、私のように親と離れ、子どもが自分の弟や妹の面倒を見ている家庭が多いんです。そういう子どもたちへの支援を優先してもらえたら......」

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リリアス・オファニさん(左端)に話を聞くAARウガンダ駐在員の藤田綾(右から2人目、2019年6月20日、ビディビディ難民居住地)

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ダンスを見に詰めかけた難民の子どもたち。ダンスや歌は子どもから大人まで大盛り上がりでした(2019年6月20日、パロリーニャ難民居住地)

ふだん陽気な彼らの姿を見ていると、つい忘れてしまいそうになりますが、ここにいる人たちは、家族を殺されたり、家や村が焼き討ちにあったりして、何日も歩いて逃げてきた、とてもつらい経験を背負っています。そして今は難民として、教育や就労の機会もごく限られた世界で暮らしています。

自分たちの声を一生懸命に歌や踊り、スピーチに託して届けようとする彼らの姿は、「私たちはここにいる!」と世界に向けて訴えているようでした。

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今年のスローガン「Take A Step with Refugees-Protect The Environment」と書かれたバナーを掲げて行進(2019年6月20日、パロリーニャ難民居住地)

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南スーダンの伝統的なダンスを踊る参加者。大迫力です(2019年6月20日、パロリーニャ難民居住地)ン

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ウガンダ事務所 藤田 綾

2018年8月よりウガンダ事務所に駐在。大学で開発経済学を専攻。卒業後、開発コンサルティング会社に就職。パキスタンの職業訓練校の運営管理などに従事した後AARへ。千葉県出身

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