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アフガニスタン:「みんなと一緒に勉強できるのが嬉しい」 障がい児の就学を支援


「私よりも障がいの重い子を手助けできるようになった」「勉強ができるようになって、自分の成長を感じる」。学校でのできごとを嬉しそうに話すのは、アフガニスタンに暮らす障がいのある子どもたち。少し前までは学校に行くことさえ諦めていた彼らの生活が一変したのは、AAR Japan[難民を助ける会]が取り組む「インクルーシブ教育」がきっかけでした。最新の活動とその成果について、現地事業責任者の鶴岡友美が報告します。

女の子が教室で手話を練習している。両隣に教員が立って見守っている

手話の補修クラス。中央が聴覚障がいのある女の子(パルワーン県チャリカル郡サディキ校、2019年9月)

インクルーシブ教育とは、障がいの有無にかかわらず誰もが適切な配慮を受けて学習できる教育方法です。AARアフガニスタン事務所は2014年からインクルーシブ教育支援事業に取り組んでいます。インクルーシブ教育を推進するにあたり、拠点校として2つの公立校(小学生から高校生の学齢の児童・生徒が在籍)を対象に支援を始めました。両校の校舎のバリアフリー化としてトイレを改修し、スロープや手すりを設置するとともに、各校の校長と教員約10人で構成する「インクルーシブ教育推進委員会」を設立。委員会メンバーは、専門家による研修を受講し、障がい児の学校への適切な受け入れ方やコミュニケーション方法について学んでいます

受講者は他の教員と研修内容を共有し、学びを生かして手話と点字の補修クラスを開き、課外活動として障がい者の権利について学ぶ講座を開催しています。また、障がいのある子も参加する詩の朗読会やお絵かき大会など、障がいのある子とない子が交流し、心のバリアが自然になくなるような行事も実施しています。さらに、障がい児のいる家庭を訪問し、障がい児の就学率の向上にも取り組んでいます。

保護者たちも事業に協力

教員や児童・生徒から次のような声が寄せられています。

11名の男女が校舎に並んでいる

インクルーシブ教育委員会メンバー(サディキ校、2020年11月)

推進委員会に所属するサディキ校の教員のひとりは「これまで気付かなかった彼らの強みや特技を発見できて、意思疎通がしやすくなった」と話します。インクルーシブ教育導入前とは違って、授業中に障がいのある児童・生徒に発言の機会を与え、より注意を払って彼らが話すことに耳を傾けるほか、他の子どもたちと一緒にゲームをしたり遊んだりするようになったそうです。また「保護者が子どもの就学を喜び、委員会の活動に進んで協力してくれるようになった」ともいいます。毎月の報告会に欠かさず参加したり、子どもと一緒に手話を習ったり、それまで以上に子どもに寄り添ってくれているようです。

7名の男女が校舎に並んでいる

インクルーシブ教育委員会メンバー(サラヤン校、2020年11月)

もうひとつの拠点校・サラヤン校では、インクルーシブ教育導入前は2人しかいなかった障がい児が、導入後は徐々に増加しています。推進委員会の教員は「AARの支援によってよりよい学習環境が整備され、現在当校に通う障がいのある子のすべてが、ほかの子どもたちと同じように勉強を続けることができるようになっています」と喜びを語ってくれました。

子どもたちからは、勉強ができるようになった喜びの声が多く聞かれます。

車のおもちゃなどを手に兄弟2人が笑顔で遊んでいる

自宅で兄弟と遊ぶバ―ラム君(左)(2020年11月)

ザイナブさん(10歳・女子/サディキ校)「私は爆発物で耳を負傷し、よく聞こえません。最初は学校に入学できると思っていませんでした。でも、ある日、先生が家に来て、障がい児のための補修クラスを開設したことを話してくれました。家族も勇気づけられ、学校に通い始めることができました。勉強ができるようになってから、自分の成長を感じて、とても嬉しいです

バーラム君(8歳・男子/サディキ校)「僕は視覚に障がいがあります。お父さんから学校に行くように勧められた時はちょっと不安でした。でも、同じクラスの子が親切にしてくれたり、学校の先生たちも座席を一番前にしてくれたりして、今では学校に行くのが楽しみになりました。他のみんなと同じように勉強できて嬉しいです。一緒に学校に行く友だちもできました。僕自身がとても変わったと感じています

こうした声を聞くと、子どもたちや教員、保護者の間で、インクルーシブ教育の根幹である多様性を受け入れ、支え合う気持ちが芽生えていることが感じられます。これまで障がい児が置きざりにされがちだった学校環境が、支え合いの場、自分を成長させる場へと変わっています。また、障がい当事者に「障がい者の権利」を学んでもらうことで、彼らの孤独感が解消され、自己肯定感を高めることにもつながっています。

AARアフガニスタン事務所は、新たに2郡2校を対象に活動を開始し、今後は地域社会も巻き込んでインクルーシブ教育を推進していく予定です。皆さまの温かいご支援を引き続きお願い申し上げます。

この活動は、皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しました。

AARでは、誰もが教育を受けられるよう、アフガニスタンやカンボジアで「インクルーシブ教育」を行っています。一人でも多くの子どもが勉強できるよう、あなたの力をお貸しくださいー。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

アフガニスタン事業責任者  鶴岡 友美

大学卒業後、証券会社に勤務後、青年海外協力隊員としてザンビアで結核やエイズの衛生教育に取り組む。その後アメリカの大学院へ進学。修了後、保健事業の管理や開発コンサルタント、NGO勤務を経て、2019年にAARへ。神奈川県出身

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