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国際地雷デーに寄せて:多様化する爆発物のリスク

2021年04月01日  地雷対策

頑丈なバイザーを顔に装着し、地雷の探知機を握り、作業に取り組む男性 周辺には建物など何もない切り拓かれた場所

アフガニスタンで地雷除去に取り組むHALOのスタッフ。AARが資金面で協力している(2019年6月)

4月4日は国連が制定した「地雷に関する啓発および地雷除去支援のための国際デー」です。AAR Japan[難民を助ける会]が参加する国際ネットワーク「地雷禁止国際キャンペーン」(ICBL)の最新データによると、2019年に確認された地雷・不発弾などによる死傷者は世界55カ国・地域で5,554人に上り、2013年の3,457人と比べて6割増えています。地雷問題の現状について、AAR東京事務局の紺野誠二が報告します。

2019年の集計では、被害者が最も多いのはアフガニスタン1,538人、次いでシリア1,125人、ミャンマー358人の順です。また、政情不安が続くアフリカの内陸国マリは345人と死傷者が急増しています。ミャンマーでは主に国軍(政府軍)と少数民族の武装勢力が衝突する地域に地雷が埋設されていますが、政府軍が対人地雷を使用しているのは世界でも同国だけです(2020年時点)。

近年の顕著な傾向として、手製の即席爆発装置(IEDs)など地雷以外の爆発物による被害が増加していることが挙げられます。IEDsとは、ありあわせの材料で作れる爆発装置のことで、動力源(Power Source)・スイッチ(Switch)・発火装置(Initiator)・火薬(Main Charge)・容器(Container)の5つの部位で構成されます。

反政府武装勢力が製造・使用することが多く、例えばアフガニスタンで最近目立つのが、車両に取り付けて携帯電話で遠隔から起爆するIEDsです。イラクやシリアで活動する過激派組織「イスラム国」(IS)は以前、ドローンを使ってIEDsを運ぶ手法を用いていました。

細長い円筒の砲弾に、爆破装置が付けられたもの 材料がそろえば見るからに簡易に作成できそう

砲弾を使ったIEDs(UNMAS資料より)

見た目はどこにでもあるようなポリタンク 起爆装置も内部にあるので、外側からは爆発物と判断するのは難しい

ポリタンクに起爆装置を埋め込んだIEDs(UNMAS資料より)

死傷者が急増するマリでもIEDsの被害は深刻です。同国北部地域では2012年以降、民族対立にイスラム原理主義組織が絡んで内戦が激化し、多数の民間人がIEDsの犠牲になっています。国際社会も手をこまぬいているわけではなく、国連地雷対策サービス部(UNMAS)などがIEDs除去作業に取り組んでいますが、国際的な地雷・爆発物の対策資金が届きにくいマリのような国では、なかなか除去活動が進まない実情があります。

他方で紛争が終結し、地雷の除去活動が進んだことで、地雷被害の割合が減少している面もあります。例えば、カンボジアでは1979~2019年の地雷・不発弾による死傷者は6万4,849人と報告されていますが、1998年の1,249人に対して、2019年は77人と、実に94%も減少しています。

AARは地雷除去を専門とする英国の団体The HALO Trustへの資金提供を通じて、アフガニスタン、カンボジアなどで地雷除去を進めてきました。まだまだ多くの課題はあるものの、国際社会の長年の取り組みが着実に成果を挙げていると言うこともできます。

子どもを含む多数の民間人が地雷・不発弾などの被害を受けていることから、そうした危険から身を守る回避教育は重要な意味があります。AARは2002年以降、アフガニスタンで回避教育に取り組んでいますが、近年は旧来の地雷回避だけでなく、IEDsに注意するよう呼び掛けています。紛争やテロが続く地域では今日、人々は多種多様な爆発物の危険にさらされており、地雷はそのうちのひとつという位置付けに変わりつつあります。

AARは地雷除去や回避教育、被害者のサポートなどの「地雷対策」を重要な活動のひとつに掲げています。上述したような状況の変化を踏まえて、地雷・爆発物による被害を少しでも減らす取り組みを今後も続けてまいります。

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【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局  紺野 誠二

2000年4月から約8ヵ月間イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月まで地雷対策、啓発、緊急支援を担当。1度AARを離れて、障がい者や子ども支援などに従事した後2018年2月に復帰。社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。茨城県出身

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