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3.11から半年、9.11から10年―理事長 長有紀枝より

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3月11日から半年が経過いたしました。9月10日現在、今なお、4,086名の方々が行方不明で、今日も、警察による捜索が続けられ、死亡が確認された方々の総数は15,781名に上ります。3月11日に、突然、人生を奪われ、お亡くなりになられた方々のご冥福を、衷心よりお祈り申し上げますとともに、残されたご家族に、心からお悔やみ申し上げます。
同時に多くの方々が地震と津波により、ご自宅や財産、生活の糧、何より日常生活そのものを奪われました。福島県では、東京電力福島第一原子力発電所において発生した事故により故郷を後に、他市町村への避難を余儀なくされておられる方々がおられます。被災された皆さまに、改めまして、心よりお見舞いを申し上げます。

発災以来、私ども難民を助ける会には、国内外の支援者の皆さま、企業、団体、財団等の方々から18億円を超えるご寄付と助成、物資やサービスのご提供をいただきました。活動の詳細は、ホームページや会報で随時、ご報告させていただいておりますが、改めまして、頂いたご支援に心から御礼申し上げます。お預かりしております支援金、助成金を被災された方々のために、最大限生かして参りますことをお約束いたします。

難民を助ける会は、1979年に、インドシナ難民の発生を機に、「困った時はお互い様」という日本の伝統を、見ず知らずの外国の方にも差し伸べ、日本の善意を世界に示していこうと、前会長・相馬雪香(1912-2008)の呼びかけで生まれた国際協力NGOです。不偏不党と人道主義、言い換えますと、特定の政治・思想・宗教に偏らず、国籍や人種、民族の別なく、最も弱い方々、最も困難な状況にある方々に、支援をお届けすることを旨とし、設立以来これまでに55を超える国や地域で、緊急支援、地雷対策、障害者支援、感染症対策を実施してまいりました。
創設者の相馬は、1999年、会発足20年の節目に「何の後ろ盾もない海外の難民支援を目的とした難民を助ける会のような組織が、解散もせずに20年も活動を継続できたのはたいへん喜ばしいこと。それは、難民を助ける会のような組織が必要とされる世の中が20年も続いてしまったからではなく、何の後ろ盾もない難民を助ける会の存続は日本人が、世界の難民の窮状に無関心ではないことの、表れだから、日本人の温かい心の表れだから」と申しました。
全く同じ意味で、3月11日から半年がたった現在も、現地・東京の役職員・ボランティア総勢100名が、支援活動を継続し、またこれからも、少なくとも2年間は活動を続ける目処がたっておりますのは、東日本大震災の被災者の方々の生活の復旧、復興にお役にたちたいという、被災地を含む日本全国の、そして世界の支援者の方々のお気持ちがあるからです。皆さまのご理解とご支援に、改めまして、心から御礼申し上げます。

私たちは、一義的に災害や紛争の発生時に、各国政府が提供すべき自国民への保護を、各国が提供できない、あるいはそうした政府自体が崩壊し存在しない海外の途上国や紛争地で、難民・避難民支援、地雷対策、障害者支援等を行うための組織です。そうした組織が、母国・日本で、このような惨状を見、また被災者お一人おひとりに、特に障害をもった方々やお年寄りなど最弱者層の方々に、日本国政府の支援が十分行き届いていない現状を見るのは、信じ難く、人道支援団体として、焦りを感じます。しかし、他方で、これまで海外の大規模自然災害や、紛争地の緊急支援で培った経験や仕組みが、日本で生きることは、私たちの喜びであり、同時に、それらを、復興に役立ててまいることは、私たち、日本生まれの国際協力NGO・難民を助ける会の責務でもあると思います。

また、これまで阪神淡路大震災や、新潟で多少の活動経験があるとはいえ、被災3県全域を対象に、これまでの規模で活動を展開することは私たち難民を助ける会にとっても、全く初めての経験です。海外の活動経験があるとはいえ、東北地方での私たちは、全く経験のない初心者であり、時にお叱りや苦言をいただきつつ、学びをいただく毎日です。そんな中で、なんとか、被災者の方々からお礼の言葉もいただける活動が継続できておりますのは、自身も被災者でありながら、まわりの方を気遣い続ける避難所の方々、粉骨砕身で業務を行う消防やボランティアの方々、常に最前線で、すべての責任を引き受けつつ、正面から、逃げずに、被災者の方々、災害そのものと向き合う市町村長、自治体職員の方々、障害者施設の方々、避難所の責任者の方々のご助言や、ご協力があったからです。
こうした未曾有の大災害の中で、そうした方々と一緒に仕事ができ、学ばせていただけることに心から感謝申し上げたいと存じます。

また、チェルノブイリにも匹敵する東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響が、福島県に、また東北・関東全域に及ぼしている甚大な影響に、大きな責任も感じます。福島第一原発で作られた電力は、東北地域ではなく、この東京、関東に供給されるためのものであり、それを利用し生活してきたのは、私たちであるからです。
現在、難民を助ける会は、岩手、宮城県での障害者支援を中心とした活動に加え、ジャパン・プラットフォームの助成を受け、ADRA Japanと共同で、福島県内の仮設住居・借り上げ住居に入居する全世帯(約35,000世帯)を対象に、生活必需品の支援を行っています。難民を助ける会が対象としておりますのは、相馬市、南相馬市、飯館村など浜通りと中通り合わせて13市町村です。広島、長崎をもつ世界唯一の被爆国で生まれたNGOとはいえ、初めての原子力災害を前に、この生活必需品の配付活動の後、どのような支援ができるのか、まだ暗中模索の中ではありますが、被災者の方々、被災自治体の皆さまのご要望に耳を澄ませて、放射能に負けずに向きあう、復旧・復興を応援していきたいと思います。

個人的なことではありますが、私は、大学の教員をしており、「人間の安全保障」と呼ばれる分野を専門としています。今回の福島第一原子力発電所の事故では、収束にむけて最前線で作業に従事されている方々の被爆はもとより、事故以前の平時から、定期的な安全点検の過程で、多くの作業者の方々が一定の被曝を強いられるという現実を、大変恥ずかしながら初めて認識、意識いたしました。「人間の安全保障」の「人間」とは一体誰を指すのか。日本国内の「人間の安全保障」は十分に、既に保障されている、という前提のもと、これまで海外の、政府が機能しない、あるいは政府そのものが存在しないような地域の、人々の「安全保障」のみに目を向けて参りましたが、原発作業者の方々の安全は、まさに「人間の安全保障」の問題です。これらの原発作業員の方々の「人間の安全保障」が、企業により、労働組合により、そして、私たち電力の使用者により、意識され、その安全を守るための仕組みがきちんと整備されていたならば、今回のような事故は起きなかったではないかと思います。
誰かの犠牲の上に成り立つ生活は、短期的には可能であっても、長期的には存在しえない。誰かの犠牲の上に築かれる幸福では、誰も幸せにはなれない。業務調整のためにアフガニスタンから来日中の難民を助ける会のアフガニスタン人職員と話しつつ、9.11の同時多発テロ事件から10年の節目に改めてそうした思いを抱いています。
全ての人の「人間の安全保障」の確保は、非・現実的な目標であるのかもしれません。しかし、少なくとも、「人間の安全保障」は日本国民のみならず、世界のすべての人々を、あるいは途上国の人々のみならず、日本のすべての人々の幸福や安全の実現を念頭におき、目標にしてはじめて、確保されるものではないでしょうか。

国際協力の緊急支援には、支援の最低限の基準を定めた「スフィア・プロジェクト」があります。今回先進国、日本での災害ということで、こうした基準は、発災直後の混乱期をすぎれば、すぐに確保されるもの、と考えておりました。ところが、最低限の摂取カロリー、住環境、被災地の女性の置かれた環境含め、基準に達していない分野が山積しています。今後はこれらの分野にも、国際協力NGOの知見を生かしていきたいと思います。
私どもの職員の中にも、被災地出身で、自宅が全壊し、海外での救援活動を継続できなくなった者もおります。そうした職員の分も、活動に励んで参ります。
3月11日から半年、9.11から10年の節目に、改めまして、難民を助ける会の今後の活動の決意表明をいたしますとともに、皆様の引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。

 

スフィア・プロジェクト

1997年に人道支援を行う国際NGOのグループと国際赤十字・赤新月運動によって始まった災害等に対応した緊急人道支援の際に達成されるべき最低基準を指す。ハンドブックが出版されており、内容は人道憲章と災害援助に関する主要セクター(給水と衛生、栄養、食料援助・食料の確保、シェルター、保健サービス)における最低基準と基本指標からなり、国連機関を含む国際社会が人道支援を行う際、最も信頼に足る指標として現場で使用されている。何度か改訂されており、最新版は2011年度版。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

難民を助ける会理事長 長 有紀枝

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