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南スーダン:安全な水を使い続けるために

2013年06月07日  南スーダン緊急支援
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20年以上続いた内戦が終わり、2011年7月に独立を果たした南スーダン。長年続いた紛争によって生活基盤は破壊され、人々は安全な水を手に入れることさえ厳しい日常を生きています。そこで、AARは2006年より井戸や給水塔の建設などの支援を行い、これらを長く使ってもらうために村人や行政を巻き込んだ活動を行っています。南スーダン事務所駐在4年目となる角谷亮が報告します。

地域の人々主体で井戸が管理されるように

山間のため池で子どもが水を飲んでいます。その隣ではヤギも同じ水を飲んでいます。

井戸の無い地域では、ヤギや牛などの動物も水飲み場として使う水たまりや池の水しか飲み水がないこともあります(2012年2月)

AAR南スーダン事務所スタッフが市街地から遠く離れた村々を訪れると、「村の井戸のポンプが壊れたので直してほしい」と、数人の村人がやって来ることがあります。話を聞くと、自分たちの村の近くをAARが訪れているということを風の噂で聞きつけ、早朝3時間歩いて修理の依頼に来たそうです。
AARは2006年より東エクアトリア州の5つの郡で130基以上の井戸を建設するとともに、地域の人々自身で井戸の管理や修理ができるよう、建設の際に、各村に井戸管理委員会をつくり、正しい井戸の使い方や修理方法を教えています。しかし、一度習った知識も、時間が経過するにつれて忘れてしまうことがあります。また適切な管理をしていても、ポンプが故障したり、部品の交換が必要になることがあります。1日も欠かすことのできない安全な水。外国の支援団体を待つのではなく、地域の人々自身が故障を防ぐとともに、修理を行う力を付けていくことが必要です。

村人に、繰り返し修理の方法を教えています

AARの南スーダン事務所スタッフによる井戸の管理方法のレクチャーを子どもや大人50人以上が真剣に聞いています。

図や写真などを使って、村人に井戸の管理方法を教えるAAR南スーダン事務所のスタッフ(2012年7月27日)

AARは井戸を設置した翌年に村を再訪し、井戸管理委員会、修理技術者への再講習会を実施しています。その後もAARは井戸を建設した村を訪れ、井戸の管理が適切に行われているかを確認しています。故障の一因ともなる動物の侵入を防ぐための柵が設置されていないなど、管理が不十分と判断した場合、村人たちに問題や原因を協議してもらう場を設け、今後の管理方法などを決めてもらいます。また、故障時に村人が迅速に対応できるよう、村の集会所に修理道具や部品を補給しています。

地域行政の能力も強化

郡役所職員が井戸を修理する様子を7人から8人ほどの村人が見守っています。

AARの技術講習を受けた郡役所の担当者が井戸を修理しています(2012年9月4日)

AARは村人の井戸管理に関する知識や修理技術の向上に力を入れていますが、まだ村人の井戸修理能力が十分でない場合もあります。村人が役所に修理依頼をした際に役所が十分対応できるよう、AARが活動する郡の役所の水担当局職員に対しても修理技術講習を実施しています。予算が不足する郡役所に代わって、井戸修理道具や部品の提供も行っています。また井戸の修理実績や、修理部品の在庫を記録として残すよう指導を行っています。こうした記録をきちんととることで、将来的に郡役所が故障の傾向を分析し、対策を立て、部品の補充などを行うことができるよう支援しています。

命をつなぎ、育む、安全な水をこれからも

安定した水を供給するためには、村人と郡役所が井戸の管理や修理を主体的に行っていくことが欠かせません。井戸がきちんと稼働していれば、不衛生な水が原因で起こる感染症や下痢の危険からより多くの人々を守ることができます。子どもたちが水汲みに費やしている時間を大幅に減らすことで、学校に通う可能性が拡がります。これからも井戸や給水塔の建設とともに、地域の人々が主体的に維持管理できるよう支援していきます。

6人ほどの子どもたちがAARが建設した井戸の周りに集まり、水を飲んでいます

井戸ができて、安全な水が飲めるようになりました(2013年3月8日)

AARが建設した井戸の周りで、13人ほどの子どもたちと駐在員の角谷亮

AARが設置した井戸を毎日使っている子どもたちと駐在員の角谷亮(2013年3月8日)

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

南スーダン事務所駐在 角谷亮

2007年11月から2010年3月までタジキスタン事務所に、同年4月より南スーダン事務所に駐在。大学では英米語学を専攻。卒業後、派遣員として在外公館に2年半勤務。その後、AARへ。趣味は野球(兵庫県出身)

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