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パキスタン:安全な水の不足に加え、子どもたちの健康をむしばむものは

2014年02月17日  パキスタン緊急支援
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アフガニスタンとの国境に近い、パキスタンのハイバル・パフトゥンハー州ノウシェラ郡。ここでは、日本では当たり前の安全な飲み水やトイレが大変不足しています。ノウシェラ郡の地域住民に加え、4万人近い国内避難民と、10万人以上のアフガニスタン難民が暮らしていますが、安全な飲み水も、十分な数のトイレもありません。ここで生活する多くの子どもたちのため、AAR Japan[難民を助ける会]は2011年より、小学校の井戸やトイレの整備と衛生教育を行っています。パキスタン駐在員・原文次郎の報告です。

水を飲み、下痢に苦しむ子どもたち

AARが活動を行うノウシェラ郡に下水道はなく、上水道の普及率もわずか20%です。人々は主に井戸水を使っていますが、井戸の設置場所によっては周囲の排水から大腸菌が入り込むなどの問題があり、その多くは飲み水には適していません。しかし、ほかに水源はありません。事前調査では、過去1ヵ月以内に下痢になったと答えた児童は、パキスタン公立小学校で48%、アフガニスタン難民キャンプの小学校で69%にのぼりました。

学校の敷地内のいたるところに排せつ物が

この地域にはトイレも不足しています。学校のトイレは数が少ないうえ壊れているものも多いため、これまで児童は日常的に校庭や道端で排せつしていました。パキスタン政府は教育環境の整備に力を入れていますが、都市部から離れたこの地域では取り組みが十分ではありません。

そこでAARは、2011年から現在までに38の公立小学校およびアフガニスタン難民キャンプの小学校で、計76基の井戸と98基のトイレを新設または修繕し、井戸には浄水フィルターと紫外線で滅菌する浄水システムを設置しました。これにより、約14,000人の児童が安全な飲み水を確保し、トイレを利用できるようになりました。

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支援前:以前は児童120人がひとつのトイレを共有していました。(2013年2月13日:アフガニスタン難民キャンプの小学校)

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支援前:壊れたドアの向こうには穴があるだけ(2013年2月13日:アフガニスタン難民キャンプの小学校)

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支援後:通常のトイレを11、障がい児用トイレを1つ新設しました。車いすでも利用できるようスロープがあります(2013年11月8日:アフガニスタン難民キャンプの小学校)

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支援後:障がい児用は洋式で、手すりや手洗い場も低い位置に設置しました(2013年11月8日:アフガニスタン難民キャンプの小学校)

「コンテストに出てから、手洗いが習慣になったよ」

井戸やトイレの整備とともに、AARが力を入れているのが衛生教育です。2012年からは、学校の教師や保護者へ衛生に関する講習会を行っているほか、子どもたちには、トイレ使用後の手洗いや歯磨き習慣の大切さを伝えています。各学校で、学年代表の児童が手洗いや歯磨きなどを実演し、できばえを競うコンテストを行ったところ、子どもたちの衛生に対する関心が高まりました。アリ・ガー公立男子小学校で優勝した4年生のムハンマドくんは、「コンテストに出てから、石けんでの手洗いが習慣になったし、学校の教室やトイレ、校庭の掃除が行き届いているかを点検するようになったよ」と、嬉しそうに話してくれました。

今後もこの地域で不足する井戸やトイレの整備と衛生教育を続け、子どもたちの健康づくりに貢献していきます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

パキスタン事務所駐在 原 文次郎

大学卒業後、電機メーカーに勤務。米国同時多発テロを機にアフガン難民支援のボランティア活動を開始。その後国際協力NGOなどを経て、2013年10月よりAARへ。「子どもたちが嬉々として水を飲んだり手洗いをする姿に励まされます」。静岡県出身

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