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シリア難民支援:「シリアとトルコの人々を繋ぎたい」

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2011年から続くシリアの内戦を逃れて、多くのシリア人が国境を越えて周辺諸国へ避難しています。AARはトルコに逃れたシリア難民の支援を継続しており、2014年7月には難民の定住を支援するコミュニティセンターを開設しました。東京事務局の景平義文が報告します。

シリア難民の方々と

AARが開設したコミュニティセンターに通うゼキエさん(中央上)と4人の子どもたち。左上は駐在員の枯木幸子。右はAARのトルコ事務所で働くシリア難民のムナ・アルバドラン(2014年7月8日)

「トルコの人たちときちんと話がしたい」

「今でも親切なトルコ人はいるけれど、それ以上に私たちに敵意を持つ人が増えたように思います。病院ではシリア人は後回し。買い物でもシリア人と分かると値段を上げられます。でも、ここで生きていくために、私たちも変わらなければいけません。トルコ語を学び、トルコの人たちときちんと話ができるようになりたいです。そうすればきっと関係が良くなるはず」。

そう話すのは、1年半前にシリアの首都ダマスカスから逃れてきたゼキエさん(30歳・仮名)。2014年7月にAARがトルコ東南部のシャンルウルファ県シャンルウルファ市に開設した、難民の定住を支援するコミュニティセンターに子どもたちと通っています。

シャンルウルファ県には、シリア難民約18万人が暮らしており、うち11万人が難民キャンプの外で生活しています。近い将来に祖国に戻れる見通しがないため、その多くがトルコでの定住の道を歩み始めています。

しかし、その道は簡単ではありません。シリアでの資格や職歴を活かすことは難しく、仕事を得るために新たなスキルを身に付けなくてはなりません。アラビア語が公用語のシリアとは言語も違うため、トルコ語の習得も必要です。また、シリア難民の長期滞在に反感を持つトルコの人々も増えており、地域住民との良好な関係の構築も課題となっています。

コミュニティセンター外見

コミュニティセンターは、シャンルウルファ市の市街地にある雑居ビル一棟を借りて運営されています

教室の様子

シリア人の9~12歳の子どもを対象にしたアラビア語教室の様子。熱心に母国語を学んでいます(2014年7月8日)

コミュニティセンターを開設し、定住を支援

遊ぶ子どもたち

試験的に開催したレクリエーションに集まった子どもたち(2014年6月)

AARはボランティア講師を育成し、センターでコンピューターや理髪などの職業訓練コース、トルコ語や英語、アラビア語といった語学教室を開設・準備しています。また、シリア難民がトルコで暮らす上で役立つ行政サービスなどの情報提供や法律相談の実施、『トルコ生活ガイドブック』の制作・発行を進めています。さらに、避難生活で孤立しがちなシリア難民が集ったり、シリア人とトルコ人が交流できるイベントも企画しています。6月に試験的に開催した音楽教室や映画観賞会などのレクリエーションには、19日間でのべ356名が参加しました。

ファトマちゃん

近所でセンターの開設を聞いて通い始めたというファトマちゃん(左。右は駐在員の枯木幸子)

オープンから1ヵ月、すでに約300名が講座への登録・受講を開始しています。
「トルコ語を上達させて、トルコ人の友だちをたくさんつくりたい。そして、このセンターに連れてくる」と話すファトマちゃん(11歳・仮名)。言語を学ぶのが好きだという彼女に「将来行ってみたい国は?」と尋ねると、しばらく考えてから「シリアに帰りたい」と答えたのがとても印象的でした。祖国に帰る日を心待ちにし、母国語のアラビア語も積極的に勉強しています。

トルコで地に足をつけて生きて行くことを決めた難民の方々が生活の基盤を築けるように、そしてファトマちゃんのような子どもたちが勉強を続け将来に希望を持って生きられるよう、支援を続けていきます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 景平 義文

大学院で教育開発について学び、卒業後ケニアでのNGO 勤務を経てAARへ。2012年11月より、トルコでのシリア難民支援を担当し、支援物資の配付や教育支援に従事。「半年ぶりにトルコを訪れました。トルコ人のシリア難民に対する見方が非常に厳しくなっているのを肌で感じています。関係の改善に少しでも貢献したい」(大阪府出身)

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