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【熊本地震から2年】福祉施設での支援活動、そして将来の災害への備え

2018年04月09日  日本
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2016年4月14日に震度7を記録し、熊本県および大分県で相次いで発生した地震は、関連死を含め264名の命を奪い、19万棟におよぶ家屋損壊をもたらしました(2018年3月30日、熊本県発表)。被災地は復興に向けて着実に歩んでいる一方で、今なお、17,679世帯40,383名の方々が仮設住宅などで暮らしています。災害公営住宅の整備予定戸数1,735戸のうち、666戸が設計・工事着手中の状態と整備が遅れており、政府は昨年10月、原則2年の仮設住宅入居期限を1年延長する方針を閣議決定しました。このように復興には長い時間を要します。

より支援の届きにくい方々を支える

2017年以降、AAR Japan[難民を助ける会]は障がい者の中でも、特に支援の届きにくい在宅被災者のために活動する団体を支援しています。そのひとつ、一般社団法人「障害者がともに暮らせる地域創生館」(以下創生館)は、被害の大きかった益城町を拠点に297名の障がいのある方々から依頼を受け、日常生活での困りごとの解消や相談対応を行っています。AARは、介護リフトや入浴補助具などを創生館に提供しました。これまで入浴施設の整った遠方の施設へ通わざるを得なかった、重い障がいのある利用者の受け入れが可能になりました。また、バリアフリー化されていない仮設住宅で、多くの方が入浴時に不便を感じていた状況があり、利用者の方は、「以前はシャワーを浴びるだけだったので、寒い時期にお湯につかることができて嬉しい」と話してくださいました。こうした活動を通じて、AARは熊本市をはじめとする10市町村の障がい者や障がい児の生活を支えています。

また、益城町や西原村の仮設住宅で、コミュニティの活性化を目的としたお茶会などを開催し、約270名の方々にご参加いただきました。

ひじ置きや背もたれ、ベルトが付いた椅子型の入浴補助具の写真

AARが提供した入浴補助具。背もたれや座面の角度調整が可能なため、一人ひとりの体に合わせ、安定した姿勢で入浴することができます。(2017年10月5日)

参加された女性にお茶を手渡すAARの高木。当日はお茶菓子もふるまわれました

益城町の仮設住宅で開催したお茶会で、抹茶をふるまうAARの高木卓美(2017年8月23日)

防災・減災に向けて

参加者4名が机上の地図をのぞき込み、避難所などの位置を確認する様子

机上で災害時の実地訓練を行う様子。左から2人目がAARの野際紗綾子。(調布市、2018年1月24日)

東日本大震災や熊本地震における支援活動の経験を将来の災害に対する防災・減災に活かすため、AARは首都直下地震や東南海地震に備えるさまざまな活動に参加しています。平時から地域や組織を越えて良好な関係を築くことで、災害が発生した際により緊密な連携を図ることが可能になります。東京都南多摩地区(調布市、三鷹市、府中市、小金井市および大島)の防災会合では、近隣地域全体で防災に取り組むことの重要性と緊急時の対応方法を確認する、実地訓練を行いました。AARは、被災地の緊急支援で経験した事例を挙げながら、参加者と意見交換を行いました。

また、南多摩地区の社会福祉協議会の職員約40名を対象としたセミナー「もし私たちが被災地社協になったら」(主催:府中市社会福祉協議会)において、災害時に障がいのある方々がおかれる状況や、その際に必要な対応方法などをお話ししました。ほかにも、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震で被災された方々が参加した、被災時の経験から地域の防災を考えるフォーラム「災害、その時私たちは...」(主催:社会福祉法人「日本身体障害者団体連合会」)では、AARの野際紗綾子が講演し、人命にかかわる災害において、日ごろの連携がいかに重要であるかをお伝えしました。

今年度AARは、今後の国内災害時に、より効果的な支援活動が行われるよう、創生館や専門家と協力し、災害時の障がい者支援活動事例や学びをガイドラインにまとめる予定です。

熊本の被災地では、仮設住宅から復興住宅へ避難生活の場が移行するなど、節目ごとに新たなニーズが発生します。AARは今後も被災された方々に寄り添い、その時々に必要な支援を行うとともに、将来の災害に備えた取り組みを積極的に行ってまいります。
これまでの活動は、皆さまからのご支援により実施することができました。あらためて御礼申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 高木 卓美

大学卒業後、音楽活動、民間企業や大学での勤務を経て、2014年4月にAARへ。東京事務局で福島事業や熊本地震緊急支援を担当。埼玉県出身

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