活動ニュース

西日本豪雨から1年-取り残された人々のために

2019年07月01日  日本緊急支援
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崖から落ちそうなコンテナトラックの周りに人が荷物を持って歩いている

豪雨により流されたコンテナトラックから荷物を運び出す人々(岡山県倉敷市)

西日本豪雨の発災から1 年が経過しようとしています。被害は北海道から沖縄まで広範囲にわたり、死者・行方不明者は合わせて245名、家屋被害は全半壊だけで18,010件と甚大な被害をもたらしました(2019年1月9日内閣府発表)。

AAR Japan[難民を助ける会]は、被害の大きかった岡山県、広島県、愛媛県において2018年7月9日より緊急支援活動を行いました。8月末まで岡山県倉敷市の指定避難所となった二万小学校で炊き出しを行う一方、3県で支援物資の配付を進めながら、被災状況の調査を実施しました。9月からは調査の結果に基づき、福祉施設の復旧支援を実施しています。これまでの活動と今後について、AARの髙木卓美が報告します。

小学校の体育館は避難者の布団が並べてあり、そばには支援物資が山積みになっている

避難所となった岡山県倉敷市立二万小学校(2018年7月14日)

記録的な猛暑の中で炊き出し

倉敷市の要請を受け、AARはNPO法人ピースプロジェクトと協力し、2018年7月9日夜より二万小学校の体育館に避難した方々を対象に炊き出しを開始。8月末までの期間に合計20回、10,670食を提供しました。
2018年の夏は全国的に記録的な猛暑が続き、気象庁も「一つの災害と認識している」と発表したほどでした。提供するメニューはそうめんなど冷たい食べ物だけでなく、栄養のバランスを考慮したものを心掛けました。また、炊き出しを通じて避難所の住民同士がコミュニケーションを取る機会となるよう意識して声掛けなどを行いました。ほかにもスポーツやレクリエーションイベントを開催するなどして、避難生活のストレスを緩和できる場を目指しながら取り組みました。

校庭に作られたテントの下で炊き出しの食事を被災者に配っている大原

避難所となった二万小学校で炊き出しを行うAARの大原真一郎(左)(2018年7月14日)

細かく聞き取り必要なものを届ける

被災した施設の代表は泥だらけの家財道具を外に出している

NPO法人 岡山マインド 「こころ」の多田伸志代表理事(左)に話を聞くAARの高木卓美(2018年7月11日)

AARは常に、災害時に取り残されがちな障がいのある方々への支援に力を入れています。西日本豪雨の緊急支援でも、現地到着後、すぐに災害対策本部や被災した自治体の福祉関連部署をはじめ、県域のNPOセンターや障がい当事者団体などを訪問して福祉施設の被災状況を確認しました。その後、被災した3県の24ヵ所の施設を1軒ずつ訪ね、安否の確認やニーズ調査を行うと同時に、その場で必要なものを聞き取り、速やかに調達・配付しました。その結果、支援の手が届いていない10ヵ所の障がい者福祉施設と指定避難所の被災者のべ574人へ、飲料、食料、市販の医薬品、衣類、事務用品、電化製品、収納用品、掃除用具、泥かきなどに必要な作業用品、ビニールシートやマットなど、約60品目を提供することができました。支援物資を受け取った施設の職員の方からは、「すべてを失い途方にくれていたときに、AARさんがすぐ物資を届けてくれて本当に助かりました」「この災害で事業運営の糧を失いましたが、AARのご支援をいただき、障がい者支援復活の希望が持てるようになりました」などの感謝のお言葉をいただきました。

部屋の中は一見きれいだが、職員の人たちが泥をすべて拭き取り壁紙も張りなおすなどして子どもがすぐ使えるように大変な努力をしていた

障がい児のための画用紙やクレヨンをNPO法人「歩(あゆむ)」の職員へ手渡すAARの鎌田舞衣(左)

福祉施設の早期復旧がもたらす効果

AARは福祉施設が一日も早く活動を再開できることを目的に支援を行ってきました。福祉施設が早期に活動を再開することにより、被災した障がい者の方々の日中の居場所が確保され、日常的に必要とされるケアを継続して受けることができます。また、障がい者の家族もその間被災した家の掃除やその後の生活の再建に集中できます。さらに、障がい者福祉施設は早期に復旧の見通しを立てられるようになるため、利用者の流出や福祉人材の退職を防ぐことができます。

AARは調査を実施した24施設のうち、支援が必要とされる12施設に対し、建物の修繕や活動の再開に必要なパソコンなどの電化製品や事務用品、送迎車両などを提供しました。

たんぽぽ作業所の皆さんと車の前で記念撮影

NPO法人「れんげ草」たんぽぽ作業所に送迎用車両と自転車を提供しました。施設の皆さんと(前列左端はAARの田中晴子、右から3人目はAARの髙木卓美 2018年9月3日)

災害前と比べてより良い社会を目指して

被災地では、被害を受けた一般住宅の公費解体や再建工事などが多くあり、工事に携わる人材や資材が不足しがちなため、福祉施設の修繕や再建も遅れがちです。多くの福祉施設が、被災を免れた建物でなんとか活動を続けながら、行政や民間などさまざまな支援を活用し、時間をかけて元の運営状態に戻りつつあります。AARも福祉施設の修繕や再建を支援するとともに、それが単純に原状復帰に終わらず、被災前よりも地域に開かれた存在となるよう、ソフト面でもサポートを続けています。その一つの例として、被災地域に住む障がい児が安心して生活できるように、福祉施設と学校、家庭がともに話し合える場を提供しています。そこでの話し合いは、必要に応じて行政につないでいます。今後は、これまでの緊急支援活動で積み重ねてきた知見をもとに、災害時の障がい者支援のあり方について冊子にまとめるべく準備を進めています。

これまでの活動は、皆さまからお寄せいただいたご寄付により実施することができました。あらためて御礼申し上げますとともに、今後とも変わらぬご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 髙木卓美

2014年4月より東京事務局で緊急支援および国内事業を担当。大学卒業後、音楽活動、民間企業を経て大学で職員として勤務後、AARへ。埼玉県出身

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