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【TICAD V】アフリカからゲストを招いてシンポジウムを開催しました

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第5回アフリカ開発会議(TICAD V)期間中の2013年6月2日、AARはTICADの公式サイドイベントとしてシンポジウム「地雷被害者・元少年兵が作るアフリカの未来」を開催しました。アフリカのさらなる発展のために、アフリカの市民社会が担うべき役割は何か。さらに、その活動を支える日本の市民社会に何ができるのかを考えました。

「政府の支援が届かない分野で活動」-市民社会の役割

壇上で講演するマーガレット氏

ウガンダより来日したマーガレット・オレチ氏(2013年6月2日)

まず、地雷事故で片脚を失いながらも、ウガンダ地雷被害者協会(ULSA)代表・地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)大使として国内外を奔走する、ウガンダのマーガレット・オレチ氏が基調講演を行いました。アフリカの市民社会の役割を述べるとともに、国際社会からの支援の必要性を訴えました。

「私は地雷で片脚だけでなく仕事や友人までも失いました。5人の子どもを抱え深い絶望に襲われましたが、海外NGOの支援を受け自立し、今は充実した人生を送っています。しかし、アフリカの地雷被害者のほとんどが、自国の政府から何の支援も受けられず社会からはじき出されています。」

「ULSAはAARとも協働し、地雷被害者への医療支援や就業支援を行っています。私たち市民社会は、政府の支援が足りていない、または行われていない分野で活動しています。また、政府に対し、支援や開発の計画当初から、障がい当事者や市民社会を参加させて欲しいと訴えています。」

「人々の生活を確実に変えていくNGO」

AAR南スーダン職員、ジョセフのビデオインタビューを動画でご覧ください

続いて、かつて少年兵として銃を取り、現在はAAR南スーダン事務所で働くジョセフ・ダリオが、ビデオインタビューで登場しました。少年兵としての過酷な経験や難民キャンプで過ごした少年時代について話した後、南スーダンの将来への希望とNGOが果たしている役割を語りました。

「南スーダンは独立し、まったく別の時代が来た。紛争や汚職のない国になって欲しいと思います。」「NGOは支援を必要とする人々が暮らす場所に行き、直接支援をすることで、確実に人々の生活を変えています。」

政府系機関、NGO、ジャーナリストの立場から活発な意見

壇上のパネリストたち

左から、オレチ氏、小向氏、中坪氏、福井氏。アフリカの開発に様々な分野で関わるパネリストが、それぞれの知見から意見を表明しました(2013年6月2日)

シンポジウム後半では、様々な立場からアフリカに関わる3名のゲストを招いて、パネルディスカッションが行われました。 アフリカの汚職の問題や、NGOとドナー(資金提供者)の関係などについて、活発に意見が交わされました。

オレチ氏からは、ウガンダでは国家予算の50%を占める海外からの支援金が正しく使われていないと、汚職の問題が提起されました。国際協力機構(JICA)国際協力専門員(平和構築)の小向絵理氏が、「汚職問題を抱える政府の能力改善の支援を行うことが重要。汚職が報告される政府への支援停止は、政府よりもその国の国民に影響を与える恐れがある」と報告しました。

国際開発ジャーナル社編集委員の中坪央暁氏は、汚職問題の解決には非常に長い時間がかかるとしながらも、「90年代のTICADへの取材と比較すると、今回のTICADではアフリカ諸国へのODAの増額や民間企業による積極的な投資といった機運が高まっている。それは、アフリカの国々自身が、自国の管理や統治をしっかりやっていく意思を表明してきたことの成果である。そうした(汚職の蔓延といった)状況は少しずつ改善されていくだろう」と述べました。

また、オレチ氏の「NGOの活動は、ドナーの意向に沿った支援に偏りがちになってはいないか」という指摘に対し、長年NGOでアフリカ支援に携わってきたお茶の水大学グローバル協力センター特任講師の福井美穂氏は、「草の根の団体が絶対に忘れてはならないのは、現場で必要とされていることと自分たちの方針や事業計画が合致しているかどうか。そのうえで、他国のNGOなどとの協働という手法を通じて、その必要とされている支援の重要性をドナーや世界に発信していくことが重要」と答えました。

当日は130名を超える方々にご来場いただき、「現地の声を聞くことが大事だと再認識できた」「自分がこれからどういう形でアフリカの人々に支援したら良いかを学ぶことができた」などの感想が寄せられました。AARは、今後も日本の市民社会の一員として、ULSAのようなアフリカのNGOと手を組み、ジョセフのようなアフリカの将来に夢を抱いている現地の方々の力を借りて、支援活動を続けて参ります。ご協力・ご来場くださった皆さまに心より御礼申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 穂積 武寛

大学卒業後、政府系国際協力団体に10年間勤務。大学院を経て2009年1月にAARへ。東京事務局でアフガニスタン事業や総務、啓発(国際理解教育)活動などを担当。東京都出身

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