駐在員・事務局員日記

パキスタン:ある東京事務局員の建設モニタリング日記

RSS
このページをはてなブックマークに追加
このページをYahoo!ブックマークに追加
このページをlivedoorクリップに登録
執筆者

東京事務局
紺野誠二

2000年4月から約10ヵ月イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月までAARにて地雷対策、啓発、緊急支援を担当。AAR離職後に社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。海外の障がい者支援、国内の社会福祉、子ども支援の国際協力NGOでの勤務を経て2018年2月に復帰。茨城県出身

記事掲載時のプロフィールです

パキスタンのハイバル・パフトゥンハー州では、学校に手洗い用の水がなかったりトイレの水が流せないなど、劣悪な衛生環境が就学率の低さに影響しています。AAR Japan[難民を助ける会]は、トイレや井戸、手洗い場などの設備を修繕、新設し環境を整えることで、就学率や出席率の向上、中途退学率の低下を図っています。事業終盤となる7月半ば、5校のトイレや井戸、手洗い場の建設状況を2日間かけてモニタリング(点検)した様子をお伝えします。

7月16日 初日:山の中の小学校

4人の男性が井戸を囲って立ち、巻き尺を井戸に入れ深さを測っている

井戸を開け、水の深さを測っています(2019年7月16日)

この事業での支援対象校は、パキスタン公立女子小学校やアフガニスタン居住地にある14の学校です。今回のモニタリングでは、トイレや井戸などを建設中の学校を中心に訪問しました。残念ながらすでに学校の夏休みの期間であったため、生徒たちの姿はありませんでしたが、時間を持て余した近所の子どもたちがやってきていました。

最初に訪れたのは、昨年10月に訪問し、その後の変化が気になっていた学校です。まず、井戸の深さを測り、水の量が十分あるかどうかを確認しました。えっさほいさと井戸に投入してある取水パイプを引っ張り出して、巻尺で測っていきます。井戸の水面は約15.84メートル、深さは53.03メートル。もちろん深さがあればよいというものではないのですが、十分水があることが確認できました。水質のチェックも必要なので、井戸の水をペットボトルに詰めて検査機関に出しました。新築のトイレは水漏れがないかチェック。どうやら大丈夫そうでした。

次に訪れた学校は、舗装道路沿いの眼下に池(もしくは湖)があります。水が枯れてしまうことはなさそうだな、という印象を持ちました。ここでも井戸を掘り、モーターで水を汲み上げ、校舎の上に設置した貯水タンクに500ガロン(約1,892.7リットル)ほどの量を貯めておき、飲み水やトイレ用の水に使います。おおむね問題はなかったのですが、トイレの水を流したときに、新しく設置した貯水タンクと便器までつながるパイプの接点で、水漏れを発見しました。直してください、と建設工事担当者に伝えました。

日本の和式トイレに似ているが、扉の方向を向いてしゃがむ

パキスタンのトイレは日本でいう和式トイレに近く、独特の形をしています(2019年7月16日)

パキスタンの多くの学校には、警備員と用務員を兼務した方がいらっしゃいます。この方が日々の維持管理を担当しています。この学校の担当者は障がいのある方でした。障がいのある方が働いていることは、とても大きな意義があると考えました。
今回の事業では各校に障がいのある子どもに配慮したトイレも設置しています。洋式の便器や手すりを設置してあり、障がいがあっても使いやすくなっています。

スタッフがトイレに腰かけ、手すりに手を置いている

障がいのある子どもに配慮されたトイレ。座っているのはモニタリングに同行した建築エンジニア(2019年7月16日)

この日、最後に訪れた学校は山の中腹にあります。舗装道路がない中、ブルドーザーやシャベルカーにより道路拡張工事が行われていました。こんな山の中にも学校を作るんだ、と率直な感想を持ちました。車が入れないような場所にどうやって資材を運び込み工事をするのか?と工事業者の方に聞くと、「ロバを活用した」とのこと。日本では動物園でしか見かけないかもしれませんが、パキスタンの山岳地帯ではロバが大活躍しています。セメントやらタイルやら機械やら毎日運んでくれて作業をしたそうです。工事に時間がかかるのもうなずけます。現場を見ないとこのような現状をなかなか認識できず、「なんで工事が遅れているんだろう?」と単純に思ってしまいますが、世の中そんなに簡単ではないと気づきました。この学校でも設備をチェックしましたが、無事完成しており、ほっとしました。

学校の周りに大きな道はなく、急な斜面と人が歩ける程度の小道と木、石などに囲まれている

斜面の上から学校(中央)を見下ろす(2019年7月16日)

7月18日 2日目:絶好のモニタリング日和

2日目は朝からあいにくの雨模様。と言いたいところですが、実は雨の日は絶好のモニタリング日和です。「いい天気の方がモニタリングしやすいんじゃないの?」と多くの方は思われると思います。晴れている方がたしかに楽ですし、太陽の光もいっぱいなので写真映えもします。ですが、事業のモニタリング、特に今回のように施設のモニタリングでは、雨は大歓迎です。その理由は極めて簡単です。「世の中、晴れの日ばかりではない」からです。雨が降れば雨漏りしないかすぐにわかりますし、滑りやすさなども注意してみることができます。

1校目は幹線道路から少し外れた場所に位置しています。実は、この「少し」が問題です。普通の乗用車では走れない山道のため、4WDの車に乗り換えて訪問しました。ですが、学校の前の道路は上り坂。雨が降っているので路面がぬかるんでおり車はスリップ。最終的には車から降りて徒歩で学校に向かいました。
この学校のトイレにはちょっとした工夫がしてあります。トイレの中に蛇口を一ヵ所多く付け加えています。これはトイレのタンクから水を流す配管が故障したときに使うためのものです。何らかの理由で配管が壊れたとしても、この蛇口を使いバケツに水を貯めて流すことができます。そのため、トイレの水を流せずに使えなくなる、という事態を防ぐことができます。

蛇口の下には大きなバケツが置いてある

青いバケツの上にある蛇口が、配管の故障時に活躍(2019年7月18日)

2校目のも山の中。トイレの修理や建設は完成していました。過去に学校の敷地内に5カ所の井戸を掘ったものの、水が出ませんでした。さらに深く井戸を掘るための大きな機械を運び入れることは難しいと判断し、井戸掘りは断念。代わりに、山から引っ張っている水を貯めておけるタンクを新設することにしました。その建設の工事も終盤を迎え、もうすぐ完成するとのことで安心しました。

地面に掘った長方形の穴の四方にレンガのような素材が重ねられコンクリートで固められている

ここに水を一度貯め、その後、上に設置したタンクへモーターを使い水を入れる(2019年7月18日)

図面を手に持ち資料に書かれた内容を確認しているAARの紺野

設備を図面と照らし合わせている東京事務局の紺野誠二(2019年7月16日)

今回の事業で予定していた施設の建設は、おおむね終了しています。これから、一番重要になってくるのは、実際に子どもたちが使ってみて不都合が生じないかを確認することです。もし使用してみて不都合があれば修繕する必要があります。学校の夏休みが終わるのが8月31日。9月に入ってからの使用状況や問題がないかどうか確認をしていく予定です。

※この活動は、皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています.

< 駐在員・事務局員日記トップに戻る

ページの先頭へ
難民を助ける会
特定非営利活動法人
難民を助ける会(AAR Japan)
〒141-0021
東京都品川区上大崎2-12-2
ミズホビル7階
フリーダイヤル0120-786-746
Tel:03-5423-4511
Fax:03-5423-4450
月~土、10時~18時(日祝休み)