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ラオス:母と子の命を守るために

2016年08月04日  ラオス
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ラオス最北部の山岳地帯に位置するポンサリー県。貧困層が多く住むこの県では、生まれてきた赤ちゃん1,000人のうち、120人が1歳になる前に死亡しています。実に8人に1人が、早産や感染症などのために亡くなっているのです。これはラオス国内で最も高い死亡率で、正確なデータはないものの、母親も出産後の出血などによって死亡する確率が非常に高いとみられています。

産前健診は4人に1人...たった一人で出産のケースも

その理由は病院やヘルスセンターなどでの医療機器の不足や頻繁な故障、また例えば、はさみや鉗子などの医療器具が文房具と同じ場所に保管されていたり、滅菌消毒が十分でなかったりと、非常に不衛生なことがあげられます。さらに、妊娠中の体であっても農作業が優先されるため、なかなか病院に行く時間が取れない、または妊婦として健診を受ける必要性自体を認識していないなど、正しい知識がないために、産前健診を受けている人は4人に1人しかいないのが現状です。医療機関で出産している人も5人に1人の割合で、ある村を調査したところ、ヘルスセンターまで1キロと近いにもかかわらず、全員が自宅で出産していました。さらにそのうち1割の女性が誰の助けもなく、たった一人で出産していたのです。そこでAAR Japan[難民を助ける会]は、女性たちが妊娠・出産や子どもの健康について正しく理解し、安全に出産できるよう、昨年の秋から同県のポンサリー郡で活動しています。

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AARが提供した超音波ドップラーで胎児の心音を確認します。左から3番目はAARの安藤典子(以下写真はすべてポンサリー郡、2016年3月15日)

医療機器を整備、整理・整頓も

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妊婦さんに協力してもらい、超音波エコーの練習をするポンサリー県病院の職員(2016年2月23日)

まずは病院やヘルスセンターに、分娩や産前産後の健診、新生児のケアに必要な超音波エコーや保育器などを整備。職員がこれらの機器を正しく使用し、故障を防いできちんと管理できるよう研修を行いました(右写真)。さらに病室や診察室を清潔に保つことができるよう、整理整頓、掃除をするよう徹底し、妊婦や子どものようすを継続的に観察・記録することの重要性についても理解してもらいました。

「こんなことを教えてもらったのは初めて」

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ヤオファン村にて行われた母子保健についての講習会では、少数民族・ホー族の女性が興味深そうに質問する場面も(2016年6月8日)

また、ヘルスセンターの職員が村々を訪問して予防接種を行う際に、地域住民に対してほかの母子保健サービスも提供できるよう支援しています。提供するサービスは具体的には①妊産婦の体調管理や緊急時の対応、健診の必要性、出産後の新生児の世話、子どもの食事など母子保健についての講習、②妊産婦や子どもの健診、③家族計画についての教育や避妊薬の提供などです。こうしたサービスを予防接種と同時に実施するための場所の確保や適切な段取りなどについて、ヘルスセンターの職員に研修を行ったうえで、実践を後押ししています。母子保健についての講習は、母親となる女性ばかりではなく、夫や祖父母たちも対象としています。また、ラオス語を母語としない少数民族にも配慮し、イラストを使用した紙芝居形式の教材や妊婦の模擬体験ができるような教材を使ってわかりやすく工夫しました。ヤオファン村の女性たちからは「こんなことを教えてもらったのは初めて。とても勉強になったので村の人にも広めたい」との声が聞かれました(左写真)。

「ヘルスセンターに来てよかった」

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女の子を取り上げたヘルスセンター職員のオンシー(21歳)。「みんなにヘルスセンターで安全に出産にしてほしいです」。(2016年6月7日)

こうした活動の成果は少しずつ出てきています。超音波エコーを導入した施設では、これまでなら隣国・中国の病院に行かなければ診断できなかったような症例にもすぐに対応できるようになりました。以前は助からなかった体重1,500グラム以下の新生児も、保育器を使用することによって順調に成長し、退院できました。また、自宅ではなく医療機関での出産を選ぶ女性が増えてきています。ターセンポン村に住む25歳のスッティさんはこれまで2人を自宅で出産しまし た。今回も陣痛が始まった際、村を訪問していたヘルスセンター職員に自宅での出産介助の依頼がありました。しかしながら、さい帯を切断するための道具もなかったことから、一緒にヘルスセンターへ移動。陣痛の間隔が狭まらず、分娩に時間がかかることが心配されましたが、職員の適切な処置の結果、出血もほとんどなく3,100グラムの元気な女の子が生まれました(右写真)。環境の整った場所での出産が安心だったのか、スッティさんの夫も「ヘルスセンターに来てよかった」と語り、村の人にも出産時にはヘルスセンターに来るよう勧めてくれるとのことでした。

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夜中に陣痛が始まり、ヘルスセンターに来たというブアラバーさん。今回が2人目の出産です(2016年5月19日

また、これまでほとんど出産例のなかったハットサー村のヘルスセンターでは、5月に4人が出産しました。センターで出産したばかりの26歳のブアラパーさんは「今後も妊娠したら健診を受けにきます」と話してくれました(左写真)。

「母子保健に関心持つ人が増えてきた」

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講習会で村人に、妊娠中の体によい食べ物について説明するパスート(右から2人目、2016年4月24日)

私たちが活動しているポンサリー県にはさまざまな言語を持つ少数民族が暮らしています。多くの少数民族の女性はラオス語を解さないため、出産などについての正しい知識がなかなか伝わらなかったり、それぞれの民族に古くから伝わる産後の食事制限などの伝統を守っているために産前・産後に母親が健康を害したりする危険性があります。そんななか活躍しているのが、ポンサリー郡出身の現地スタッフ、パスート・クアンソムアン(26歳)です。「生まれ故郷に貢献したい」とAARの職員になったパスートは、少数民族であるプーノーイ族。プーノーイ族の住む地域では、母語を活かして、住民に積極的な講習会への参加を促しています。「村の現状を知っているので、AARの事業を通じて妊娠・出産をめぐる状況を改善できればと思っています。大変なこともありますが、講習会を行うにつれて、母子保健に関心を持つ人が増えてきたことは、大きなやりがいになっています」とパスートは言います。

ほかにも、医療機関では分娩が困難な場合に対応するための医療器具が不足するなど、まだまだ課題は山積みですが、これからも安全な出産と、母子の健康のため活動を続けていきます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ラオス・ポンサリー事務所 安藤 典子

2015年10月から現職。看護師の経験を活かし、2012年1月にAAR入職後、ラオス・シェンクワンでは不発弾被害者支援を担当。岐阜県出身

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