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タジキスタン:障がいのある子どもたちの声を聴く

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AARが事務所を構えるタジキスタンの首都ドゥシャンベ

AAR Japan[難民を助ける会]はタジキスタンの首都ドゥシャンベ郊外のヒッサール市で、障がいの有無、人種や言語の違いなどにかかわらず、すべての子どもたちがそれぞれの能力やニーズに合わせて受けられる「インクルーシブ教育」の推進を行っています。

AARの支援により障がい児を受け入れるようになった学校で、聴覚障がいのある子どもたちにどんな変化が生まれたのでしょうか。各家庭を訪問して保護者や子どもたちからお話を伺ってきた東京事務局員の紺野誠二が報告します。

14歳で小学校1年生

笑顔のお母さんとメリコワさん お母さんは明るい水色の、メリコワさんは赤とえんじ色が混ざったような味わいある洋服を着ています

AARが支援する5番学校へ通えるようになったメリコワさん(右)と病院のスタッフ

まず訪れたのは聴覚障がいのあるメリコワさん(14歳)の家です。4人の兄弟姉妹の3番目である彼女は、2017年9月にAARが支援を行う5番学校に通い始めるまで、一度も学校に通っていませんでした。母親は、彼女が2歳のときに障がいに気づいたそうですが、学齢期になっても学校へ通わせることはしませんでした。タジキスタンでは、障がい児が教育を受けるには、数少ない障がい児向けの寄宿学校に入るしかありませんが、我が子を寄宿舎へ預けることに抵抗を感じる親もいます。メリコワさんの母親もその一人で、以来メリコワさんはずっと家でお手伝いをして暮らし、社会との接点を持てないままでした。しかし、妹が学校に通うようになると、自分も学校に行きたいという強い希望を持つようになりました。2016年秋にAARが支援する地元の障がい児支援団体「ヌリオフト」の働きかけで、同団体が運営するデイケアセンターに通えることになり、その後、晴れて5番学校に週3回通い始めました。今年は小学1年生の学習をしたそうです。
メリコワさんが学校に通えるようになり、母親は「いつも泣いてばかりだった娘が、とても表情豊かになりました」と喜んでいます。メリコワさんの希望は、手話を習ってコミュニケーションを取れるようになること。しかし、悩みの種は通学費用です。自宅から徒歩10分のところにある学校は障がい児を受け入れていないため、自宅から遠い5番学校に通っていますが、バスも自家用車もないため、週3回の通学にタクシーを利用する必要があります。往復で3ソムニ(約36円)かかりますが、月収が150ソムニ(約1,800円)の家庭には重い負担です。

メリコワさんが机に小さなノートを広げ、真剣に絵を描いている様子

絵を描くのが得意なメリコワさん

鉛筆で描かれた可愛らしいお花

リクエストすると素敵な花の絵をささっと描いてくれました

「寄宿学校はどうしても嫌」

母親とラシッド君が隣り合わせで仲良く座っています ラシッドくんはラップトップを持っています 母親は素敵なエメラルドグリーンの洋服を着ています 

5番校に通っているラシッドくん(左)は、筆者のPCで早速遊びだしました。右は母親

2番目に訪れたのは聴覚障がいのあるラシッドくん(11歳)の家です。母親はラシッドくんを市内にある寄宿制の聴覚障がい児向けの学校へ通わせようとしたのですが、母親によると、「ラシッドはどうしてもその学校に行きたがらずに、病気になってしまった」とのことでした。親元を離れて暮らすのは、きっと心細かったのでしょう。病気から快復したラシッドくんは現在週3回、母親と一緒に5番学校へ通い、授業では大好きなコンピューターの技術をどんどん習得しています。ラシッドくんの成長ぶりに目を細める母親の姿が印象的でした。ただ、メリコワさん同様、学校に通うには1日に4ソムニのタクシー代がかかるため、タクシー代の捻出に苦労しています。

わが子により良い学習環境を

リディアさんが優しく妹さんを膝の上に乗せています 妹さんは柔らかい笑顔を向けています

リディアさん(左)宅にて。リディアさんの妹と

3軒目に訪れたのがリディアさん(10歳)宅です。リディアさんは3年生。踊ることが好きな女の子です。「お友達にもらった」という指輪を大事そうに見せてくれました。彼女はある程度聴覚もあり、多少話すこともできますが、知的障がいもあるそうです。大きな声で話しかけるとうんうんと頷いてくれます。母親の働きかけで、リディアさんは自宅から徒歩10分程度のところにあるAAR事業への協力校に通うようになりました。

リディアさんの家庭も経済的に大変苦しい状況にあり、リディアさんは食べるものにも事欠く状態です。しかし、どの家庭にも共通するのは、わが子をより良い環境で学ばせたいという親の強い思いです。

学校が好き?嫌い?

全部で6種類の人間の顔が横一列に並んでいます 向かって左端は笑顔、右端は泣き顔です 困った顔や落ち着いた表情の顔もあります

子どもたちの学校についての満足度をペインスケールで聞きました

聴覚障がいのある子どもたちにいろいろと質問をするのは難しいのですが、一つだけどうしても聞きたいことがありました。それは「学校が好きかどうか」です。母親を通して「どの程度好きか嫌いか」を聞いてもらいました。このときに利用したのがフェイス・ペイン・スケールです。これは、医者が患者の痛みの程度を聞きたいとき、患者とのコミュニケーションが難しい場合に使うもので、スケールに描かれた顔の表情を選んでもらうことで痛みの度合いを知ることができます。5番学校に通っているメリコワさんとラシッドくんの場合は、一番左の満面の笑顔を選んでくれました。
一方のリディアさんが選んだのは泣き顔の隣の困った表情。「どうしてその顔なの?」と聞いたところ、「男の子にいじめられるから」とのことでした。今後、学校への働きかけを行う必要があります。

AARの支援は、障がいのある子どもたちが学校に通えるようになったら終わり、ではありません。その後も子どもたち一人ひとりの声にさまざまな手段を用いて丁寧に耳を傾け、希望をかなえるお手伝いをしていきます。また、障がいのある子どもたちがタクシーで自宅から遠い学校へ通わなくても近所の学校で受け入れてもらえるよう、より多くの学校でのインクルーシブ教育の普及に向けて、AARは今後も活動を続けてまいります。

この活動は皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 紺野 誠二

2000年4月から約10ヵ月イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月までAARにて地雷対策、啓発、緊急支援を担当。AAR離職後に社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。海外の障がい者支援、国内の社会福祉、子ども支援の国際協力NGOでの勤務を経て2018年2月に復帰。茨城県出身

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