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ケニア:生徒たちの「助け合い」の気持ちを活かして

2018年11月08日  ケニア
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ケニア北西部、トゥルカナ郡にあるカクマ難民キャンプ。南スーダンやソマリアなどから逃れた18万人以上の人々が暮らし、その8割が女性や子どもと言われています。キャンプ内における初等教育の就学率は93%ですが、日本の中学校3年生から高校3年生にあたる中等校では、就学年齢の6パーセントしか就学できていません。 AARは中等校の就学率の向上を目指すとともに、学校に通うことで、子どもたちが暴力や性被害から守られるよう、カクマ難民キャンプで教育支援を行っています。

「みんなの力になりたい」

AARはカクマ難民キャンプで学校の新設、教科書や教材の提供、ライフスキル研修(詳しくはこちら)などの支援を行ってきました。現在は、中等教育校の建設・修繕やライフスキル教育などのほか、「ピアカウンセリング」と呼ばれる、同じような立場・境遇にある人同士が、対等な立場で悩みや不安を話し、共感的に聞き合いながら、解決策を見出していくカウンセリングの研修を生徒向けに行っています。「ピア(PEER)」は「仲間」という意味です。

カクマ難民キャンプは紛争地から逃れてきた難民が多く、紛争のトラウマ、性暴力、家族が離散したことによる精神的ショックを受けているなど、カウンセリングなどのケアが必要な子どもが多くいます。教員自身がケアを必要とする生徒に対応できるよう、AARは教員を対象に、カウンセリング専門家によるトレーニングを行いましたが、カウンセリングを必要とする生徒が非常に多く、教員だけで対応するには限界があります。
また、中には教員に直接相談することを躊躇する生徒もいます。 そこで始まったのが、生徒が生徒に対して行う「ピアカウンセリング」。
生徒にカウンセリングの技術や基礎的な概念を教えることで、友達という身近な存在として、ケアを必要としているより多くの生徒を発見し、また、相談を受けてもらうことが期待されます。
9月に行った生徒への研修では、「ピアカウンセリングの技術を身に着け、悩んでいる人、困っている人の助けになりたい」という声が聞かれました。

大勢の生徒の前で話す男性

生徒向けのピアカウンセリング研修の様子。生徒たちは熱心に学んでくれました(2018年9月12日)

「解決策を一緒に探していきたい」

研修を受けた生徒がピアカウンセリングを行っていると聞き、学校を訪れ、話を聞きました。
マサさん(写真右)とブマさん(写真左)は、南スーダン出身です。二人とも2000年代にスーダンの内戦が激化したことに伴い、一度ウガンダに渡りましたが、2014年にカクマ難民キャンプに逃れてきました。
マサさんは、自分から立候補してカウンセラーになりました。父親は南スーダンに暮らし、自身はほかの家族とカクマで暮らしています。自ら辛い環境にいながら、なぜ、それでもカウンセラーとして、悩みを抱える生徒の話を聞き続けるのかを尋ねると「自分だけではなく、学校の中にも外にも、悩んでいる人が多くいる。その人たちと気持ちを共有し、解決策を一緒に探していきたい。」と答えてくれました。
ブマさんは、先生に話すのはとても緊張するので、まず、ピアカウンセラーと話したかったそうです。マサさんは、研修を受けた生徒の中でも落ち着いて話すことができるという評判を聞き、二人はその日初めて会いました。「すぐに解決するわけではない。でも、マサと話している時間はちょっとの間だけど悩み、苦しみを忘れられます」とブマさんは言います。

3人が椅子に腰をかけながら笑顔で話している"

ピアカウンセリングを行うカウンセラーのマサさん(右)と、相談を持ちかけたブマさん(左)、AARの後藤麗(中央)(2018年9月18日)

助け合いの気持ち。生徒たちの力を最大限に生かしたい

今回話を聞いたカウンセラーのマサさんは父親と離れて暮らし、自身も辛いことが多く、「人に寄り添い、話を聞くこと」がどれだけ大変なことか想像ができます。
しかし、マサさんとの会話から感じられたことは、助け合いの気持ちです。難民として生きる生徒たちにはそれぞれ悩みがあり、そのような生徒たちに自分の力を貸したいという意志が見えました。ピアカウンセラーの一人ひとりの自発的な意志で、この活動は成り立っています。今後もピアカウンセラーの生徒たちの力を最大限に生かし、一人でも多くの悩みを抱える生徒、地域の人々に貢献すべく、活動して参りたいと思います。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ケニア・カクマ事務所 後藤 麗

大学卒業後、英語教師として中学校に勤務。イギリスの大学院で教育・開発学を専攻した後、ガーナにおける教育支援プロジェクトでインターンを経験。2018年3月よりAARへ。岩手県出身 

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