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アフガニスタン:障がいのある子どもたちが学べる社会を

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AAR Japan[難民を助ける会]は、2014年からアフガニスタンのパルワーン県で障がいの有無に関わらず一緒に学べる「インクルーシブ教育」に力を入れています。2018年11月、アフガニスタン教育省一般教育局特別支援教育課長、パルワーン県の教育局で特別支援教育に関わる職員2名、現在の事業の対象校2校の校長先生、当会の現地職員2名が研修のために来日しました。研修の目的は日本のインクルーシブ教育の現状を学び、そこからアフガニスタンに活かせるものを持ち帰ることです。日本のインクルーシブ教育に精通する大阪経済大学客員研究員の一木玲子先生にアドバイザーとしてご指導いただきました。

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来日したアフガニスタンの一行。訪問先の品川区立台場小学校にて。写真右から、品川区教育委員会事務局教育総合センターの金房慎吾特別支援教育係長、品川区立台場小学校の中村太朗校長、同校の先生、パルワーン県教育局のソフィザダ・モハマドモルシッド氏、AARカブール事務所スタッフのヤマ・ハカミ、パルワーン県教育局のカシミ・アフマッド氏、サヤラン校のワファヤール・アブドゥルアリム校長、AARカブール事務所のタミム・シャムズ、アフガニスタン教育省のハキクッラ・アティク課長、サデキ校のサダト・イスマトラー校長(2018年11月28日)

0歳から100歳がともに過ごす

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「うーたん」の松永徹施設長(左から3人目)より話を伺うアフガニスタンからの一行(左から2人目はアドバイザーの一木玲子先生。左端は通訳者 2018年11月27日)

まず訪問したのは神奈川県茅ヶ崎市にある社会福祉法人翔の会が運営する「うーたん」です。「うーたん」は、保育園と児童発達支援センターがひとつになった保育・療育の場で、さまざまな個性のある子が一緒に、同じ屋根の下で時間を過ごしています。同じ建物内には重複障がいがある方の通所施設と特別養護老人ホームもあり、障がいの有無や世代を超えた人のつながりをもちながら、子どもを育んでいます。「うーたん」は、誰もが安心して暮らせるように「子どもたち一人ひとりをかけがえのない存在として大切にする」、「子どもたち一人ひとりの思いによりそう育ちの支援・保育を行う」を基本理念として掲げています。

保育園の瀬山さと子園長と松永徹施設長の案内で、施設を見学させていただきました。ただ、最初は私たちを見て泣き出してしまう子もいました。見たことのない大柄なアフガニスタン人が7人もいたので、びっくりしてしまったのも無理はありません。それでも園や施設で子どもたちの様子を熱心に見学したり、細かい道具の写真を撮っている姿を見て、次第に子どもたちも慣れてきた様子。アフガニスタン人の一行の中でも、特に子どもと関係を作るのが上手なのは校長先生でした。言葉は通じなくても、彼の穏やかな人柄を子どもたちは感じ取ったようでした。

その後、質疑応答の時間をいただきました。日本とアフガニスタンでは社会福祉や教育の制度が大きく異なるため、「保育所とは?」「高齢者が一人で暮らすとは?」などの質問がたくさん出ました。確かにピンと来ないかもしれませんが、いろいろと聞くことで一行は学びを深めたようです。

通級で学ぶ

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鏡を使って口の動かし方を練習する品川区台場小学校の「ことばときこえの教室」にて(2018年11月28日)

次に訪問させていただいたのが品川区立台場小学校。中村太朗校長による学校紹介の後、品川区教育委員会で特別支援教育を担当なさっている金房慎吾氏が、品川区の行うインクルーシブ教育についてご説明くださいました。一行は同校の「ことばときこえの教室」(通級指導学級:現在通うクラスに籍をおいたまま、週に1~2回、決められた曜日・時間に同教室に通い、症状の改善に向けて指導する)に興味津々です。同教室の責任者の先生は特別支援について大学で学ばれた方ですが、ほかの担当の先生方は全員が必ずしも言語聴覚士ではないことに一行は驚いていました。また、先生方がほかの学校の先生方とも交流し、自主的に自分の能力の向上に努めていることに共感するとともに、日本の先生方が常日ごろから子どもたちのことを考えていることに、大きな感銘を受けたようでした。

担当の先生が子どもたちの発話の練習のために鏡を使って口の動かし方を説明してくださると、アフガニスタンの先生は「うちでも同じようにやっている」と誇らしげ。しっかり口を動かせるようになることの重要性は言語が違っても一緒のようです。

「バイリンガルろう教育」

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少人数制のバイリンガルろう教育を行う明晴学園の授業の様子(同学園ホームページより)

最後に訪問させていただいたのが、品川区にある私立明晴学園。公立のろう学校では手話を教えることはありませんが、ここでは日本語と手話の2つの言語で教育がなされ、日本で唯一「バイリンガルろう教育」を行っている学校です。今回の一行の中の何名かは基本的な手話ができます。また、アフガニスタン教育省の課長は国際的な聴覚障がい児教育についても知見があります。教室で授業の様子を見学させていただくと、少人数制で手厚い教育が行われており、一行は羨ましそうです。聴覚障がいの当事者の方が先生をなさっているという点からも、指導体制の充実さを感じ、大きくうなずいていました。
一行が特に関心を持ったのが水道の蛇口の周囲が鏡張りになっているところ。後ろから手話で話しかけてもコミュニケーションがとれるので便利との説明に、自分たちの学校にも取り入れることを検討していました。また、チャイムが聞こえない子どもたちのためにランプを置いて開始・終了時間を知らせる点にも一行の関心が高まりました。
また、アドバイザーの一木先生から、明晴学園の設立には保護者の方々が大きな役割を果たしたことや、聴覚障がい当事者の意見を随所に取り入れていることを聞き、一行にとっては保護者や当事者をどのように巻き込んでいくかを考える大きな機会になりました。

最も大切な学び

最後に研修を振り返る時間を持った際、アフガニスタン教育省のアティク課長から「やはり中央の教育省、地方のパルワーン県、そして、実際に子どもたちを受け入れている学校が連携していくことが大切だと思う」という発言がありました。普段はどうしても建前だけになってしまいがちですが、今回の日本訪問で一行が一緒に学び濃密な時間を過ごしたことで、お互いの関係性が深まり、本音で話し合えるようになったようです。そして彼らの多くが、日本の先生方が一人ひとりの子どもたちに丁寧に向き合い、子どもの最善の利益のために尽くしている姿に感銘を受けたようです。

今回、多くの方々のご厚意もあり、障がい児の支援現場を視察することができました。どの現場でも皆さんはお忙しい中、たくさんの時間とエネルギーを割いて歓迎してくださいました。訪問を受け入れてくださった方々に改めて御礼を申し上げます。訪問した先々で、子どもの教育や支援に携わる方々のあたたかさを実感しました。もしかするとそれこそが、参加者の最も学んだ点かもしれません。

アフガニスタンの現状は厳しく、できることは限られているかもしれません。実は、今回の研修に参加した校長先生から「私の娘は知的障がいがあり、14歳になっても学校に通うことができていない」という話を伺いました。障がいがあるために子どもたちはさまざまな機会を奪われていますが、教育を受ける権利は誰にでも保障されるべきものです。

残念ながら、現在AARが支援しているパルワーン県の学校では、視覚・聴覚障がい児への支援はできていますが、知的障がい児への支援にまでは手が回っていません。それでも、今回の研修参加者が少しずつでも障がいのある子どもの学ぶ権利を保障するために尽力するはずです。そうすることで、訪問を受け入れてくださった方々への恩返しとなるよう、AARは今後も支援を続けてまいります。

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AARが支援するアフガニスタンの学校で手話を学ぶ子どもたち(2017年11月6日)

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 紺野 誠二

2000年4月から約10ヵ月イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月までAARにて地雷対策、啓発、緊急支援を担当。AAR離職後に社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。海外の障がい者支援、国内の社会福祉、子ども支援の国際協力NGOでの勤務を経て2018年2月に復帰。茨城県出身

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