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カンボジア:車いすが支える障がい者と地域のつながり

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AAR Japan[難民を助ける会]は、1992年以降、カンボジアで障がいのある方々への支援を行っています。1994年には車いす工房を設立し、カンボジア国内で車いす製造を担う数少ない工房の一つとして支援してきました。2006年に同工房が現地NGO(Association for Aid and Relief, Wheelchair for Development/以下AAR, WCD)として独立した後も、カンボジア人スタッフの主体性を尊重しながら運営をサポートしています。今回は、製造した車いすを届けた方々へのフォローアップの様子を、駐在員の向井郷美が報告します。

一人ひとりに合った細やかな支援

AAR, WCDは、プノンペン郊外の国立リハビリテーションセンターの敷地内に設立され、7名のスタッフが働いています。スタッフのなかには、1970年代の内戦中に地雷により障がいを負った人もいます。
同工房では、障がい者を支援するNGOや政府機関からの注文に応じた車いすの製造を行っています。また、貧困により補装具の入手が困難な方へ無料で配付するため、受注とは別に毎月約10台の車いすや手漕ぎ三輪車等を製造しています。一人ひとりの障がいの状態にあった車いすを用意するため、製造前は査定をしています。査定では、配付する方の家を訪問し、身体の大きさを確認したり、どこで補装具を使うかなど生活状況も調査しています。また、遠方に住む方にも確実に補装具を届け適切に活用してもらうため、配付後はフォローアップを行っています。

工房長のサー・ソパノさんがと補装具を受け取った男性が、テーブルをはさみ話している。

最近の補装具の使用状況を確認するAAR, WCD工房長のサー・ソパノさん(2019年8月23日)

車いすがもたらした変化

2019年8月23日、補装具を受け取って一定期間が経過した方のフォローアップに筆者も同行しました。今回は、プノンペンから車で約2時間、田園畑が広がるコンポスプー州に暮らす3名を訪問。最初に訪問したコン・バンさん(55歳)は、AAR, WCDが2016年に配付した車いすを、近所や家の中の移動で使っています。しかし、毎日の使用で車輪がねじれ、座席や背もたれ部分の布はかなり擦り切れていました。そこで、ドライバー兼製造スタッフのソン・サモンさんが、持参した車いすの部品と交換・修理しました。工房長のサー・ソパノさんは、車いすを受け取った方々と世間話をしながら、補装具の利用状況や生活状況を確認していきます。
コン・バンさんは小さい頃に患ったポリオの影響で片足に麻痺が残り、昔は足が恥ずかしく積極的に外に出ることができませんでした。AARは1993年に職業訓練校を設立し運営していましたが、その訓練校に通い技術を学んだことが、自信をつけるきっかけの一つになったそうです。また、AAR, WCDから10年以上にわたり支援を受けており、車いすを受け取ってからは活発に外出するようになりました。今は家庭を持ち、仕事にも積極的に取り組んでいます。

スタッフのソン・サモンさんが修理が必要な車いすを地面の上に置き、工具を左手に持ち修理を行う

壊れた車いすを手際よく修理するAAR,WCDスタッフのソン・サモンさん(2019年8月23日)

コン・バンさんは、障がい者用に改造されたバイクで近所を回って買い取った空のペットボトルを、業者に販売しています。近所の住民の中には、ペットボトルを他の買い手に販売せず、励ましになればと彼のために取っておく人もいます。ほかにも、自宅で自転車やバイクの修理も請け負っています。車いすは、動きやすさや移動手段の向上だけでなく、地域住民との交流や経済活動を支える重要な道具となっています。

1台の車いすがあり、布が擦り切れている。また車輪がゆがんでいる

車輪部分が壊れ、布が擦り切れたコン・バンさんの車いす(2019年8月23日)

1台の車いすが置かれている。背もたれや座る場所の布はきれいに貼りなおされ、車輪のゆがみもなくなった

新品のように綺麗に修理されました(2019年8月23日)

この日最後に訪問したチア・パラさん(40歳)は、11歳の頃、牛の世話をしている時に地雷の被害に遭いました。今は義足と杖、専用のバイク、主に屋内で使うための車いすが欠かせません。車いすは、AAR, WCDが2014年に提供したものを、大切に使っています。それらを駆使して、チア・パラさんは、家電製品の修理や電気製品の販売を手掛け、3人の子どもたちと母親の面倒を見ています。地域活動には、「時々、元気過ぎるぐらい積極的に参加しているよ」と答えてくれたチア・パラさんの周りには、親戚や近所の人たちが集まっていました。

チア・パラさんは右足に義足を装着し、いすに座っている。いすを丸く並べ、工場長のサー・ソパノさんとAARの向井が座り、話を聞いている

義足利用者のチア・パラさんに、生活や仕事の状況を確認するAAR, WCD工房長のサー・ソパノさんと駐在員の向井郷美(2019年8月23日)

AAR, WCDが担う役割

このように、AAR, WCDは補装具の使用状況や維持管理、使用に際して困難がないか等を確認するとともに、必要に応じて簡単な修理も行っています。さらに、障がい者の社会参加を後押しするため、就業や就学状況についても聞き取り、個々のニーズや希望に基づいて、情報提供や関連団体への照会も実施しています。

AAR,WCDの男性のスタッフが、車いすの部品を机に並べ組み立てている。左手には車輪を持っている

車いすの車輪部分を組み立てるAAR, WCDの製造スタッフ(2019年6月5日)

カンボジア政府は、これまでNGOが運営を担ってきた国内11ヵ所にある国立リハビリテーションセンターの政府移管を進めています。障がい者が各地域でリハビリを受けたり補装具を適切に使用できるよう、体制の整備に取り組んでいます。しかし、金銭的に貧しい障がい者は、各集合村(いくつかの村々で形成する地域)にある保健センターへ行くことすら困難な状況にあるなど、政府の支援体制はまだ十分ではありません。そのため、AAR, WCDが地域を訪れ、補装具の配付や修理を行う活動が必要とされています。
AARはAAR, WCDがこれからも多くの障がい者を支援していけるよう、さらにスタッフの能力強化や活動の持続性の向上を目指しサポートしていきます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

カンボジア事務所  向井 郷美(むかい さとみ)

2013年11月より東京事務局で主にカンボジア事業を担当し2015年3月よりカンボジア駐在。日本の中学校や中国の高校で教師として働く中で、教育を受けたくても受けられない子どもの問題に関心を持ち、大学院で国際協力について学ぶ。青森県出身

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