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パキスタン:「学校にトイレがあることは、私たちの夢なのです!」

2019年12月05日  パキスタン感染症対策
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AAR Japan[難民を助ける会]は、2016年2月から2019年9月まで、パキスタンのハイバルパフトゥンハー州ハリプール郡で、小学校を対象にした衛生事業を実施しました。事業では、衛生施設が不十分だった計37校で、井戸やトイレなどの必要な施設の建設、児童の衛生習慣を改善する啓発活動を行いました。開始当初から現場で活動に取り組んできたハリプール事務所のソビア・スルタンが、3年間を振り返ります。

女の子たちが手を洗っている

AARの支援でつくられた手洗い場で手を使う児童たち(2019年4月)

「子どもたちの悲惨な学校環境を改善したい」

私は2016年に、子どもたちを支える仕事がしたいと思ってAARで働き始めました。初めて活動地の女子小学校へ行った時のことは、今でも時々思い出します。その小学校は市街地から離れた農村部にあり、子どもたちは、とても悲惨な衛生環境で勉強していました。女子児童の一人が校内にトイレがないため、学校近くにある運河の岸辺で排泄をし、転がっている石でお尻を拭いているのだと教えてくれました。私は、悲しくて涙が出ました。自分自身、子どもの頃に同じような環境で学んだので、子どもたちがどんなにつらい気持ちでいるか、容易に想像できたのです。AARの職員として子どもたちのために働くチャンスを得たのだから、精いっぱい頑張り、学校環境を改善しようと心に決めました。

私の主な仕事は、対象校に通い、先生や保護者と話し合いながら学校の衛生環境や児童の衛生習慣を改善していくことでした。活動開始当初に各学校で開いた説明会では、先生や保護者、地域の代表者から「期待している」との声を頂き、身の引き締まる思いがしました。ある学校では児童の母親がこんなことを言っていました。「この学校には、私が在籍していた30年前からトイレがないのです。学校にトイレがあることは、私たちの夢なのです」。

数名の女性たちがテーブルを囲み話し合っている様子

先生や保護者に事業計画について説明するソビア・スルタン(2017年4月)

児童に正しい衛生知識を

AAR は各学校の施設の状況を調査し、トイレや手洗い場、井戸の建設や修繕を行うとともに、先生や保護者を対象に4日間の集中研修を行いました。子どもを見守る大人に衛生教育の大切さやその指導方法を学んでもらい、彼ら自身が児童の衛生習慣を改善できるようにするのが目的でした。

研修では、手洗いや歯磨きなどの衛生習慣を児童に身につけてもらうための、さまざまなコツを教えます。また、対象校の多くは女子小学校だったので、生理中の体調管理方法も研修内容に加えました。パキスタンでは、女性同士でも生理について話すことがタブー視されている地域が多くあり、ある先生が共有してくれたエピソードが印象に残っています。ある日、一人の女子児童が泣いていたので、その先生が理由を尋ねると、初潮を迎えたのに何も知識がないため、自分が病気になったのだと勘違いしていることが分かったそうです。しかし、その先生は、生理について話すことをためらったため、結局、女子児童に適切なアドバイスができなかったのだと悔やんでいました。

研修では、イスラム教の観点からも、子どもたちに生理についての正しい知識を教えることは大切であり、自然なプロセスなのだと伝えています。生理中のケアを誤れば、感染症の原因にもなりうることなどを教えることで、少しずつ、参加者の考えも変わってきているように感じます。今年9月、アフガニスタン難民居住地の対象校を訪問したところ、女子児童が、「初めて生理が来た時は驚いたけど、先生がどうすればよいのか教えてくれた」と言っていました。支援を行った学校で、児童に正しい衛生知識を提供できるようになったのだと知り、とても嬉しく思いました。

手洗い場で子どもたちと話すソビア・スルタン

手洗い場の全面には、児童が絵を描いたタイルを貼りました(中央がソビア・スルタン。2019年10月)

苦労のかいあって

活動中はたくさんの困難にも直面しました。道路状況の悪い山奥の学校も多くあったので、道中、車のタイヤがパンクしたり泥の中にはまったりして、何時間も動けなくなったことがありました。険しい谷底にある学校では、ロバを使って建設資材や機械の搬入をしたこともあります。また、トイレや手洗いには水が必要なため、各学校の校庭に井戸を掘ったのですが、掘削がうまくいかず、3回も掘り直してやっと水が出たこともありました。こうした学校では、先生が毎日5回行う礼拝の際に、水が出るようにと神様に祈ってくれていました。

対象校はこれまで、NGOなどの支援を受けたことのない学校がほとんどでした。そのため、初めて私たちが学校を訪問した際には、子どもたちはとてもシャイで、AARのスタッフと話をするのをとても恥ずかしがっていました。しかし、学校に通い、啓発活動や井戸、トイレ建設などを行ううちに、徐々に心を開いてくれるようになりました。
今年9月、久しぶりに訪れた学校で、一人の女の子と話しました。 5年生のアンバーシェ・ザディさんは、活動を始めた当初は2年生だったのですが、私のことを覚えていてくれていて、こんな風に話してくれました。

「学校に新しいトイレができたときはとても嬉しくて、学校に行くことが楽しみになりました。石けんで手をきちんと洗うことや、一回沸騰させた水を飲むことなどは、今では私が弟たちに教えているんです」。いろいろな苦労のかいがあって、今では、こんな風に、どの学校の児童も衛生習慣を身に着け、私たちを受け入れてくれることを、とても嬉しく思っています。

急な山の斜面を歩く子どもたち

谷底にある学校(右)に通う子どもたち。この学校にはロバを使って資器材を運びました(2018年9月17日)

機材を使った井戸を掘っている作業員たち

井戸掘削の様子。きちんと水が出るだろうかと、いつもドキドキしながら見守りました(2019年3月)

今後は障がいのある子どもたちの教育支援を

私にとって、3年間の活動を通じて地元にある37もの学校の改善に携わることができたのは、本当に幸せなことでした。支えてくださった日本の方々に感謝いたします。今後、AARはハリプール郡内の公立小学校2校を中心に、障がいのある子どもと障がいのない子どもが一緒に学ぶインクルーシブ教育の推進に取り組みます。ハリプール郡の子どもたちや地域社会を良くするために、これからも頑張るので応援をよろしくお願いします。

パンフレットを手にした子どもたちに囲まれるソビア

子どもたちに、手洗いの手順などを記載したパンフレットを配りました(2019年10月)

この活動は、皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力、 TOTO水環境基金、連合・愛のカンパの助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

パキスタン・ハリプール事務所 ソビア・スルタン

大学卒業後、パキスタンのNGOに勤務し、ハリプール郡で、14年にわたって母子保健や衛生に関する事業に従事。その後、2016年にAARへ

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