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シリア:爆発物から身を守る-リスク回避教育

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砲撃によって崩壊し、放置された建物の前で少年が佇んでいる

避難先の中には、過去に砲撃された建物が放置されている場所もあります。(2020年2月6日)写真はイメージ 

2011年3月にシリア危機が勃発してから今年で10年目に入ります。紛争は終息するどころか戦闘が激化し、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、昨年12月から今年2月下旬までに新たに94万人以上の市民が避難を余儀なくされ、国内避難民は計610万人に上っています
空爆や砲撃により、市民に犠牲者が出るだけではなく、土地には多くの不発弾が残されます。そして、10年が経つ今も不発弾や地雷など爆発物の除去が進んでいない地域があります。 AAR Japan [難民を助ける会]は、現地協力団体を通じて、2015年に爆発物の危険から身を守るためのリスク回避教育を開始し、これまでに6万6,200人以上が講習会に参加しました。シリア国内の情勢と活動の状況について報告します。 

戦闘を逃れてもなお避難先で直面するリスク

昨年12月以降の度重なる空爆や砲撃で、毎日数千人以上の規模で、人々は家を追われています。しかし、空爆などから逃れられても、避難先の地域が安全とは言い切れません。過去の戦闘で破壊された建物や道路、農地、オリーブ畑に爆発物が残されている場合が少なくないためです。市内にある建物や避難してきた方々に用意されたテントは  定員を超えており、車内や爆発物があるかもしれない農地 などにとどまらざるを得ない方々もいます。
国内避難民は、新しい土地の状況に詳しくないため、子どもが遊んでいたり人々の移動 中などに、爆発物があることを知らずに危険な場所に足を踏み入れてしまい、被害に遭う可能性があります。また、爆発物の危険性を知らない場合もあります。加えて、戦闘の前線の変化に伴い、物理的・治安上の理由などから人々が密集し始めているトルコとの国境近くにも、地雷が埋められています。 

被害に遭う前に適切な情報を届ける

AARは学校や農家、がれき撤去などに従事する労働者の仕事現場を周って、リスク回避教育を実施しています。  爆発物はどのようなものか、シリア国内で使われている地雷や不発弾の写真を見せたり、地雷原に入ってしまったときにとるべき行動を、30分から45分程度で説明しています。

不発弾の危険性の啓発ポスターを見せながら、男性スタッフが前で説明をしているのを数人の男性が地面に座りながら聞いている

シリアでは、不発弾などの爆発物を解体して転売するために、  自ら砲撃があった土地に行って不発弾を拾う危険な行動も報告されています。(2019年12月4日)

不発弾の危険性の啓発ポスターを見せながら、女性スタッフが説明をしているのを、女子児童数人が地面に並んで座って説明を聞いている

小学校の校庭で、女子児童たちは協力団体スタッフの爆発物に関する説明に耳を傾けています。(2019年12月16日)

手榴弾をテントの中で保管―爆発物の危険を伝える重要性

2019年10月、女性の参加者の1人、ファーティマさん(仮名・40歳)は、講習会に参加した際、協力団体のスタッフにこう話しました。「7歳の息子がある日、避難先のキャンプの近くにある、今は使われていない軍事基地の近くから手榴弾を持ち帰ってきました。どれだけ危険なものか分からなかったので、箱の中に入れてテント内に保管していました」。それを聞いたスタッフは、直ちにファーティマさんに被害に遭うかもしれない危険性を伝えました。講習会では、爆発物を見つけたときには、触らないこと、近づかないこと、専門家に連絡するといった内容を伝えています。

今年1月、スタッフが再び近況を聞くと、「講習会に参加し、手榴弾がいつ爆発してもおかしくないし、怪我をしたり死に至ることもあると知りました。テントに帰ってからすぐ息子に"危険だから、軍事基地や過去に砲撃された地域に行ってはいけない。不審な物にも近づいてはいけない"と注意しました。そしてテントに置いていた手榴弾は、専門家に処理してもらいました。リスク回避教育のおかげで私自身と家族の命を守ることができたと感じています」

屋内でインタビューに応じる、頭をスカーフで覆った女性の写真

インタビューで自身の経験を話すファーティマさん。(2020年1月9日)

犠牲者を生まないためにできることを

シリア国内の戦闘状況の悪化により、特に今年2月に入ってからは、AARの事業に関わるスタッフや、ほかのN G Oのスタッフとその家族も避難を強いられ、事業を中断せざるを得ない日が生じています。
現地では、食糧や水、テントなど物資の緊急支援が声高に求められ、リスク回避教育のような事故の予防に重点を置いた取り組みの優先度が下がってしまうときもあります。しかし、爆発物などのリスクが生活圏内に存在している限り、国内にとどまらざるを得ない人々の暮らしを支えるソフト面の活動も軽んじられるべきではありません。事故に遭う前に適切な情報を届けることが重要だと感じています。

爆発物による事故では、1件あたり平均で1.5人の死者と2人の負傷者が発生し、被害者の66%に生涯にわたる障がいが残るとの統計 (注)もあります。ひとたび事故が起きればその影響は甚大です。犠牲者をこれ以上生まないためにも、AARは今後もリスク回避教育を続けていきます。皆さまのご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
(注)英文:Humanitarian Needs Overview 2019, March 2019 別ウィンドウで開きます

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