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地雷対策、地域ごとの取り組み:地雷対策に関する国連主催の国際会議参加報告②

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2020年2月11日から14日まで、スイス・ジュネーブにある国連欧州本部で開催された、「国際地雷対策プログラム責任者会合」("23rd International Meeting of National Mine Action Programme Directors and UN Advisers")に参加した、AAR Japan[難民を助ける会]東京事務局の紺野誠二からの報告第二回(全二回)です。

報告第一回はこちら

会議では、セッション、サイドイベントいずれでも、地域ごとの地雷対策がテーマに取り上げられました。同じ地域の国の間で知見を共有し、学び合うことを目的に、報告や議論が行われました。

東南アジア地域の地雷対策

まず、AARも複数の活動地を持つ東南アジアおよび大洋州のセッションに参加しました。東南アジアでは、ASEANを中心に域内の地雷対策が行われています。ASEAN加盟国ではAARも活動するカンボジア、ラオス、ミャンマーに加え、タイ、べトナムとその半数で地雷や不発弾の汚染が深刻です。

上記5ヵ国の地雷状況 Landmine monitor 2019より

カンボジアラオスミャンマータイベトナム
オタワ条約 締約国 未締結国 未締結国 締約国 未締結国
2017年中に処理した地雷汚染面積 ・26.11km²が汚染の脅威がないと判断された
・27.68km²が完全に除去された
・対人地雷5,780個が除去された
・不明
(計画的な地雷除去活動は行われていない)
・不明
(2018、2019年に新たな地雷が埋設されている)
・26.8km²が汚染の脅威がないと判断された
・0.43km²が完全に除去された
・対人地雷10,510個、対戦車地雷212個が処理された。125個の不発弾が除去された
・不明
・一部情報によれば34個の対人地雷を除去

残っている地雷などの汚染面積(2017年末時点)

・941km²(国土面積の約0.5%)
(国土面積181,000 km²)
・クラスター爆弾による汚染面積は不明
・ERW(爆発性戦争残存物)による汚染面積は379km²

・不明
(国土面積240,000 km²)
・クラスター爆弾による汚染面積は少なく見ても500km²
・不明
(国土面積680,000 km²)
・391.38km²(国土面積の約0.07%)
(国土面積514,000 km²)
・ただしERWによる汚染面積は不明

・不明
(国土面積329,241km²)

報告された被害者数(2017年) 58人 41人 430人(2018年) 11人 14人
被害者数の内訳 ・対人地雷:19人
・対戦車地雷:3人
・ERW:36人
・ERW:9人
・クラスター爆弾の子爆弾:32人


・対人地雷/即席対人地雷:141人
・対戦車地雷:1人
・ERW:72人
・詳細不明な地雷又はERW:216
・詳細不明な地雷:5人
・即席地雷:2人
・不明:4人
・ERW:13人
・クラスター爆弾の子爆弾:1人

実はこの地域は地雷分野では「南南協力」(途上国同士での協力のこと。発展した技術や知識を得ている国が、別の途上国の支援を行うことをいいます。)の先進的な取り組みが行われています。特に、カンボジアがラオスをはじめとする他国に対するモデルとなっています。日本はJICA(国際協力機構)を中心に、東南アジア地域内での南南協力の取り組みの旗振り役を務めています。

東南アジアの取り組みでもう一点特筆すべきことは、ASEAN地域地雷対策センター(ASEAN Regional Mine Action Center、ARMAC)という常設の機関が設置されていることです。本部は地域の中心都市バンコクではなく、地雷対策の進むカンボジアのプノンペンにあります。この組織の主な役割は3つあります。地雷や爆発性戦争残存物(Explosive remnants of war、以下ERW)の回避教育を推進すること、被害者の医療・リハビリなどの支援を促進すること、ERW対策を進めたいと考えているASEAN加盟国に知見を共有していくことです。

今回のセッションではカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム各国からの経験と課題が報告されました。第一の課題は、資金です。地雷対策には多額の資金が必要になりますが、現状では、必ずしも国際的な支援が十分行き渡っているとはいえません
第二に、地雷除去活動と地雷被害者支援の連携が難しいという点です。地雷除去活動を行うARMACはASEANの中でも政治面、安全保障面を取り扱う組織の下に設置されています。他方、被害者の支援は社会・文化面を扱う組織の下に置かれています。このため、本来は情報共有や連が必要にも関わらず、それぞれの取り組みが縦割りで行われがちになっています。

セッション後、ARMACとタイ地雷対策センターの職員の方々と話しをする時間がありました。私が「この前NHKの番組に出演したときにタイの地雷の除去の様子を拝見しました」とお伝えすると、「あの取材は日本で放送されたのですね」と喜んでくれました。当会が、アフガニスタンやシリア国内で回避教育を行っていることを紹介すると、「ぜひとも回避教育で力を貸してほしい」と言われ、日本に対する期待の強さを強く感じました。ARMACの方からも「今度会議を開催する際には、(ASEAN加盟国ではないが日本からも)ぜひ参加してほしい」と声をかけていただきました。AARの東南アジアでの現在の活動は、カンボジア、ラオス、ミャンマーでの障がい者支援ですが、中には地雷・不発弾被害者の方もおられます。被害者支援の面でも協力できることがあれば検討していきたいと思いました。

イラン、アフガニスタンの地雷対策

イラン、アフガニスタンの地雷状況 Landmine monitor 2019より

イランアフガニスタン
オタワ条約 未締結国 締約国
2017年中に処理した地雷汚染面積 ・不明 ・2.4km²が汚染の脅威がないと判断された
・40.04kkm²が完全に除去された
・対人地雷14,629個が除去された
残っている地雷等の汚染面積(2017年末時点) ・クラスター爆弾およびERWによる汚染面積も合わせて不明
(国土面積 1,648,195km²)
・522 km²(ただし報告されていない汚染地域も相当範囲あるとみられる)
(国土面積652,225km²)
・クラスター爆弾による汚染面積は6.51km²
・ERWによる汚染面積は724km²
被害者数(2017年) 84人 2,300人
被害者の原因の内訳 ・対戦車地雷:12人
・ERW:16人
・不明:56
・対人地雷:62人
・対戦車地雷:21
・ERW:1,124人
・即席地雷(IED含む):1,093人

イランの地雷対策

オタワ条約に参加していない国が自国の活動を国際会議の場で広く報告するというのは、多国間外交が行われる国連という場だからこそできるものです。
イラン国内で対人地雷が使用されたのはイラン・イラク戦争(1980年~1988年)にさかのぼります。その際に使用された地雷の除去は未だに終わっていません。イランの代表団によれば、イラン・イラク戦争以前、イランは「地雷に汚染されていない国」だったといいます。しかし、地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)が毎年出している、年間の地雷の使用状況や被害者数、除去の状況などをまとめた報告書「Landmine Monitor 2019」によると、イランでは1988 年から2017年に9,925人が死傷していると報告されています。国連の報告では2006年時点で10,000人となっています。2017年の死傷者数は84人。そのうち民間人は48人。除去要員の被害が21人と多く、軍人の被害も9人です。地雷被害の多いイメージのあるカンボジアでは、2017年の死傷者数は58人。それを上回る被害が出ているのです。

壇上に3名のスピーカーが並びスクリーンにイランのプレゼンスライドの表紙が映されている。地雷除去員の写真

イランの報告の様子

イランでは、イラン赤新月社が赤十字国際委員会(ICRC)の技術的支援を受けて、地雷回避教育を行っています。特に興味深かったのは、教材としてアニメーションを使用していることでした。今回紹介されたものは、畑で見つかった不発弾を自力で取り除こうとする大人を、回避教育を受けている子どもが注意するという内容で、絵柄もかわいらしく親しみやすいものでした。AARではアフガニスタンでの回避教育で短編映画を制作していますが、子どもにとって分かりやすく、楽しく学べるアニメーションも導入してみたいと感じました。

AARが地雷対策を行うアフガニスタンは、イランと国境を接しており、歴史的にも関係が深い国です。イランには約100万人ともいわれるアフガニスタンからの難民が生活しており、この人々への地雷回避教育も課題だと感じていました。当会としても20年以上にわたりアフガニスタンで活動していることから、他人事ではありません。この難民の問題に関しては、報告の中ですでに回避教育が行われていると聞くことができました。

アフガニスタンの地雷対策

アフガニスタンに対しては、現在外務省より退避勧告が出されており、日本人が渡航することは実質的に不可能になっています。当会も1999年からアフガニスタンで活動を開始し、2002年から2008年11月まで首都カブールに日本人が駐在していましたが、以降はカブール事務所に現地職員のみを残し、隣国パキスタンに駐在するアフガニスタン事業担当職員や東京事務所と連携して活動を行っています。
今回のような国際会議は、直接現場に足を運べない中、アフガニスタンの地雷対策関係者から直接話を聞く数少ない貴重な機会です。私自身が初めて会う方でも、「AARの職員です」と名乗るとすぐに、「あのAARですね」と分かってくれる方が多くおられます。カブール事務所の現地職員が一緒に活動している関係機関も多く、AARのこれまでの活動が根付いていることや、現地職員の日々の努力を実感することができました。

アフガニスタンの地雷対策センター担当者からの報告では、IED(即席爆発装置)対策の現状や、被害者のデータの蓄積について報告が行われました。アフガニスタンでは地雷被害者は減少する一方で、非政府武装勢力によりIEDが広く使用され、被害者が増加しています。IEDの除去にはより精度の高い探知機が必要なこと、大型の重機の使用が有効であることなどが報告されました。

学びが多かったのは、被害者データの分析と活用方法です。アフガニスタンでは性別、年齢層(大人か子どもかなど)によって、被害に遭った爆発物の種類(地雷、IED、ERWなど)に明確な違いが見られます。
最も被害者数が多いのは男の子です。男の子の被害で多いのは不発弾によるものです。この理由として報告では貧困が指摘されていました。鉄くずを拾い集めて売ればいくらかの収入になるため、危険だからと法的に規制しても、日々の糧に困っていれば集めに行ってしまう人々はいます。
今後収集していくデータには、人々が、どのような方法であれば地雷の事故を防ぐための情報を入手できるのかなども加味されたデータベースが必要だと感じました。そのようなデータベースがあれば、当会でもさらに対象に合わせた内容で回避教育を届けることができるのではないかと思いました。

今回の会議を振り返って

今回の会議であらためて感じたことは4点あります。
第一に、地雷対策を考えるとき、除去分野が中心になりがちであるという課題です。
地雷対策には、除去、回避教育、被害者支援の3つの面が必要ですが、除去は特に費用がかかること、帰還を促すにもまず除去が前提であるなどの理由で、注目も予算も多く集まります。回避教育については、子どもの保護という視点から重視する議論はなされていましたが、やはりまだまだ十分ではないと感じます。被害者支援はさらに注目度が低く、取り組みも全く足りていません。被害者支援は障がい者支援の一部であるため、福祉や教育、就労支援の分野の活動として考えられがちです。一方で除去は軍事的、政治的観点から主導されることが多いため、被害当事者の声が反映されにくく、地雷対策センターの中でもあまり重きを置かれない傾向を感じます。この点については会議の最後に、UNMASのマカイユ局長が大熱弁をふるい指摘していました。より一層、回避教育や被害者の支援に力を入れていく必要性があります。

第二に、日本への期待の大きさです。地雷対策の多くは欧米、特にヨーロッパの声が大きい分野です。活動している団体もヨーロッパに拠点を置く団体が非常に多くはありますが、UNMASや海外NGO職員の参加者の中にも日本人職員の方が何名もおられました。参加国や地雷の汚染国からは日本の団体としてAARに多くを期待されているな、と感じました。

第三に、日本のNGOとして、治安上の理由で現場、特に紛争の続く地域に行くことができていないということのもどかしさも感じました。会議で他国からの参加者と話をしていると、必ず最後に「現場に来てよ、現場の調整会議でやりとりしようよ」、「うちの国で活動してよ」と声をかけられます。それが実際には簡単にできないことが心苦しいですし、日本のNGOの経験としてもったいないとも感じています。現場を直接見ることができないことで、活動の幅も、専門的な情報も限られてきてしまいます。職員の安全の確保と、行いたい支援活動の間で常に悩みながら、AARとしてはできる限りの支援を考えていますが、とても悩ましい状況です。

最後に、私が地雷対策に携わってきた20年という月日の流れの早さを感じました。
今回の会議に参加し、20年前と比べて地雷対策のために様々な先端技術が導入されたり、地雷被害や地雷原についてのデータベースが整備されつつあり、情報の集約化が進みました。作業も効率的かつ効果的になりました。また、以前にはなかった東南アジア地域での地雷対策機関も設置され、地域内での南南協力も進められています。私はこれまでAARや地雷除去団体で地雷の問題に取り組んできましたが、日々現場での小さな活動を積み重ねている間に、国際社会全体では対策が大きく進歩していたと改めて感じました。
他方、20年前と比べ、特に最近の7-8年で大きく変わったのはIEDの被害の急増です。これからIED対策がより重要性を帯びてくることは間違いありません。

地雷問題は一朝一夕には解決しません。20年経って良い方向に進んでいる面もありますし、そうでないように感じる面もあります。今年から20年後の2040年に、「今はもうなくなったけれど、そういえば昔は地雷の問題があったな」と懐かしく思える世界を目指していきたいとより強く感じました。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 紺野 誠二(こんの せいじ)

2000年4月から約10ヵ月イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月までAARにて地雷対策、啓発、緊急支援を担当。AAR離職後に社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。海外の障がい者支援、国内の社会福祉、子ども支援の国際協力NGOでの勤務を経て2018年2月に復帰。茨城県出身。

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