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地域で共に助け合うために... サイクロン被災地で障害者支援を行っています

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難民を助ける会では、2008年5月2日にミャンマー(ビルマ)を襲った大型サイクロンの被災者への支援を行っています。サイクロン発生から4ヵ月が経過した9月からは、被災地での保健医療・栄養改善・障害者支援の活動を行っています。

今回は、巡回支援チームの活動の中の、障害者支援活動について、報告します。

「巡回支援チーム」が交通アクセスの悪い被災地で活動

視覚障害者に白杖を提供

視覚障害者に白杖を配布しました

難民を助ける会では、サイクロン被災地の復興を支援するため、昨年9月からは、食料などの支援物資の配布に加え、保健医療・栄養改善・障害者支援の活動を行っています。

この活動では、保健医療や障害者支援、心のケアなど、様々な専門知識を持つスタッフを1つの巡回支援チームにまとめ、そのチームが被災地の村を回りながら、多面的な支援活動を行っています。

船やボートを使わなければ行くことのできないような交通アクセスの悪い被災地を中心に、12月末までに、106村を巡回。1ヵ所に2週間程度滞在して支援活動を行いました。

5種類の活動で多面的な障害者支援活動を

災害時に加えて災害後も、高齢者や障害者などの災害弱者は、地域の皆で助け合うことが必要です。難民を助ける会は、サイクロンの被災者支援を行う中で、主に5つの障害者支援活動を行っています。

1. 障害者の所在の確認

「障害があるのは前世の報い」といった障害者への根強い差別や偏見が残るミャンマーでは、「この村に障害者はいますか」と聞いても、「障害者は一人もいません」という言葉が返ってきます。そこで、巡回支援チームの保険医療スタッフは、一世帯ずつ個別訪問しながら、どこの家庭にどのような障害を持つ人が暮らしているのか確認しています。

2. リハビリ訓練

被災地では、病院まで片道数日かかる場合もあり、日本のように気軽に病院に通ってリハビリを受けることが難しい状況にあります。また、「リハビリ訓練をすれば、症状が改善する」ということを知らず、何もしないまま諦めている障害者や家族も多いのです。

そのため、巡回保健医療チーム内の理学療法士が、障害者の家族や近隣の人々へ、自宅でも可能なリハビリの方法を教えています。

3. 車イスや松葉杖などの補助具の提供

「1」 で得られた情報をもとに、理学療法士が障害者のいる世帯を訪問。体のサイズや、障害の程度などを査定して、車イス、義肢装具、松葉杖、白杖などの補助具を提供しています。

補助具がないため、家の中に閉じこもりきりになっている障害者も多く、初めて使う車イスや義足に、感激して涙をこぼす方もいました。

4. 障害者理解のためのワークショップ開催

障害者理解ワークショップの様子

ワークショップの様子。いつも多くの参加者で賑わいます。

ミャンマーでは、新聞やテレビなどで障害を持つ人たちの生活などを取り上げることが少ないため、特に農村部では、障害と言っても具体的にどのような種類があるのか、といった基本的な情報すら持たない人が多くいます。そのため、村をまわって障害理解促進ワークショップを開催しています。

このワークショップでは、(1)障害の定義、(2)障害者の権利、(3)家族や地域の理解・応援の大切さ、(4)教育や仕事の機会の重要さ(障害があっても機会や環境が整えばできる)等を、難民を助ける会が制作した写真入りテキストを参照しながらQ&A形式で考えています。

ワークショップの参加者からは、次のような感想が聞かれました。

「以前は障害について何も分かりませんでしたが、ワークショップを通じて理解が深まり、障害者にどのように接したらよいかも分かりました。」

「以前は障害者を避けて生活していましたが、認識が変わりました。これからは気がついたらお手伝いしたいと思っています。」

「例えば難民を助ける会が運営している職業訓練校での訓練を通じて、障害があってもなくても同じように生活ができるということがよく分かりました。」

5. 医療機関の情報提供

特別な手術や治療の必要な方々へ、適切な病院の情報を提供します。病院で治療を受けるお金が用意できない人には、被災地で一緒に活動を行っているミャンマーの障害者支援団体が、病院までの移動や医療費を支援しています。

 

2008年9月1日~12月31日の4ヵ月間で、106の村で11,259名の方々が障害理解促進ワークショップに参加し、エヤワディ・ヤンゴン管区に住みサイクロンに被災した障害者372名が診察を受け、内254名が補助具を受けとることができました。

このような支援活動は、多くの方からのあたたかいご寄付に加え、ジャパン・プラットフォーム(JPF)、全国老人クラブ連合会、障害者インターナショナル(DPI)、全国自立生活センター協議会(JIL)、ゴールドマン・サックス証券株式会社などの企業や団体からのご支援により成り立っています。

ご支援くださった皆さまへ重ねて御礼申し上げます。難民を助ける会は、これからも、サイクロンの被災者と障害者を支援していきます。今後もあたたかいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ミャンマー事務所 野際 紗綾子

2005年4月より東京事務所スタッフ。アジア事業を担当。ミャンマーサイクロン被害の発生直後から、被災者支援活動を担当している。(東京都出身)

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