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「勉強がしたい!」エイズに負けず前向きに生きるザンビアの子どもたち

2010年11月12日  ザンビア感染症対策
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子どもたちが学校に通えるように

ローマ・ガールズ学校の子どもたちとザンビア駐在員・山井美香(中央)、事務局の加藤亜季子(左隣り)

元気いっぱいのローマ・ガールズ学校の子どもたちと(中央はザンビア駐在員の山井美香。左隣りは事務局の加藤亜季子)

アフリカ南部にあるザンビア共和国。HIV陽性者は約110万人(国連合同エイズ計画の2009年統計)にものぼり、成人の約14.3%(7人に1人)に達しています。そして、エイズにより両親または片親を亡くしたエイズ遺児は推定で約60万人にものぼります。
ザンビアの国内総生産(GDP)は約174億USドル(約1兆4,347億円。2009年推計値)で日本の0.4%ほどしかありません。ただでさえ経済的に苦しいこの国で、働き盛りの親を失った子どもたち。彼らは日々の食事にも事欠くようになり、学校に通えない子が多いのです。
教育を受けられないと将来の仕事の選択肢が減るだけでなく、HIV(エイズウィルス)/エイズに関する知識を得る機会を失い、将来HIVに感染する危険が、教育を受けた子どもに比べて高くなると言われています。
そこで難民を助ける会は、2004年から首都ルサカ市のンゴンベ地区において、エイズ遺児や、貧しくて学校に通えない子どもたちのために、制服(ザンビアでは通学に必須)代や学用品代などを通じた就学支援を行っています。
現在、難民を助ける会が支援するエイズ遺児は57人。みんな、両親もしくは片親を失った悲しみを抱えつつ、将来の夢に向けて勉強に励んでいます。

「将来は弁護士になって、困っている人を助けたい」-バイオレットさん(12歳)

難民を助ける会が支援するバイオレットさん(12歳)

バイオレットさん。クラスで1番の成績表を手に

バイオレットさん(12歳)は、カトリック系公立校のローマ・ガールズ学校に通う6年生。成績が良く、学級委員を務めるバイオレットさんは1998年にお父さんを、2004年にお母さんを亡くし、現在はおばあさんと暮らしています。おばあさんに定期的な収入がないことから、難民を助ける会の支援を受けています。

全校生徒数は約320人、バイオレットさんを含め、難民を助ける会が支援する子どもたち9名が同校で勉強しています。
公立校にはめずらしく社会科見学の授業があり、職場訪問もします。子どもたちは色々な職業を見て、将来どんな仕事につきたいかをしっかり考えています。バイオレットさんの将来の夢は弁護士。「弁護士になって、困っている人を救いたい」と、笑顔で語ってくれました。

3週間前に父親を亡くした悲しみを乗り越えて-サラさん(14歳)

授業中、一生懸命ノートをとるサラさん

勉強に励むサラさん(手前)。好きな科目は算数と英語。

ザンビアの子どもたちは写真が大好き。デジタルカメラで撮った画像を見せると大喜びします。しかし、その中で一人、さびしそうな顔つきで笑わない子がいました。
2000年にお母さんを、3週間前にお父さんをエイズで亡くしたサラさん(14歳・6年生)です。サラさんは勉強が好きで、お父さんが病気のときでも看病をしながら一生懸命勉強していました。両親を失った今、親戚と暮らし、ザンビアの主食であるシマ(とうもろこしの粉で作る、肉まんの皮ような食感の食べ物)をつくるなど家事を手伝うかたわら、勉強を続けています。将来の夢は「高校の英語の先生」。ぜひ叶えてほしいです。

「毎日2時間勉強するよ」-ベリーくん(15歳)

両親を亡くしたベリーくん(左)。一緒に住むおじいさんの家の前で

「ここが、本を読むときのお気に入りの場所」というベリーくん(左)。家の前で、彼を支える祖父と

ベリーくん(15歳)は、自宅近くのフライング・エンジェルズ学校に通っています。この学校は、貧しい人々にも教育の機会を提供するために、牧師によって1999年に設立された学校で、学費は無料ですが教科書などは自分で購入しなければなりません。敷地内には、教会のほか児童養護学校、診療所、ホスピスが併設されています。全校生徒数は約452人、難民を助ける会が支援する19名が同校で勉強しています。
はにかんだ人懐っこい笑顔が印象的なベリーくんは6年生。2001年にお父さんを亡くし、2007年には長い闘病生活の末、お母さんを亡くしました。今はおじいさんとおばあさんと一緒に暮らしています。「好きな科目は社会と英語」と話すベリーくんは、「将来はテレビ番組で政治や経済を語るジャーナリストになりたい」と、目を輝かせて語ってくれました。常に成績はトップクラスのベリーくん。将来の夢をかなえるためには、毎日2時間の勉強では足りないのでは、と不安に思っています。一番好きな食べ物はシマ。おばあさんがつくってくれるシマが一番好きなんだそうです。

過酷な状況でも前向きに生きる子どもたちに、逆に私が元気をもらいました。ザンビアの子どもたちがそれぞれの夢に近づけるよう、難民を助ける会はこれからも支援を続けます。

注:上記の3人が同じ6年生でも年齢に差があるのは、彼らが学校に通えるようになった時期が、それぞれ異なるためです。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 加藤 亜季子

2010年4月より東京事務局で主にハイチ事業とザンビア事業を担当。大学卒業後、民間企業に勤務。英国の大学院で社会開発を学び、政府系研究機関、在外公館勤務を経て難民を助ける会へ。(東京都出身)

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