活動ニュース

ザンビア:エイズに関する啓発活動に取り組む若者を支援しています

2012年08月10日  ザンビア感染症対策
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アフリカ南部にあるザンビア共和国では、成人人口の13.5%がHIV陽性者で、年間45,000人もがエイズで命を落とすなど、HIV/エイズが深刻な社会問題となっています。HIVの感染予防には、正しい知識の普及が重要です。AARはHIV/エイズ対策の一環として、ザンビアでエイズに関する啓発活動に取り組む若者を支援しています。

課外活動でエイズ対策に取り組む生徒たちを支援

2011年12月1日にエイズ対策クラブが行った啓発イベントの様子

2011年12月1日のエイズデーには、チパパ地域のエイズ対策クラブが合同で啓発イベントを行いました

ザンビアでは、政府の方針で各学校にエイズ対策クラブが設けられています。クラブの生徒たちは自主的にHIV/エイズについて学び、周囲の人への啓発活動を行っています。しかし、クラブの生徒自身も正しい知識を持っていなかったり、啓発の手法が分からないなどが原因で、あまり活動できていないクラブが多くありました。

AARが首都近郊のチパパ地域で支援活動を開始したのは2009年。当初は同地域の学校でも、クラブの活動はほとんど行われていませんでした。そこでAARは、まずクラブの生徒にHIV/エイズに関する知識を伝え、彼らが他の人たちにその知識を伝達していく方法を考えてもらいました。その上で、活動を円滑に進めるにあたっての「計画・実行・振り返り」という考え方や、上手なプレゼンテーションの方法、イベント運営のノウハウなど、効果的な啓発活動を行うための具体的な方法を丁寧に指導しました。

その結果、クラブの生徒たちの問題意識もより高まり、地域住民の家を一軒ずつ訪ねて話をしたり、この問題をテーマにしたディベート大会を開催したりと、意欲的に活動を行うようになりました。クラブの活動が軌道に乗った現在、AARは、低学年リーダーの育成や地域住民グループとの連携強化など、新しい取り組みを提案しながら、生徒たちが自力で活動を続けられるよう支援しています。

「HIV検査を促進する日」にあわせて啓発イベントの開催を支援しました

ザンビアでは、毎年6月30日はHIV検査を促進するための日と定められており、看護師などによるカウンセリング付きの簡易HIV検査を受けることが推奨されています。しかし、このような日が定められていても検査を受けている人はまだ少なく、それがHIVが蔓延している原因の一つともなっています。

戸別訪問を行うエイズ対策クラブのメンバー

「感染の蔓延を防ぐには、まず自分の感染の有無を知ることが大事」と、戸別訪問でHIV検査を勧めます。黄色いTシャツを着ているのがエイズ対策クラブのメンバー(2012年6月23日)

チパパ地域にあるルカマンタノ校のエイズ対策クラブでは、この6月30日にあわせて地域で啓発イベントを開催することにしました。イベントは、同地域でエイズ問題に取り組んでいる訪問看護グループとの共催です。

イベントの1週間前には、クラブの生徒が開催地周辺の住民を戸別訪問。生徒たちは皆、事前にAARからHIV検査についての知識や戸別訪問の方法の講習を受けています。住民達に、HIV検査について知っているか、検査の経験はあるかなどを質問しながら、イベントで簡易HIV検査が受けられることを宣伝しました。

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イベント当日、希望者には避妊具やHIV/エイズの啓発冊子も配りました(2012年6月23日)

イベント当日は、地元の協力団体がHIV検査用のテントを設置しました。クラブの生徒は、テントの周りで歌や踊りを披露し、HIV検査の受検を道行く人に呼び掛けました。事前の宣伝効果もあり、予想を上回る93人が検査を受けました。さらに、訪問看護グループのメンバーによる売春問題を扱った寸劇、エイズ対策クラブの生徒による検査を勧める内容の詩の暗唱などを通じて、HIVの感染経路や予防・検査・治療方法などを、集まった方々に分かりやすく伝えました。希望者には避妊具や啓発冊子を配り、イベントは大盛況に終わりました。

検査が受けられるテントの前で詩の朗読をするクラブのメンバー

テントの前で身振り手振りを交えながら、検査を勧める内容の詩を暗唱するクラブのメンバー(2012年6月30日)

テント内の検査の様子

テント内での検査の様子。指を消毒後、針で血液を採取してテストし、20分ほどで結果が出ます(2012年6月30日)

「チパパ地域では、HIVに関する正しい知識が広まってきています」

ルカマンタノ校エイズ対策クラブの生徒たちと、ザンビア駐在員の永井萌子

ルカマンタノ校エイズ対策クラブの生徒たち。前列左から2人目がローダさん(15歳)、後列右から3人目がマリアさん(13歳)(前列左端はザンビア駐在員の永井萌子、2012年6月30日)

イベント終了後、啓発運動を行ったルカマンタノ校エイズ対策クラブのメンバーに話を聞いてみました。ローダさん(15歳)は、歌やダンス、詩の朗読などにも参加し、イベントの運営に積極的に取り組んでいました。クラブに参加した理由は「HIV/エイズについてもっと学びたいと思ったから」。「啓発運動を通して、自分自身も予防方法などたくさんのことを学びました」と話してくれました。

13歳のマリアさんは、「以前は、チパパ地域では、HIV/エイズに関してよく知らない人がほとんどでした」と言います。「地域のHIV/エイズの問題についてどう考えているか」という質問に、「今では多くの人たちが、HIVの予防方法や、自分の感染を確認できる方法を知っています。私たちクラブの活動の効果もあって、状況は少しずつよくなっていると思います」と、回答してくれました。

AARは現在、チパパ地域に、HIVの検査やカウンセリングを受けられる施設を建設中です。エイズ対策クラブの活動との相乗効果で、自発的に検査を受ける方々が増えることが期待されています。

※この活動は、皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ザンビア事務所駐在 永井 萌子

大学卒業後、看護師として総合病院の小児科などで勤務。アメリカへの語学留学を経て帰国後、保育園で看護師として従事。その後、AARへ。東日本大震災被災地での支援活動などを経て、2012年5月よりザンビア駐在

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