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紛争や暴力から市民を守るために―プロテクションの必要性―

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2019年5月8日、アフガニスタンの首都カブールで、反政府勢力による自爆攻撃により、国際NGOの職員が複数名が犠牲になりました。亡くなられた方々に哀悼の意を表すとともに、負傷された方々の一刻も早い回復を心から願うばかりです。AAR Japan[難民を助ける会]のカブール事務所は、今回の事件があった地区から遠くありません。事件発生後、ただちに職員の安否を確認したところ、フィールドに出て地雷回避教育を行っている職員も含め、全員が無事でした。

アフガニスタンの厳しい現状

非常に残念なことですが、世界各地で多くの民間人が紛争により死傷しています。アフガニスタンもその例外ではありません。国連アフガニスタン支援ミッションの報告1によれば、2018年には10,993人が死傷しています(死者3,804人、負傷者7,189人)。2014年以降死傷者が1万人を超えており、極めて深刻な事態です。2018年の民間人の被害のうち、37%はタリバン(パキスタンとアフガニスタンで活動するイスラム主義組織)、20%はDaesh/ISKP (いわゆるIS)、14%はアフガニスタン政府軍、6%は国際部隊(治安維持などにあたる各国の軍隊の集合体)によるものです。

プロテクションとは

国際協力というと、紛争、災害時における食糧配付や保健事業、インフラ整備、教育支援、生計支援といったイメージを持たれる方が多いかもしれません。これらは極めて重要な活動であることに間違いありません。ただ、日本ではあまり知られていませんが、国際的な支援において非常に重要視されている分野があります。それが「プロテクション(保護)」です。

プロテクションと聞いても何を指すのか、今一つピンとこないかもしれません。AARの活動で言えば、アフガニスタンなどで長い間行っている「地雷対策」の一環である 地雷回避教育 や、トルコで行っている シリア難民支援 、バングラデシュの避難民キャンプで行っている 女性・子どもの保護 2もそうです 。AARの活動に限らずに言えば、日本でも対策が求められている児童虐待の予防や、体罰を用いない子育てもプロテクションにあてはまります。例えば、ジェンダーに基づく暴力(Gender Based Violence)の性的虐待の防止もそうです。つまり、最も脆弱な立場に置かれた人たちを保護し、これらの人々の権利を擁護するための幅広い活動がプロテクションです。

なぜ市民が保護されないのか

2019年に締結から70周年を迎えるジュネーブ諸条約のうち第4条約は、一般に「文民条約」と呼ばれ 、紛争下での市民の保護が定められています。ほかにも市民を保護するためのさまざまな国際人道法や、国際人権法が存在します。例えば、子どもの権利条約や障がい者の権利に関する条約も当てはまります。しかしながら、アフガニスタンでは、残念ながら市民が保護されているとは到底言えない状況が続いています。

理由の1つに、政府や国際的な軍事連合を含め、紛争の当事者が国際人道法や国際人権法を遵守していないことがあります。反政府勢力などによくみられる簡易爆発装置(Improvised Explosive Devices:IED)の使用や、武器、弾薬の不適切な管理も事態を悪化させています。意図的に病院を空爆するなどの論外のケースだけでなく、民間の建物かどうか確認を怠ったり、空爆してしまうケースもあります3

日本の役割

多くのNGOが、このような状況に対して、極めて憂慮すべき事態であり紛争下における市民の保護を強化していくべきだと主張しています。特に今年2019年は、国連の安全保障理事会にて紛争下における市民の保護が議題となってから20年目の節目の年を迎えます。2019年5月23日には、この問題が国連安全保障理事会の公開協議(UN Security Council Open Debate on the Protection of Civilians on May 23)で議論されました。

こうした場における日本の役割は、極めて大きいと考えます。日本は国際的な平和や安全を協議する国連安全保障理事会の常任理事国ではありませんが、いわば常連のようなものであり、それなりの存在感があると言えます。加えて、戦後、国際人道法や国際人権法を遵守し、紛争に参加していないことから模範となると考えています。さらに、プロテクションの分野を積極的に支援することは、日本の国際的な価値を上げると言えます。この分野こそ、官民の連携が最も求められているものでしょう。

1.参照: UNITED NATIONS ASSISTANCE MISSION IN AFGHANISTAN, UNITED NATIONS HUMAN RIGHTS OFFICE OF THE HIGH COMMSIONER "AFGHANISTAN PROTECTION OF CIVILIANS IN ARMED CONFLICT ANNUAL REPORT 2018" FEBRUARY 2019, KABUL AFGHANISTAN

2.この分野に関しては、UNHCRや、国際NGOが加盟する「子どもの保護ワーキンググループ」が発行する『人道行動における子どもの保護の最低基準』(日本語版)が大変参考なります。

3.参照:ACTION ON ARMED VIOLENCE, "An investigation into the United States' rules of engagement governing the use of airstrikes"

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務所 紺野 誠二

2000年4月から約10ヵ月イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月までAARにて地雷対策、啓発、緊急支援を担当。AAR離職後に社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。海外の障がい者支援、国内の社会福祉、子ども支援の国際協力NGOでの勤務を経て2018年2月に復帰。茨城県出身

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