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ラオス:キノコ栽培活動で自立への一歩を支援

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ラオスの障がい者数は、国民の2.8%にあたる約16万人とされ、そのうち75%は労働力の中核となる年齢(15歳以上65歳未満)といわれています。しかし、通勤が難しかったり、雇用側の多くは「障がい者は生産性が低い」という固定観念を持っているため、就労の機会が限られています。こういった状況を少しでも変えるため、AAR Japan[難民を助ける会]が始めた小規模起業支援について、駐在員の森治彦が報告します。また、東京事務局の櫻井佑樹が、日本の被災地の就労支援施設の事例をお伝えします。

地域住民との軋轢を軽減させるために

ラオス政府による障がい者への就労支援は、職業訓練施設の数が限られていたり農村部には支援が入りづらいなど、十分な体制が整っていません。特に、障がいのある女性は仕事を得られる機会が非常に限られており、収入を得て自立した生活を送ることは難しい状況です。AARは2018年12月から障がい当事者団体のラオス障がい者協会(Lao Disabled People's Association :LDPA)と協働して、サヤブリー県とウドムサイ県で、主に障がいのある女性とその家族を対象に、キノコ栽培やナマズ・カエル養殖技術の研修を通じた小規模起業支援を開始。障がい者が自宅で起業し、地域社会で自立した生活を送ることを目指しています。

研修に参加した障がい者とその家族や職員の15人が並び、カメラに向かい微笑む。

研修に参加した障がい者とその家族(青色シャツ)と、AAR職員・LDPA職員(紺色シャツ)。そのほか講師や政府職員も参加しました(2019年6月20日、ヤブリー県ピエン郡)

キノコ栽培方法を障がい者へ。研修で起こった変化

2019年2月から3月にかけて、3日間のキノコ栽培研修を行いました。キノコ栽培のメリットは、小さなスペースで始められるため、少ない初期投資で済むことです。また、手入れは掃除や水やりなど障がいがあっても比較的取り組みやすいことが挙げられます。専門家からキノコ栽培方法を一から教わった参加者たちは、実践研修でキノコ栽培パックの作製に取り掛かりました。

AAR駐在員の森治彦が、研修に参加した障がい者たちが製作したキノコパックを持ち微笑む。近くではパックを作っている障がい者たちも一緒に微笑む。床にはパックが多数並べられている。

実践研修でキノコ栽培パックを作製している障がい者とAAR駐在員の森治彦(右端)(2019年2月12日、サヤブリー県ピエン郡)

実践研修では、キノコの培地(培養に必要な栄養成分を含んだもの)となるオガクズに米糠、砂糖、硫酸マグネシウムなどを肥料として混ぜ、水分を適度に入れつつ均一になるようかき混ぜます。その後、袋に培地を詰めて蓋をします。袋をドラム缶に入れて密封し、約6時間加熱殺菌した後、休ませてから翌日にキノコの菌を植え付けます。菌を植えてから30~40日ほど保管するとキノコが生え出し、その後約3ヵ月の間、収穫することができます。

中央にキノコとの培地となる茶色いオガクズなどが積み上げられ、それを2人がスコップを使いまぜ、一人がジョウロを使い水を加えている

実践研修において、キノコ栽培パックの作製方法を指導する講師(左)とAAR現地スタッフ(右から二番目)(2019年2月18日、サヤブリー県ピエン郡)

研修中は、参加した障がい者同士やその家族が協力して、約170袋のキノコ栽培パックを作製しました。初めは会話も少なく黙々と作業をする人もいましたが、時間が経つにつれて徐々に会話をするようになり、研修3日目には参加した障がい者同士で気になる点や、新しく覚えてできるようになったことを確認している様子や、笑顔も見られました。

キノコが大好きなラオス人とその需要

日本でよく食べられているキノコですが、ラオスでも毎日のように食べられています。ラオスのキノコ料理は種類も豊富で、スープに揚げ物、炒め物、伝統料理であるキノコラープや、ご飯につけて食べるソースもあります。このように、ラオスには安定したキノコの需要があります。
研修後、障がい者は地元市場での宣伝やチラシの掲示、口伝えでキノコ販売の情報を地域に広めるなどの販売促進活動を行っています。多いときには1日4~5kgのキノコを収穫するそうです。村内の周辺住民に直接販売することにより、新鮮なキノコをすぐに提供でき、輸送や梱包の費用、労力も低く抑えられます。また、組合や大きな組織におろさなくても、個人で販売して収入を得ることができます。嬉しいことに、売れ残ったという話を彼らから聞いたことはありません。自宅から移動して販売することが難しい障がい者でも、収穫やキノコの世話をしたりと、自分にできることを考え工夫しながら取り組んでいます。

1つのキノコパックから、5本のキノコが生えている

研修に参加した障がい者が自宅で作製したキノコ栽培パックから出てきた新鮮なキノコ(2019年5月18日、サヤブリー県ピエン郡)

屋根の上にはビニールがかけられ、側面は見た目は藁に近い植物を用いている

研修に参加した障がい者とその家族が自分たちで資材を用意し作ったキノコ栽培小屋。この栽培小屋は自宅に隣接するかたちで建てられました。(2019年4月25日、ウドムサイ県ナー郡)

障がい者の1歩を支える

自宅で小規模に経営しているため大きな収入を得ることは難しいですが、障がいを理由に働く機会が限られていた障がい者にとって、キノコの生産活動に取り組み、周辺住民とコミュニケーションを取りながら、工夫して販売した経験は彼らにとっての大きな1歩に違いありません。AARはこうした障がい者の1歩1歩を大切にしながら、より自立した生活を送ることができるよう、障がい者が活躍できる環境づくりを支援していきます。

研修を受けた女性がバケツを持ち、中にはキノコが詰まったビニール袋が入っている。お客さんがキノコを買い、キノコが入ったビニール袋とお札を片手に持っている

採れたてのキノコを笑顔で販売するイヤンさん(左)と村の住人(右)。村から離れた市場まで売りに行かなくとも、十分な需要が村内にあるようです(2019年6月19日、サヤブリー県ピエン郡)

障がい者が社会とつながりを持てるサポートを。日本の障がい者支援の事例から。
報告者:東京事務局 櫻井 佑樹
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就労支援施設でキノコの菌床栽培をしているビニールハウス

AARは東日本大震災以降、岩手県、宮城県、福島県の福祉事業所に対して、活動に必要な資機材の提供や、商品の開発のサポートなどを続けています。そのなかのひとつ、宮城県東松島市の一般社団法人くるり「ワークハウスくりの木」は、就労継続支援B型事業所として、2013年に開所しました。当時10名だった利用登録者のほとんどが、東日本大震災で被災した障がい者で、現在は近隣の復興公営住宅で暮らしています。
同事業所では、2018年より菌床栽培で生産した椎茸の加工商品の開発に取り組んでいます。同年、収穫した椎茸の保存用にAARが冷蔵庫と真空包装機を提供した結果、椎茸を加工し安定的に出荷できるようになりました。
利用者の方は、主に菌床の手入れや水やりのほか運搬や収穫など、ラオスのように障がいがあっても取り組みやすい作業を担っています。また施設では、一人ひとりの個性をふまえながら、やりがいのある仕事づくりを心がけ活動しているそうです。
施設の職員の方は、障がい者が社会とのつながりを持つことも大事にされています。ただ作業を行うだけではなく、事業所に来てコミュニケーションをとったり、ほかの人と関わりを持てるようにサポートしています。ワークハウスくりの木でもラオスのように、障がい者の働く機会を提供しながら、社会への参加や関わりを促しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

ラオス・ビエンチャン事務所 森 治彦(もり はるひこ)

大学卒業後、4年間専門商社に勤務した後、青年海外協力隊員としてラオスでバレーボールを指導。赴任中、住民のニーズに応じた細かな支援を行うNGOへの関心が強まり、2018年4月にAARに入職。同年12月からラオスに駐在。神奈川県出身

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