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12月3日は国際障害者デー:すべての人々に優しい社会を目指して

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1982年12月3日、「障害者に関する世界行動計画」が国連総会において採択されたことから、12月3日は国際障害者デーと制定されています。また、障害者権利条約が国連総会で採択されたのが2006年12月13日であり、日本では内閣府により12月3日から9日までが障害者週間と定められています。

AAR Japan[難民を助ける会]が障がい者への支援を開始した1980年代から今日までに、障がいについての考え方も大きく変わりました。変わるべきは障がい者個人ではなく社会の方であるとの認識が広がり、また、人道支援や防災・減災において障がい者の権利を守ることの重要性が、国内外で深く理解されるようになってきました。障がいのある人々にとって、世界はどれだけ優しくなったのでしょうか。東京事務局の野際紗綾子がご報告します。

補装具で歩く男の子に寄り添う母親。二人とも笑みを浮かべています

足に障がいのある男の子に補装具を提供。障がい児や家族と時間をかけて対話し、ともに解決策を見つけていきます(2019年、カンボジア) © 川畑嘉文

車いすから教育支援へ拡大

1980年代後半にタイの難民キャンプで行った日本の車いすの配布から AARの障がい者支援が始まりました。その後、東南アジアの国々で車いすの普及を進めるため、カンボジアで車いす工房を開設、ラオスでは工房への支援を通じて車いすの製造・配布を行いました。また、ミャンマーやカンボジアでは職業訓練校、タジキスタンやアフガニスタンではリハビリテーション施設への支援を行いました。2013年からは、障がいの有無にかかわらずすべての子どもが学校に通えるよう、インクルーシブ教育事業を実施しています。これまでにカンボジアやタジキスタン、アフガニスタンなどで実施し、今後はパキスタンやミャンマーへも広げていく予定です。

一人がいすの背を持ち、もう一人がいすのひじ置きを組み立てています

籐細工の職業訓練では、家具やカゴなどを製作(1993年、カンボジア)

おもちゃの乗り物にまたがり、楽しそうに遊ぶ子どもたち

AARが設置した学習支援室で遊ぶ子どもたち。ここでは研修を受けた教員やソーシャルワーカーが、障がい児の学習をサポートしています(2019年、タジキスタン)

自然災害と障がい者

2008年5月、過去最大級の被害をもたらしたと言われるサイクロン・ナルギスがミャンマーを襲い、240万人もの人々が被害を受けました。私は被災直後から現地に入り、緊急物資の配布や障がい者への補助具の提供などの支援を行いました。被災直後の混乱の中で、障がい者に支援物資が届きにくい状況でした。しかしそれよりも私が悔しかったのは、差別や偏見により、被害状況などの情報さえも障がい者に届いていなかったことでした。自然災害が起こった時にもっとも深刻な影響を受けるのは、障がい者など普段から弱い立場にある人々です。これはミャンマーのような途上国に限った話ではありません。先進国である日本においてさえも、東日本大震災での障がい者の死亡率が、総人口の死亡率の2倍の高さであったことが知られています。

母親と男の子に寄り添っているAARの野際

サイクロン・ナルギスの被災者に食料などをお届けしました。右は筆者(2008年、ミャンマー)

世界はその状況を看過しているわけではありません。緊急人道支援の現場で手引書として用いられる「スフィアハンドブック」では、2011年の改訂版から「権利保護の原則」として、障がい者がすべての分野において配慮されるべきであると明記されました。2012年には国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)において、障がい者の権利を実現するための「インチョン戦略」という行動計画が定められました。また、2018年には「高齢者と障がい者のための人道のインクルーシブ基準」が発行されています。AARが大切にしている、脆弱性の高いグループとなりがちな障がいのある方々などの権利を保障する、という姿勢が、世界的な潮流となってきていると言えると思います。

新設されたスロープを車いすの女の子が通っています。車いすは友だちが押しています

障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが就学できるよう、学校のバリアフリー化や教員への研修などを実施(2018年、アフガニスタン)

障がい者を取り巻く環境を変えていく

AARの活動の特長のひとつは、障がい者本人への支援と同時に、障がい者を取り巻く環境を変える活動も行っていることです。例えばインクルーシブ教育事業においては、障がい児への個別支援とあわせて、学校に通う環境を整える活動を地域の人々とともに行っています。後者のアプローチによって、AARが直接支援を「届けていない」方が直面する障壁も、軽減することができます。障害者権利条約でも示されているように、障がいは個人ではなく社会にあるのです。

AARが障がい者支援を行う国のひとつ、ミャンマーには約231万人(人口の4.6%)の障がい者がいますが*1、その就業率はわずか15%ほどと言われています*2。AARは2000年から障がい者に職業訓練を提供する活動を実施しています。AARが運営する職業訓練校では、卒業生の就職率は約9割に上りますが、より多くの障がい者の就労を促進するためには、雇用に関する制度を整えたり、雇う側の障がいへの理解を深めたりするなど、環境を変えるアプローチも必要になります。

昨年AARは、障がいについての情報や雇用主へのアドバイスが書かれた「障がい者雇用の手引き」を、現地の団体と協働して発行しました。この手引きはミャンマー政府にも評価され、ILO(国際労働機関)のウェブサイトでダウンロードできるようにもなっています。また、障がい者雇用に関する提言書を政府に提出し、法定雇用について政府とのワークショップを開催するなど、制度づくりを着実に進めています。しかし、世界の壁は、人々の心の壁は、まだ厚いと感じています。障がいのある人々に優しい社会はすべての人々に優しい社会であると信じて、これからも活動を進めてまいります。

*1 ミャンマー国勢調査(2014年) *2 ミャンマー政府と国際NGOによる調査(2010年)

パソコンの操作を学ぶ授業で、1つのパソコンを複数の訓練生が見て学習しています

AARが運営する職業訓練校で学ぶ訓練生。障がい者を全国から無償で受け入れています(2019年、ミャンマー)

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 野際 紗綾子

2005年に入職後、ミャンマーをはじめアジア地域の障がい者支援や緊急支援に従事。2019年に日本障害者協議会(JD)の理事に、2020年に障害分野NGO連絡会(JANNET)の企画委員長に就任。東京都出身

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