世界の難民と日本の難民支援

難民とは

配付を待つアフガニスタン難民

避難先のトルコでシリア難民に支援物資を配付するAARの山本祐一郎(2014年11月18日)

「難民」という言葉は、今の日本社会において、行き場所がなく困っている人という意味で広く使われ、ネットカフェ難民や就職難民など、さまざまな"難民"が登場してきています。しかし、そもそも難民というのはどのような人をさすのでしょうか?

難民は、1951年に採択された難民の地位に関する条約(難民条約)によって、以下のように定義されています。

「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」

このような方々に加えて、戦争や政治の混乱によって危険を感じ国籍国を出た避難民も広い意味での難民とみなされています。さらに近年では、国境を越えずに、自国にとどまり避難生活を送っている「国内避難民」も増加し、難民と同様に支援を必要としています。

世界の難民の現状

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)発表によると、2014年末の時点で、世界中で5,950万人が、内戦や治安悪化などによって難民や国内避難民などとして故郷を追われ、強制的に移動しなければならない状況に置かれています。日本の人口1億2,730万と比較して考えてみると、日本人口の実に半数近くに当たる人々が世界中で難民の状態にあるということになります。このうち、1,950万人が、母国を離れ他国に逃れている「難民」、約3,820万人が自国にとどまって避難生活を送っている「国内避難民」、そして180万人が「庇護希望者」です。

2014年末、シリア(388万人)がそれまで最も多く難民を出していたアフガニスタンを抜いて最多の難民発生国となりました。アフガニスタン(259万人)、ソマリア(111万人)と続き、次いで、スーダン、南スーダン、コンゴ共和国、ミャンマー、中央アフリカ、イラク、エリトリアの順に難民を多く生んでいます。


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宮崎淳さんについて

難民と聞くと、アフリカをイメージする人が多いかもしれませんが、実は、このようにアフリカよりも多い難民が、中東やアジアから生まれているのです。難民を生んでいる背景は、国によって異なりますが、これらの国々では敵対する勢力の武力衝突により安全に暮らすことができなくなってしまったり、強制労働や元来住んでいた地域からの強制移住、財産の没収、教育を受ける権利や市民権の剥奪など様々な迫害や人権侵害が原因となって、避難しなければ生きていけない状況が生まれてしまっているのです。

では、自国を離れた難民はどこに逃げているのでしょうか。

最も多くの難民が逃げている国はトルコで、多くのシリア難民が逃れてきています。以下、パキスタン、イラン、エチオピアと続きます。多くの難民を受け入れている国は、難民を生んでいる国々の隣にあることが多く、難民が近くの国々に逃げていることがわかります。現在、世界の5分の4以上の難民を開発途上国が受け入れているといわれており、経済的・社会的に発展していない国に、「難民の受け入れ」というさらなる負担がかかっているのが現状です。

難民支援を行う際には、受け入れ地域に十分に配慮することが重要です。受け入れ地域にとっては、ときに着の身着のままで流入してくる大量の難民は、経済的な負担あるいは脅威、社会不安などにもつながります。難民が避難した国でどう受け入れられるかは、難民自身の行動だけでなく、支援団体の行動・支援内容によっても左右されます。

AARがトルコに開設したコミュニティセンター

避難生活を支えようと開設したコミュニティセンターにて。トルコ語教室や、交流イベントなどを行っています。家に閉じこもりがちだった女性も、家族と通ってくれるようになりました(トルコ、2014年)

2012年秋からAAR Japan[難民を助ける会]が、トルコ南東部で行っているシリア難民支援活動では、シリア人のみならず、シリア難民を受け入れている地域の住民にも配慮してきました。具体的には、シリア難民と住民双方を対象としたスポーツイベントや映画鑑賞会など、地域での融和を図るイベントの開催などです。難民生活は長期化することも多いため、難民が地域の一員として受け入れられることは、彼らが周囲の人々のサポートを受けやすくなるといったことに加え、避難先で安定した生活を築けずに犯罪に走るなどして治安が悪化するということも防ぐことが出来ます。 

トルコでのシリア難民支援活動はこちら

難民としての生活を終えるには

では、難民となった人々が、難民でなくなるには、どのような方法があるのでしょうか。

大きく分けて3つの方法があります。まず1つ目は、状況が改善し、祖国に帰る「帰還」。2つ目は、避難した国に定住先をみつけ、住み続ける「避難先定住」。3つ目は、祖国でも避難先でもない別の第3国に行き、その国に定住する「第3国定住」です。

長引く内戦や紛争を背景に、難民キャンプなどでの生活から抜け出せない難民の数も増加しています。このような人々が定住先をみつけ、安心して生きていくために、「第3国定住」がひとつの選択肢となってきています。受け入れ国の多くは先進国や比較的社会・経済が安定した国々です。第3国定住は、開発途上国が難民の5分の4を受け入れているという点から見ても、開発途上国の負担軽減にもつながります。

日本と難民

支援物資を渡す相馬雪香

タイ・カンボジア国境の難民キャンプで支援活動を行う前会長の相馬雪香(左、1987年頃)

日本に、難民認定を求めてやってくる人々がいます。2014年度には、前年の3,260人を大きく上回る5,000人が日本で難民申請を行いました。難民問題と聞くと、どこか遠くの外国での問題と思いがちだが、日本にも毎年難民が来ているのです。日本政府が難民として認定した人は11人でした。難民としては認められませんでしたが、人道的な理由を配慮し在留を認められた人が110人いて、認定者と合わせた121人が日本に在留する許可を政府から受けたことになります。日本の難民受け入れ数は、ほかの先進国と比較するとまだまだ少ない状況です。2013年の統計をみるとアメリカは21,171人、ドイツは10,915人、フランスは9,099人、韓国も59人を難民として認定しています。日本も、先進国として、国際社会がかかえる難民問題への適正な負担を求められているのです。

日本はこれまでに1度だけ大量の難民を受け入れたことがあります。1970年代に発生したインドシナ難民です。ベトナム、ラオス、カンボジアで起こった戦争から逃れ、大量の難民が周辺国に逃がれました。これが、AARが設立されるきっかけとなったできごとです。日本は11,319人をインドシナ難民として受け入れてきましたが、多くの人がこの事実を知りません。これまでの難民受け入れの経験を振り返り、その教訓を活かしたうえで、難民認定者や第3国定住で日本に来た人々に対し、適切な言語教育、生活支援を実施していく必要があります。

(本文中の数字は2015年8月時点のものです)

「困っている人のために何かしたい」-その思いを形に

支援物資を受け取る子どもたち

家族と一緒にAARの支援物資を受け取りに来たシリア難民の子どもたち。難民の方々が命を繋ぎ、避難先で生活できるよう、AARは支援を続けています(2014年12月)

AAR の活動は、皆さまからのあたたかいご支援で成り立っています。ぜひ、私たちの活動にご協力ください。

難民を助ける会
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