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世界の難民と日本の難民支援

帝国書院「中学校社会科のしおり 2010年1月号」より

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難民とは

配付を待つアフガニスタン難民

パキスタン洪水支援にて、食料・生活物資の配布を待つアフガニスタン難民(2010年)

「難民」という言葉は、今の日本社会において、行き場所がなく困っている人という意味で広く使われ、ネットカフェ難民や就職難民など、様々な"難民"が登場してきている。しかし、そもそも難民というのはどのような人をさすのであろうか? 難民は、1951年に採択された難民の地位に関する条約(難民条約)によって、以下のように定義されている。

「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」

このような人々に加えて、戦争や政治の混乱によって危険を感じ国籍国を出た避難民も広い意味での難民とみなされている。さらに近年では、国境を越えずに、自国にとどまり避難生活を送っている「国内避難民」も増加し、難民と同様に支援を必要としているのである。

世界の難民の現状

2009年末の時点で、世界中で約4,330万人が、内戦や治安悪化によって難民や国内避難民などとして故郷を追われ、強制的に移動しなければならない状況に陥っている。現在、日本の人口が約1億3,000万であるので、日本の人口の約3分の1の人々が世界中で難民の状態にあるということになる。このうち、約1,520万人が、母国を離れ他国に逃れている「難民」であり、約2,710万人が自国にとどまって避難生活を送っている「国内避難民」である。

世界で最も多くの難民を生んでいる国は、どの国だろうか。正解はアフガニスタンであり、世界の難民の4人に1人がアフガニスタン難民である。2番目に多いのがイラク難民で、ソマリア、コンゴ民主共和国、ミャンマー(ビルマ)と続く。難民と聞くと、アフリカをイメージする人が多いかもしれないが、実は、アフリカよりも多い難民が、アジアや中東から生まれているのである。難民を生んでいる背景は、国によって異なるが、これらの国々では敵対する勢力の武力衝突により安全に暮らすことができなくなってしまったり、強制労働や元来住んでいた地域からの強制移住、財産の没収、教育を受ける権利や市民権の剥奪などが原因となって、避難しなければ生きていけない状況が生まれてしまっているのである。

では、自国を離れた難民はどこに逃げているのだろうか。最も多くの難民が逃げている国はパキスタンで、次にイラン、シリアと続く。パキスタンはアフガニスタンの隣国であり、多くのアフガニスタン難民がパキスタンに避難している。多くの難民を受け入れている国は、難民を生んでいる国々の隣にあることが多く、難民が近くの国々に逃げていることがわかる。現在、世界の5分の4の難民を開発途上国が受け入れているといわれており、経済的・社会的に発展していない国に、難民の受け入れというさらなる負担がかかっているのが現状である。

難民支援を行う際には、受け入れ地域に十分に配慮することが重要である。ただでさえ貧しい地域に難民が大量に避難したとき、難民キャンプにいる難民にだけ食料を配布したらどうなるだろうか。地元住民から「私たちも同じように貧しいのになぜ難民だけ支援がもらえるのか?」と間違いなく不満が爆発するだろう。難民が避難した国でどう受け入れられるかは、難民自身の行動だけでなく、支援団体の行動・支援内容によっても左右されるのである。2010年の7月、8月に発生したパキスタンでの大洪水の際、難民を助ける会は、被災したパキスタン人だけでなく、パキスタンに避難しているアフガニスタン難民にも支援物資を提供した。同じように困っている人には分け隔てなく支援する、そういった姿勢が支援団体には必要とされているのである。

難民としての生活を終えるには

では、難民となった人々が、難民でなくなるには、どのような方法があるのだろうか。大きく分けて3つの方法がある。まず1つ目は、内戦などが終わり、祖国に帰る「帰還」である。2つ目は、避難した国に定住先をみつけ、住み続ける「避難先定住」である。3つ目は、祖国でも避難先でもない別の第3国に行き、その国に定住する「第3国定住」である。

現在、世界では、550万人もの難民が、母国への帰還も、避難先への定住もできず、5年、10年と長年にわたって難民キャンプで暮らしている。このような人々が定住先をみつけ、安心して生きていくために、「第3国定住」がひとつの選択肢となってきている。「第3国定住」は現在19か国によって行われているもので、その多くが先進国や比較的社会・経済が安定した国々である。第3国定住は、開発途上国が難民の5分の4を受け入れているという点から見ても、開発途上国の負担軽減にもつながっていくのである。

日本と難民

これまで、日本は、第3国定住の受け入れを行っていなかったが、2010年9月から、タイの難民キャンプにいるミャンマー(ビルマ)難民27人を第3国定住の第1回として受け入れた。今後3年間に渡って、計90人のミャンマー(ビルマ)難民を受け入れる予定である。年間1万人以上の難民を第3国定住で受け入れているアメリカ合衆国やカナダと比べればまだまだ数としては少ないが、第3国定住の受け入れを開始した意義は大きい。日本に第3国定住でやってきた人々は6か月間の研修プログラムを受け、日本で暮らしていくための言葉や生活習慣を学習していくことになっている。しかしながら、6か月の研修後、どこに定住し、どのように彼らの生活を支援していくのか、2010年10月の時点で政府によって発表されている計画は全くない。受け入れを行う地域自治体や、彼らの定住を支援していくことを検討しているNPOが支援内容を考え、立案できるよう少しでも早く研修後の定住計画が発表されることが望まれる。

支援物資を渡す相馬雪香

タイ・カンボジア国境の難民キャンプで支援活動を行う前会長の相馬雪香(左、1987年頃)

日本には、難民認定を求めてやってくる人々もいる。2009年度には、1,388人が日本で難民申請を行った。難民問題と聞くと、どこか遠くの外国での問題と思いがちだが、日本にも毎年難民が来ているのである。2009年度、日本政府が難民として認定した人はわずか30人であった。難民として認められなかったが人道的な理由を配慮し在留を認められた人が501人おり、認定者と合わせた531人が日本に在留する許可を政府から受けたことになる。日本の難民受け入れ数は、他の先進国と比較するとまだまだ少ない。たとえば、イギリスは4,752人、フランスは9,648人、イタリアは1,785人を2008年に難民として認定している。日本も、先進国として、国際社会がかかえる難民問題への適正な負担を求められているのである。

日本はこれまでに1度だけ大量の難民を受け入れたことがある。1970年代に発生したインドシナ戦争によるインドシナ難民である。ベトナム、ラオス、カンボジアで起こった戦争から逃れ、大量の難民が周辺国に逃げた。難民を助ける会が設立されるきっかけとなった出来事である。日本は11,319人をインドシナ難民として受け入れてきたが、まずこの事実を知らない人も多いし、その経験が現在の難民受け入れに十分活かされていない。難民認定者や第3国定住で日本に来た人々に対し、これまでの難民受け入れの経験を振り返り、その教訓を活かしたうえで、適切な言語教育、生活支援を実施していくべきである。

中学生のみなさんへ 共生できる社会のために

高校生や中学生に難民問題について話をする際「どうして日本は難民の受け入れが少ないのですか。」と聞かれることがある。その生徒に「ある日、自分の家の隣りに難民の人が引っ越してきたらどう思う。」と聞くと、少し困ったような表情をする。日本では、ある日、隣りに外国人が住むというのはまだまだ一般的ではない。難民を多く受け入れている国々は、アメリカ合衆国やカナダのように歴史的に移民大国であったり、外国の人と共生することが当たり前となっている国も多い。日本も少しずつ職場に外国人が増えたり、同級生に外国国籍の人がいるようになってきている。ぜひ、生徒のみなさんには、面倒くさいと思わずに、身近にいる外国からの人々に声をかけ、自分たちの仲間として輪に入れていってほしいと思う。外国の人と共生することを当たり前にしていくことが、生徒のみなさんがすぐに実行できる第1歩だと思う。

支援物資を受け取る少女

パキスタンの洪水被災者支援にて支援物資を受けとるアフガニスタン難民の女の子(2010年)

難民問題には、様々な社会的要因が絡んでいる。難民が生まれる背景には、政治体制の問題があったり、民族や宗教の問題があったり、その国の歴史が密接に結びついていたりすることが多い。さらに、難民となった人々がどの国に逃げているのか、その理由はなにか、そういった背景をぜひ調べてみてほしい。難民となった人々が置かれている過酷な環境だけでなく、その問題の背景を調べてみることは、難民問題を理解するうえで必要不可欠なことだと思う。

シニア・プログラム・コーディネーター 堀越芳乃

2005年4月より東京事務局でアフリカ事業と啓発活動を担当。アメリカの大学院で国際政策を学んだ後、南米ガイアナで国連ボランティアとして国際機関に勤務。その後、難民を助ける会へ(東京都出身)

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